法務省は、非公開が原則となっている少年審判について、殺人などの重大事件に限定して犯罪被害者や遺族の傍聴を認める方針を固めた。年内に法制審議会に諮問のうえ少年法改正案をとりまとめ、2008年の通常国会に提出する予定だ。
現状では少年事件の被害者や遺族は少年審判について十分な情報が与えられているとはいえない。そのため、「被害者の知る権利が奪われている」といった批判は根強く、審判の傍聴を求める被害者らの声は絶えない。
傍聴が認められるようになれば、被害者や遺族は事件の背景や動機などを十分把握することができ、事実認定が適正に行われたかどうかの確認も可能になりそうだ。被害者らが置き去りにされ、被害感情をさらに募らせるといった不幸な事態も回避できるのではないか。被害者側からみれば前進といえよう。
その一方で懸念も指摘されている。日本弁護士連合会は「少年が自らの非行について心を開いて供述することが困難になる」として反対を表明している。
本来、少年審判では少年の生い立ちや家庭環境などがなるだけ明らかにされ、少年が自らの行為を直視して更生の決意を固めることが望ましいとされる。ところが、審判の場に立たされる少年は精神的に未成熟なだけに、被害者側が審判に同席することによって委縮し、素直に供述できなくなる恐れがある。
傍聴が容認されることで、少年審判を「和やかに行い、非行について内省を促すものとしなければならない」と定めた少年法の精神が否定されたのでは元も子もない。日弁連の反対の背景にはそういった懸念があるようだ。
審判が非公開となっているのは、「少年の健全な育成」をうたう少年法の趣旨にのっとり少年の更生を最優先させているためだろう。被害者や遺族の傍聴を認めるかどうかについては、国会などの場で慎重に論議を重ねる必要がある。
少年の保護とともに忘れてならないのは、被害者や遺族に対する支援策を今後どう充実させていくかだ。
2001年4月に施行された改正少年法で、審判記録の一部閲覧やコピー、被害者の意見陳述などが認められるようになった。被害者尊重の流れが強まりつつあるのは確かである。今後この流れを加速させ、審判記録の情報開示を進めるなど被害者側の心情に寄り添い、真摯(しんし)に対応していくことが求められる。
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