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町立に移管して道厚生連を指定管理者に
北海道・むかわ町 鵡川厚生病院 病床数を60床に減床
4年後の新築時に規模・機能の見直しも視野
2007.11.28

 北海道・むかわ町が、町内で唯一の病院である鵡川厚生病院(北海道厚生連、83床)を、来年3月に60床に減床して町立に移管し、道厚生連を指定管理者とすることで合意した。病院の土地・建物は町が有償譲渡を受ける。12月の町議会で設置条例などを諮る予定。町立移管することで国の交付税措置を受けられるようにする狙いもある。地方の小規模病院の赤字に苦慮しながらも地域医療を守りたい道厚生連と、病院機能を残したいむかわ町の両者の意向が一致した形だが、総務省の公立病院改革懇談会の長隆座長は、町立に移管して道厚生連が指定管理者になるのは「行儀の悪い」選択だと批判している。

 北海道・むかわ町は、千歳空港から車で1時間弱の、人口1万234人(10月末現在)の漁業と農業の町。2006年4月に、鵡川町と穂別町が合併して「むかわ町」になった。町内の医療機関は、北海道厚生連・鵡川厚生病院(83床)と町立穂別診療所(19床)、民間の診療所1施設。

 鵡川厚生病院などを運営する北海道厚生連は、道内に16の医療機関を有し、そのうちの100床以下の9病院は、地方の自治体に代わって地域医療を担うという役割を果たしてきた。しかし、昨年4月の診療報酬マイナス改定と看護配置基準の見直しに対応するだけの看護師が確保できず、最低ランクの特別入院基本料を届け出ざるを得なくなって、経営が一気に悪化。9病院の地元自治体に対して、赤字補てん割合を現状の2/3から全額にするよう要請。同時に、診療所転換など経営形態・病院機能の見直しについても協議を進めていた。

 既に、一般病床を有していた上湧別厚生病院(上湧別町、56床)と苫前厚生病院(苫前町、40床)については、全床療養病床に転換することで地元自治体と合意。喜茂別厚生病院(喜茂別町、33床)も、無床診療所に転換することで合意した。

 これに対して、鵡川厚生病院については、現在の83床を60床に減床して町立病院に移管することで合意された。同病院は、診療報酬のマイナス改定などが行われた昨年4月以前には年間3千万円程度だった赤字額が、改定後の昨年度は約1億2千万円へと一気に4倍の赤字額を計上。さらに今年度上半期の赤字額は9千万円に達し、今年度末には1億8千万円近くになる見込みとなっている。

● 町立移管で国の交付税措置も

 こうした経営状況の同病院について、厚生連は当初、苫小牧市内にある規模の大きい急性期病院との医療連携を進める方法を提案していたという。しかし、診療所への転換ではなく町立への移管で合意されたのは、合併で穂別診療所を持った同町が、病院についても将来的に町立にしたいという構想を持ったことが挙げられる。

 さらには、町立に移管することで国の交付税措置を受けることができるようになり、赤字補てんに当てることができることも、大きな要因になった。

 同町によると、穂別診療所の年間赤字額は「1億円程度」あるが、「05年に診療所転換した際の5年間の交付税継続措置があることで町の負担は現在4千万円程度に抑えられているが、10年度からはこの継続措置が切れて700万円程度に減少し、一気にのしかかってくる」という。しかし、同診療所の地域医療への取り組みは、道内の地域医療に従事する医療関係者の間では先駆的取り組みとして評価されており、加えて病院の町立移管で連携を深めることで町の医療体制を構築できるメリットもある。そのため同町では、「町立に移管する病院と穂別診療所の二重の赤字負担になることを避け、少しでも軽減させたい」という狙いを持って町立移管にしたとしている。

 一方、厚生連側についても、札幌からの交通の便が比較的良い同病院を、地域医療の研修病院として残しておきたいという考え方も一部にあったことで、来年3月に60床に減床して町に移管し、道厚生連が指定管理者になることで合意に至った。

 同町では現在、老朽化した現病院を建替えて12年度にオープンさせる計画が構想されている。

● 総務省の懇談会を意識

 計画の具体的内容は来年度から検討を始める予定だが、「病院と穂別診療所の連携や、病院を何床にするかの規模・機能をあらためて検討する」とし、総務省の公立病院改革懇談会が挙げる「病床利用率などのガイドライン、支援措置」を意識していることを認めている。

 病床数の見直しが視野に入っているのは、「3年間連続で病床利用率70%以下」のガイドラインを意識したものだ。その一方で、「支援措置」がどのようなものになるのかも意識しており、同懇談会の提言に沿った規模・機能の見直しになるだろうとしている。

 ただ、同町によると同病院への「町民の受療率は3割程度」しかなく、また病床稼働率も43%程度と極めて低く、実稼働病床数は42〜43床というのが現状だという。

 そのため、同町では、外来については「医師と町民の懇談会を開催するなどしてつながりを深めて受療率を上げたい」とし、入院についても「(60床への減床と合わせて)苫小牧市内の急性期病院との間で連携を進めて、急性期・慢性期患者の棲み分けを図るなどして病床利用率の改善を進め」て、12年度の建替えオープンにつなげたいとしている。

 総務省の公立病院改革懇談会の長隆座長は、町立に移管させて厚生連が指定管理者になる方法は、医療制度上は問題ないとしても、「今後、交付税は削減されていく方向にある」と指摘。自治体病院経営の見直しが行われている現在の流れの中では「行儀の悪い選択」だと批判している。

(写真=鵡川厚生病院)



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