経済団体の豪ビジネス・カウンシル（BCA）は25日、連邦総選挙での労働党の勝利を歓迎するとともに、ラッド次期首相のかじ取りに期待感を示す声明を発表した。先月25日に就任したばかりのゲイリー新代表は、財界の中で懸念されている労使関係法の変更について、失業率の増加にはつながらないとの私見を述べたほか、連邦政府と各州政府の関係改善による新たな成長基盤構築の可能性に言及している。各メディアが伝えた。
BCAのゲイリー代表は「われわれが掲げる課題の多くを、労働党は公約にしていた」とコメント。規制緩和や教育、保健医療、インフラ整備、連邦と各州の関係改善などを例に挙げた。
財界人の多くは、豪職場契約（AWA）の廃止を骨子とする労働党の労使改革に懸念を示しつつも、過去数年間のハワード政権に対する不満からラッド次期首相に暖かい視線を向けているもよう。主要都市の高速ブロードバンド網敷設計画が注目を集めていることに加え、小売業者はコンピューターや書籍などの購入に関する教育支援策（総額10億豪ドル）からの恩恵に期待している。
ゲイリー代表は労使関係改革の詳細に関し、「導入しようとする暫定法がどういったもので、どのように生産性を失わないようにするのか」をできるだけ早く知りたいと主張。労働党批判の急先鋒だった豪鉱業・金属協会（AMMA）のノット代表でさえ、「（連立与党の労使関係法である）ワークチョイスが主な争点でこうした投票結果が出た以上、AWAは完全に終わった。ほかに選択肢はない」と述べ、新たなシステムに備える考えを示している。
労働党は8月、政権奪取後に2年間の移行期間を設けつつ、段階的にAWAを廃止する方針を発表していた。
なお、ラッド次期首相は、当選後に受けたインドネシアのユドヨノ大統領からの電話で、来月バリ島で開催される「気候変動枠組み条約第13回締約国会議（COP13）・京都議定書第3回締約国会合（COP/MOP3）」に招待され、これを受諾したことを明かしている。
BCAのゲイリー代表は、ラッド次期首相が同会合で京都議定書に批准することに反対しない方針を示唆。あくまで政府の決定事項とした上で「われわれにとっては、排出量の目標達成や測定方法など批准以降にしていくことの方が重要」と述べている。
■国民党党首も辞任
一方、連立与党の一角を占めていた国民党のベール党首は26日、キャンベラで記者会見し、党首の座を退く考えを明らかにした。
同党首は1997年に連立与党の閣僚となった後、99年に国民党執行部入った。アンダーソン前党首が健康上の理由で退任したのを受け、2005年6月に党首を、同7月には副首相も引き継いでいたものの、在任期間はわずか2年にとどまった。
連立与党が大敗したにもかかわらず、同党首は25日にいったん留任の意向を表明したものの、変革の時期と考え思い直したという。後任には、副党首のトラス貿易相やマクゴーラン農相の名前が挙がっている。
ベール党首は今回の選挙で、13〜14議席を確保したいとコメント。だが、現職2議員が落選したほか、国民党の当選が堅いとみられていた新設のクイーンズランド（QLD）州フリン選挙区でも議席を奪うことができず、10議席程度に終わるとの見方も出ている。
ハワード首相の落選とコステロ財務相の就任辞退によって、早急に新リーダーを選ぶ必要がある自由党では、アボット保健相が26日、既にターンブル環境相が名乗りを上げている党首選に立候補する考えを表明した。
■NTでもリーダー交代
労働党が政権を握る北部準州（NT）でも、リーダーが交代した。NTのマーチン主任大臣は26日、辞任すると発表した。
同主任大臣は、先住民アボリジニの問題について、アボリジニ系のNT労働党と対立したため、退任を強いられたとの見方を否定。新しい主任大臣がラッド新連邦政権と協力関係を築けるタイミングで辞めることにしたと説明している。
NT労働党は同日に党員委員会を開催し、新しい主任大臣にヘンダーソンNT教育相を選出した。