猫を償うに猫をもってせよ

2007-11-20 カリギュラ このエントリーのブックマークコメント

 カミュ戯曲カリギュラを蜷川演出で上演している。昨日毎日新聞に劇評が出て、例によって適当に褒めてあった。

 私は蜷川は好きだし、もともと上演向きでない戯曲を上演した実験性はともかく(翻訳もした渡邊守章先生は演出はしていない)、小栗旬の台詞のひどさは、ちょっと類例のないものだった。何言ってるんだか分からないんだもの。小栗の裸身を見たい人以外には意味のない舞台だと思う。

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 やっぱり変だよウィキペディア、である。先日編集した「関場誓子」が削除されていたのだが、というのが、サントリー学芸賞受賞時の履歴を写したものだから著作権侵害だという。しかし、その後慶大教授になったという情報は付け加えたし、何よりこの関場という人が、その受賞作以後著書を出していないから、まるで引き写しのように見えただけである。だからまあ、なくても構わないのだが、こういうのは、受賞者がその後ダメだった、ということを示すことになるから、掲示しておく価値はある。

 しかしだいたい、経歴などというのは、どこを見たって同じもので、私は現に人名辞典などを見て書いていることもあるのだが、それは問題にならないらしい。人名辞典なら著作権侵害ではなくて、ネット上にあると侵害とは、これいかに、である。その上、ではその著作を読んだ上で独自の判断を示すと「独自研究」とかいって削除される。ならば一切の価値判断はできず、「第一人者」とか「高い評価を得ている」とかも書けなくなる。誰かが活字で書いていればいいのか? それとも「高い評価を得ているという意見もある」と書けばいいのか?

付記:上記に対して、こんなことを言っておる。

http://ja.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:%E3%82%B3%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E4%BE%9D%E9%A0%BC/Akoyano

 アホか。そもそも著作権侵害の想定する損害の中には、その著作物が売れなくなる、ということが重要な事項となるわけで、つまりウィキペディア全体が、百科事典や人名辞典全体への巨大な著作権侵害の疑念があるのだよ。

 もしどうしても私に意見を問いたいなら、書面による郵送で行え。何しろウィキペディアの日本における責任者の所在地は不明なんだから、そのことの方がよほど由々しき問題だよ。仮に私の編集停止措置などをとれば、公示送達によって提訴し、日本版ウィキペディアの責任者を引きずり出してやる。

 だいたい人名事典だの国語辞典だの英和辞典だのの著作権などあってなきがごとし、あちこちで引き写しをやっているが、丸写しなどするわけないし、一項目がほとんど同じでも訴訟になぞなりゃしない。それにそんなものは民事で、ウィキペディアは「歴然たる犯罪です」などと書いているが、民事で敗訴したって「犯罪者」とは言わないのだよ。犯罪なら警察呼べばいいじゃないか。

参考

判例六法』(有斐閣)の「著作権法」第12条、編集物に関する判例

「小説の映画化及びテレビドラマ化に関する事項を一覧表にまとめた各リストにつき、項目の選択・配列については従来の事実情報資料においても採られていたものであり独自性、新規性を有するとは認められず、また、各項目における個々の事実情報の選択・配列の点においても創作性は認められず、さらに、著作権法により編集著作物として保護されるのは、編集物に具現された素材の選択・配列における創作性であり、素材それ自体の価値や素材の収集の労力は、著作権法によって保護されるものではないから、仮に相当の労を費やして収集された事実情報であり高い価値を認め得るとしても、そのことをもって著作物性を認めることはできないとして、右各リストの著作物性を否定した事例(東京地判平11.2.25 松本清張作品映画化リスト事件)