おしゃべりなマダム

月に向かって吠えはしないが・・。

昨夜の満月は見事だった。手が届きそうな程近かった。
古の方々が、電気の無い時代に月明かりを頼りとし、またロマンを見て数多くの歌を残しているのがわかる夜だった。

久しぶりに監督夫人と連れ立って、夜の公園へ散歩へ出かけた。
月明かりはあるが、夜道を照らす電灯と合わせても薄暗い。
るーきーはチキン野郎なので、立ち止まって動かなくなる事もシバシバある。
監督夫人宅の太郎ちゃんの手前、ルーキーに恥をかかす事も何なので、

「寒いから、るーちゃん抱っこさせてね。」と言ってから抱き上げる。

るーきーは仕方ないな、と言った感じで小さな溜息をつく。
安心した溜息だ・・・。

歩いていると、人の気配を感じて振り返ったら、すぐ後ろに男性が立っていた。近っ！

顔見知りの、退職されて悠々自適の紳士だった。
それから、３人で歩き始めたが、この紳士の奥様は動物園のゴリラに似ている。
幼稚園の主任なのか、園長よりも幅をきかしていているらしいが、私生活でも私の苦手なタイプだ。

なぜこの紳士はあの人が良かったのだろう？と他人様ながら余計なお世話が駆け巡る。
でも、多分私達夫婦の事も、皆様そう思いながら見ているのだろうな。

紳士は、誰かに聞いてほしかったのか話始めた。
まだ現役の奥様の帰りが遅く、夜の食事は９時、１０時はザラだと。
休みの日には、朝早くから友達と出かけ、夜遅く帰って来るそうだ。

ゴリラみたいな人に愛人がいるとは思えないので、それは心配ないだろう！
とは決して口には出さない。

やんわりと、先日モデルハウスの家を見に行った時の話をした。
今の時代、寝室は別は当たり前で、夫婦とは言え炊事、洗濯、掃除は自立できてなければいけない事などを話し、その中で共に楽しめる事を見出す時代になっていると。

今、お料理教室はリタイアした紳士で賑わっているそうだ。
蕎麦道場を予約したら、満杯だった。これは女性が多いそうだ。などもはなしたら、

紳士は何か決心する風だったが、運動はウオーキングだけをやっていて、私が水泳をやっていた事を聞き
教えてほしいと仰った時に、隣で監督夫人は噴出した。
無礼な人だ・・・。
ジュゴンが人間に泳ぎを教えているのを想像したらしい。

いつか飲み会の席で、私の旦那様が私の事を「ジュゴンちゃん」と言っていたのを覚えていたのだ。
まあ、そんな話はどうでも良いが、私はスパルタだけれども付いてこれるか聞いたら

「来年銀婚式なので(結婚が遅かったそうだ)、南の島に妻と旅行に行きたいから」
と仰った。
ゴリラが泳げるかは疑問だが、紳士の直向さに感動して引き受けた。
でも、監督夫人も同席が条件だ。だって、私のナイスバデイーに紳士が目を眩ませたら・・・
おおお怖っ！！ゴリラの顔が浮んだ。

しかし、残念なお知らせだ。
監督夫人は町内の特派員で通っているので、明日はこのニュースが狭い町内を駆け巡るだろう。
でも、かえってその方が好都合です。皆様の目があるから何も起きようがありません！！