ハワード流、風つかめず 豪新首相にラッド氏2007年11月25日00時32分 豪州歴代2位、11年にわたる長期政権だったハワード政権が幕を下ろす。首相は財政黒字化を達成し、失業率は史上最低水準という経済運営手腕を強調する選挙戦を展開したが、その中身は大型減税を軸とした大盤振る舞いという旧態依然としたものだった。老練な選挙巧者と言われた首相は今回、最後まで風をつかめずに終わった。 首相は選挙戦で清新なイメージを掲げる労働党のラッド党首を意識して、「この選挙は古い指導者か新しい指導者かを選ぶ選挙ではない。豪州の繁栄にとって正しい指導者を選ぶ選挙だ」と強調し続けた。 その首相が「選挙の決め手」としたのが経済政策だった。潤沢な財政黒字を背景に340億豪ドル(約3兆2300億円)の大型減税と、総額約330億豪ドル(約3兆1350億円)の財政支出を公約に掲げた。 だが狙いが外れ、労働党も大型減税など同様の政策を公約。与党から「政府案の丸写し」(コステロ財務相)と皮肉られながら、労働党はこうした「ミー・トゥー(私も)」と言われる戦術で「有権者を安心させようと現政権と経済政策で差がないことを印象づけた」(シドニー・インスティチュートのヘンダーソン所長)。 全国紙「オーストラリアン」は、「ハワード政権はエネルギーを使い果たした」と初めて労働党支持を表明。他の有力紙も労働党支持を打ち出し、ラッド政権誕生への流れがつくられた。 与党が富裕層を優遇する減税を軸としたのに対し、労働党はサービス低下が指摘される医療や公教育への財政支出など、国民に身近で切実な分野の改善を打ち出し、差別化を図った。ラッド党首はまた、首相の1期目の公約だった連邦職員の削減を表明し、「小さな政府」を掲げる首相のお株を奪った。 ラッド氏は今週にも連邦総督から組閣命令を受け、首相に就任する。公約に掲げたイラク駐留の1500人規模の豪州部隊の段階的な撤退と京都議定書の批准はハワード首相が拒んでいたもので、批判層を取り込む狙いがあった。 ただ「イラク撤兵は同盟国と協議する」としており、労働党政権誕生―即撤退となるわけではない。ラッド氏は24日夜の演説で「米国、アジア、欧州、世界中の同盟・友好国と我々が直面する課題を解決していきたい」と、特に米国の名前を挙げて対米関係を重視する姿勢を示した。 シドニー大学国際安全保障研究所のアラン・デュポン所長は「外交官出身のラッド氏は豪米関係の重要性を理解している。ハワード政権よりは距離を置くことになるが、対米重視の姿勢は変わらない」と指摘する。 ラッド氏は中国の専門家の顔も持つ。日本を「地域で最重要なパートナー」としたハワード政権に比べ、ラッド政権では、資源輸入で日本を抜いて貿易相手国1位となった中国の存在感が高まるのは確実とみられる。
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