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2007.11.21号を読む 2007.11.19号を読む

診療報酬引き下げ圧力滲ませ
財政制度等審議会が08年度予算編成で建議
診療所の手厚い配分の見直しを要求
2007.11.21
 財務省の財政制度等審議会(西室泰三会長)は19日、「2008年度予算の編成等に関する建議」を取りまとめ、額賀nu郎財務相に提出した。今回の予算編成で焦点の医療分野については、診療報酬・薬価の見直し、後発医薬品の使用促進、被用者保険間の財政調整など聖域を設けずに取り組む必要性を強調。医療界への影響が大きい診療報酬改定については、1999年度以降のいわゆるデフレ期間の賃金・物価動向を医療費の費用構造に照らしても「3.6%程度のかい離がある」として、「これを是正する方向で見直す」と明記した。また、診療所と病院間の点数格差にも触れ、診療所への手厚い配分を見直し、全体として効率化を図る考えを示した。

● 病院・診療所間の点数格差是正求める

 建議では、引き続き財政健全化に向け、歳出・歳入一体改革の確実な実施を求めた。すでに医療・年金・介護などの社会保障費は、政府方針として5年間で自然増の伸びを1.1兆円削減する方向が示されており、今回の08年度予算編成においても、自然増分として2200億円の圧縮が求められている。

 今回の予算編成で焦点となる、次期診療報酬改定について建議では、「医療機関等に対し医師等の人件費を始め経費の縮減・合理化努力を引き続き進めていく必要がある」として、診療報酬引き下げへの圧力をにじませた。

 ただ、診療所と病院とで常勤医師の従業時間に大きな差があることや、休日・時間外診療を実施している診療所が少ないこと、さらには同じ診療行為であっても病院に比べ診療所の方が高く点数設定されていることなども指摘。「全般的に診療所に手厚い診療報酬の配分を見直し、診療科間などでメリハリを付けつつ、全体として効率化を図る必要がある」と強調し、診療報酬点数の内容に応じてメリハリを付けながら改定作業を行うよう求める考えを明記した。

 一方、薬価・医療材料については、市場実勢価格に応じた引き下げに加え、医療機器の内外価格差の縮小などを通じて、薬剤費などの徹底した合理化を求めた。加えて、医療コストの適正化の観点から後発品の使用促進を求めており、政府目標に掲げた数量シェア30%以上に向けた環境整備を求めている。

 そのほか、相対的に治療効果の低くなった技術や、診療報酬で賄う必要性の乏しいものについて評価の見直しを行うほか、包括払いの一層の促進などを求めている。

 さらに、来年4月に創設する後期高齢者医療制度における診療報酬体系については、長期入院や頻回受診・重複投与などの高齢者医療の現状などを踏まえて、効率化を図るべきとした。

● 2200億円めぐる議論スタート

 財政審建議が公表されたことで、年末の予算編成作業が本格化する。社会保障費については、自然増分2200億円の圧縮幅を何で手当てするかが焦点となる。

 まず、薬価・診療報酬改定だが、薬価については過去の改定と同様に市場実勢価格に伴う薬価引き下げが行われる。例年どおりの改定であれば、医療費ベースで800億円程度の財源が確保できる見通し。加えて、今回は後発品の使用促進策として、処方せん様式の再見直しなどで200億円程度がねん出できる。

 これにより2200億円のうち、約1000億円は薬剤関係で確保できるわけだ。

 一方、診療報酬改定については、財政審建議で診療報酬の引き下げ圧力をにじませたものの、病院勤務医をめぐる過剰勤務の実態や、産科・小児科医療をめぐる問題なども議論されており、前回改定のように診療報酬本体にまで切り込むようなトーンは弱い。すでに、中医協診療報酬基本問題小委員会での議論も進んでおり、初再診料の格差是正などが議論の俎上(そじょう)に上がっているところ。

 自民党元総務会長の丹羽雄哉氏は17日の講演で、「全体としてプラス改定する実態にないのも事実」と発言。今年7月の08年度予算概算要求基準の決定の際に浮上した被用者保険間の財政調整が不調に終わった場合には、薬価の追加的引き下げも考えざるを得ないとの認識を示している。

 中医協も来週28日には次期改定に関する意見具申を厚生労働相に提出する方針。12月中旬の08年度予算案取りまとめに向け、厚労・財務、自民・公明、日本医師会など医療団体などによるネゴシエーションが活発化する。

■「建議」より診療報酬改定

 医療費については、診療報酬単価等を一定としても、今後増えつづける見込み。医療費は保険料や税といった国民の負担で賄われていることを踏まえれば、医療機関等に対し医師等の人件費を始め経費の縮減・合理化努力を引き続き求めていく必要がある。

 その際、これまでの診療報酬本体の改定率を保険料・税を負担する国民の賃金や物価の動向と比較してみると、近年のデフレの期間だけでみても、引き続き大きな乖離(3.6%)があり、これを是正する方向で見直していく必要がある。

 診療所と病院を比較してみると、<1>診療所と病院常勤医では、若手医師を中心に従業時間に差がある<2>休日・時間外診療を実施する診療所は少ない<3>同様の診療行為であっても病院に比べて診療所の方が高い点数となっている例もある−など。(抜粋)



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