【北京・西岡省二】北朝鮮の最高指導者、金正日(キム・ジョンイル)総書記(65)の次男、正哲(ジョンチョル)氏(27)が同国の最重要ポストの一つである朝鮮労働党組織指導部副部長に抜てきされていたことが23日分かった。北朝鮮政権に近い複数の関係者が毎日新聞に明らかにした。正哲氏は金総書記と同じ「中央党本庁舎」に執務室を持ち、頻繁に金総書記の指示を受けているという。金総書記が組織指導部での政治活動を通して党組織を掌握し、故金日成(キム・イルソン)国家主席の後継者となった経緯に加え、後継候補の兄弟2人に党要職が与えられなかったことから、金総書記の後継者として正哲氏が最有力となった。
これまで金総書記の後継者として名前が挙がっていたのは、映画女優だった成恵琳(ソン・ヘリム)さん(02年5月死亡)との間に生まれた正男(ジョンナム)氏(36)▽大阪出身の帰国者の高英姫(コヨンヒ)さん(04年6月死亡)との間に生まれた正哲氏▽その弟の正雲(ジョンウン)氏(24)の男性3人。
関係者によると、正哲氏は数年前、組織指導部に配属され、今年になって副部長に昇格したとされる。党務経験が少ないため、金総書記の側近である李済鋼(リ・ジェガン)第1副部長が「後見人」として執務を補佐しているという。
一方、弟の正雲氏は党の要職ではなく朝鮮人民軍に配属され、後継レースから事実上脱落。正男氏は「組織指導部所属」との説が一時流れたが、実際には同部に所属しておらず「放任状態」(同関係者)とされる。
金総書記が組織指導部副部長に抜てきされたのは1969年で、正哲氏とほぼ同年齢だった。関係者は「金総書記が70歳になる5年後には正哲氏は32歳。金総書記が公式に後継者として登場した時と同じ年齢になる。その際に正式発表される可能性が高い」と分析している。
【ことば】◇朝鮮労働党組織指導部◇ 北朝鮮を支配する朝鮮労働党を統制する部署で、北朝鮮社会全般を指導する組織。高級幹部の人事権や各組織に対する検閲権など強大な権限を持つ。金正日(キムジョンイル)総書記も22歳の時に「組織指導部指導員」として実質的な党活動を開始、同副部長、同部長を歴任して権力を固めた。組織指導部長は現在、空席で、金総書記が兼任しているともいわれる。
毎日新聞 2007年11月24日 2時30分 (最終更新時間 11月24日 4時25分)