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34章
1
:
ハリーファン
:2007/10/28(日) 13:07:13
34章のネタバレお願いします!!!
2
:
ポタリ案さん
:2007/10/29(月) 15:23:32
−第34章 The Forest Again−
ついに真実を知った。
かつて、勝利の秘密を学んでいると思っていた部屋の、
埃っぽいカーペットに顔を押し付けて横たわっていた。
最後に、ハリーは、生き延びてはいけなかったのだと悟った。
彼のするべきことは穏やかに死の歓迎を受けることだった。
この先、彼はヴォルデモートとの間に残っている命の関連に、
決着をつけることになっていた。
最後に彼がヴォルデモートの行く手に身を投げ出し、
身を守るための杖を上げもしなかったとき、その終わりは潔いだろう。
そして、ゴドリック・ホローでなされるべきだった使命は終わるだろう。
どちらも、生き延びず、どちらも、生き残らず。
彼は心臓の鼓動が激しいのを感じた。
死の恐怖の中にあるのに、さらに激しくほとばしり果敢に彼を生き続けさせる。
なんと不思議なんだろう。
だが、まもなくそれも止められるだろう。
鼓動の数は限られている。
最後にバラの咲く城を通り抜け、校庭を抜け、森に入るための時間は
どれぐらい残されているんだろう?
3
:
ポタリ案さん
:2007/10/29(月) 15:24:10
葬礼のドラムが連打されているように思えて、
床に横たわっていると恐怖がよぎった。
死ぬのは痛いのだろうか?
どんなときも、起こったことと逃げるを考えてきた。
死というものを決して考えてもみなかった。
彼の生きる意志は死の恐怖より常にとても強かった。
今なお、逃げよう、ヴォルデモートから逃げ切ろうとは、彼は考えてもいなかった。
もう終わってしまった、残された物は、死しかないと彼は思っていた。
気高い不死鳥の羽根の杖が彼を救った、
最後にプリベッド通り4番地を離れた夏の夜に死んでいたなら!
ヘドウィックのように、何が起きたかわからないほど、
あっという間に死んでいたなら!
あるいは、杖の前に身を投げ出して愛する誰かを救ったなら・・・
今の彼は、両親の死さえ羨ましかった。
この、彼自身の破壊への冷酷な道のりは、異なる種類の勇敢さを必要とした。
指がわずかに震えるのを感じて、抑える努力をした。
しかしながら、壁の肖像画は空っぽで誰も彼を見てはいなかった。
ゆっくりと、非常にゆっくりと、彼は身体を起こした。
そして、そうすることで、今まで以上に、生きている自分の身体に気付き、
生きていることを実感した。
なぜ、自分に起きた奇跡や知恵や度胸や決心を、彼は高く評価しなかったんだろう?
全て無くなってしまうだろうに ・・・ あるいは、少なくとも彼は去ってしまう。
彼の呼吸はゆっくりと深くなり、口の中やのどは完全にカラカラになったが、
彼の目はそうではなかった。
4
:
ポタリ案さん
:2007/10/29(月) 15:45:06
キャーなんかゾクゾクしますねぇ〜
すばらしい訳です!!ありがとうございます。
5
:
ポタリ案さん
:2007/10/29(月) 17:02:42
ほんとにすごい!すばらしい!
なんか感動です。
ありがとうございます。
6
:
ポタリ案さん
:2007/10/29(月) 22:34:10
ダンブルドアの裏切りは、どうでもいいことだった。
もちろん、さらに大きな計画があり、
理解するにはハリーがあまりに愚かだったことを今は悟ったのだが。
彼に生きていて欲しいというダンブルドアの願いは、
彼が立てた仮定であり、これまで疑ったこともなかった。
いまや彼の寿命は、ホークラックス全てを消滅することに、
どれだけ時間がかかるかという覚悟だけにかかっていた。
ダンブルドアは、彼のためにそれを破壊するという使命を避けていた。
そして、彼はヴォルデモートではなく自分自身のために素直に徐々に
きずなを結びつづけた。生きるために!
なんと巧妙な、なんと洗練された、これ以上の命を無駄にせず、
だが、虐殺の対象にすでに選ばれた少年に過酷な負担を強いる。
また、死が災難でなく、ヴォルデモートに対するもう一つの打撃になるのだ。
そして、ダンブルドアはハリーが、たとえそれが彼自身の終わりであっても、
最後までやり続け、逃げないことを知っていた。
彼がわざわざそうしむけたからだろうか?
7
:
ポタリ案さん
:2007/10/29(月) 22:34:50
ダンブルドアが知っていたように、ヴォルデモートも知っていた。
ハリーが誰にも彼のために死なせたくないことを、
それが彼の力を阻害することだと気付いていた。
大広間で横たわったままになっているフレッド、ルーピン、
トンクスの情景が彼の心によみがえってきて、一瞬、彼は胸が詰まった。
死はせっかちだ・・・。
だが、ダンブルドアは、彼を過大評価した。
彼は失敗して、蛇は生き残った。
ハリーが殺されたあとでさえ、
ひとつのホークラックスはヴォルデモートと結びついてこの世に生き残る。
誰が、誰がするんだろう・・・
ロンとハーマイオニはもちろんそうする必要があることを知っている・・・
ダンブルドアがなぜ彼に、他の二人を信頼して欲しがっていたかの理由だ・・・
少しだけ早く、彼の本当の宿命を果たすことができたら、彼らは生き続けられる。
冷たい窓に当たる雨のように、これらの想いが、
死ぬ必要があるという覆すことのできない事実の硬い表面に、
パラパラと音を立てた。
僕は、死ななければ。それは、終わらなければ。
8
:
ポタリ案さん
:2007/10/30(火) 09:15:37
くぅぅぅ〜ハリーかわいそう・・・
すばらしい訳です!!
ありがとうございます!!
9
:
ポタリ案さん
:2007/10/30(火) 20:50:07
まるで夢物語のように始まった第1巻でしたが、物語はダークになり、
そしてハリーが大きく成長したことを感じます。
本当にこれは大人こそが楽しめる大作ですね。
続きが楽しみです。
10
:
ポタリ案さん
:2007/10/31(水) 00:24:29
ロンとハーマイオニは離れた場所にいるようだ。
ずっと以前に、離れ離れになったように感じた。
別れの挨拶も説明もせず、彼は決心をした。
行動を共にすることができなかったし、止められるのは時間の無駄だった。
彼は17歳の誕生日に贈られた、中古の金時計を見下ろした。
ヴォルデモートが指定した彼の投降まで、約30分経過した。
彼は立ち上がった。
心臓が慌てふためいた鳥のように激しく鼓動していた。
おそらく、残された時間がほとんどないことを知っているからだろう。
おそらく、最期を迎える前に、
むきになって一生分の鼓動を打っているのだろう。
部屋のドアを閉めるとき、彼は振り返りもしなかった。
城には誰もいなかった。
ただ一人、幽霊のように歩いているのが、
まるで、もう死んでしまったようだと彼は思った。
肖像画の中の人たちはまだ額縁の中に戻っていなかった。
残った全ての活力源は、死者と会葬者でいっぱいの大広間に集中したようで、
その場所全体が不気味に静かだった。
ハリーは透明マントを被って通り抜け、
大理石の階段の玄関ホールへようやく入った。
11
:
ポタリ案さん
:2007/10/31(水) 00:25:03
心の隅では、おそらく見とがめられる、止めてもらえる、
そんなことを望んでいる自分に気付いていたが、
このマントときたら、相変わらず頑固で完璧だった。
だから、彼はやすやすと正面の扉にたどり着いた。
すると、ネビルがすぐ近くに入って来た。
二人一組で校庭から死体を運んでいるところだった。
覗きこんだハリーは、新たな衝撃を受けた。
コリン・クリービーだった。
未成年者にもかかわらず、ちょうどあの時、
こっそりマルフォイ、クラッブ、ゴイルの、後ろにいたに違いない。
小さな遺体だった。
「あのさ、ネビル、僕ひとりで運べるから」
そう言ったオリバー・ウッドは、重たいコリンを消防士のように方に担ぎ上げて
大広間に運び込んだ。
少しの間ネビルはドア枠にもたれて、手の甲で額をぬぐった。
まるで老人のように。
そして、また、より多くの遺体を回収するために階段を降りはじめた。
12
:
ポタリ案さん
:2007/10/31(水) 00:25:37
ハリーは大広間の入り口に戻って、中を見渡した。
人々は動き回り、お互いを慰め合おうとしていた。
死者の側に跪いて、心を込めて眺めていた。
だが、彼が愛した人々、ハーマイオニ、ロン、
ジニーとウィズリー家の人たちやルーナはいなかった。
彼は思った。
最後にみんなを見るために、
ほんのわずかだけ与えられた唯一の時間だったのに。
とはいうものの、目をそらす強さを持てただろうか?
これでよかったんだ。
彼は階段を降り、暗闇に入って行った。
もう明け方の4時に近かった。
校庭の死のような静寂は、息を殺して
彼が使命を果たせるかどうかを、待っているかのように思えた。
13
:
ポタリ案さん
:2007/10/31(水) 07:00:41
あぁ〜〜ハリー!!辛いなぁ〜
遅くまでありがとうございました!!
14
:
ポタリ案さん
:2007/10/31(水) 13:06:00
ああ・・・コリンってここで亡くなってたんだ。
死亡者リストで見たけど、どこで死んだか読みのがしてました。
ものすごいスピード感のあるシーンから過去への旅、
一転して静かな、静かすぎるこのシーン。
作者の上手さを感じます。続きが楽しみです!
訳して下さる方、本当に感謝です。
15
:
ポタリ案さん
:2007/10/31(水) 21:53:43
続きをお待ちしております・・・
16
:
ポタリ案さん
:2007/10/31(水) 21:59:27
いよいよジェームス・リリー・シリウス・リーマスとの再開ですね。
17
:
ポタリ案さん
:2007/10/31(水) 22:01:03
再会でした
18
:
ポタリ案さん
:2007/11/01(木) 00:18:09
別の犠牲者の上に、屈み込んでいるネビルにハリーは近づいた。
「ネビル」
「うわっ、ハリー、もう少しで心臓麻痺を起こすところだったよ」
ハリーはマントを脱いだ。
全くのところ願望から生じた、とっさの思い付きだった。
「たいしたことじゃないんだけどね」とハリー。
「僕、やらなきゃいけないことがあるんだ、聞いて、ネビル」
「ハリー!」突然ネビルは怯えた。
「ハリー、犠牲になろうと思ってるんじゃないよね?」
「違うよ」ハリーはすぐさま嘘をついた。
「そんなことするわけないよ…べつのことさ、
でもしばらく姿を隠すかもしれない。
ヴォルデモートの蛇を知ってるよね。ネビル?彼のでかい蛇…
ナギニっていうんだけど」
「聞いたことあるよ、うん…それがどうかしたの?」
「あれを殺さなきゃいけないんだ。ロンとハーマイオニは知ってる。
でもね、万が一に備えて…」
その恐ろしい可能性に一瞬圧倒されそうになって、話し続けることが辛かった。
だが、もう一度、冷静さを取り戻した。
19
:
ポタリ案さん
:2007/11/01(木) 00:18:54
これは極めて重要なことだった。
ダンブルドアのように冷静な頭脳を保って、確実に万一の場合に備えておく。
他の者が引き継ぐために。
3人のホークラックスを知る人間を残してダンブルドアは死んだ。
ネビルがハリーの立場を受け継ぐべきだ。
秘密を知る人間は3人要るだろう。
「万が一、彼らが…忙しかったら…君にチャンスがあったら…」
「蛇を殺すの?」
「蛇を殺すんだ」ハリーはくりかえした。
「わかったよ、ハリー。君は大丈夫だよね?」
「うんだいじょうぶ、ありがとう、ネビル」
だが、ネビルは離れようとするハリーの手首を掴んだ。
「僕たちみんな戦い続けるつもりだよ、ハリー。わかってるよね?」
「うん、僕は…」
息が詰まりそうで、言葉が続かなかった。
ネビルは変だとは思っていないようだった。
彼はハリーの肩を軽く叩き、
また死体を見つけるために離れて行った。
20
:
ポタリ案さん
:2007/11/01(木) 00:19:25
勢いをつけてマントを被り、ハリーは歩き続けた。
遠く離れて動く者はいなかった。
校庭でうつむく人影に身をかがめている人がいた。
ジニーだと気付いたとき、彼女のすぐ横にいた。
彼は急に立ち止まった。
彼女は母を求める女の子の上に屈みこんで囁いていた。
「だいじょうぶよ」
「そうね、あなたの気持ちわかってるつもりよ」
「でも、家に帰りたいの」その子がつぶやいた。
「もう、戦いたくなんかない!」
「わかってるわ」と言ったジニーの声はうわずっていた。
「うまくいきそうよ」
ハリーは鳥肌が立った。
彼は大声で叫びたかった。
自分はここにいるとジニーに知ってほしかった。
行こうとしているここにいる自分を知ってほしかった。
彼は止めてほしかった、引き戻されたかった、家に送ってほしかった…
だが、ここが彼の家だった。
ホグワーツが最初のそして最高のわが家だと思っていた。
彼も、ヴォルデモートも、そしてスネイプも、
見捨てられた少年達は、ここで家庭を支給されていた。
21
:
ポタリ案さん
:2007/11/01(木) 00:47:55
月並みな感想ですみませんが、本当に情景が浮かぶようです。
ありがとうございます。続きが楽しみです。
22
:
ポタリ案さん
:2007/11/01(木) 20:46:31
そのときジニーは負傷した女の子のそばに跪いて
その子の手を握っていた。
ハリーは大きな努力を自分に課した。
彼が通リ過ぎた時、ジニーは誰かがそばを歩いているのを感じて、
あたりを見回すのを見たような気がしたが、
彼は口を開かず、振り返りもしなかった。
ハグリッドの小屋は暗闇にぼんやりと見えていた。
明かりはなく、ファングがドアを引っかく音も、
よく響く歓迎の吠え声もなかった。
火にかけた銅のヤカンの輝き、ロックケーキと巨大な食べ物、
そして彼の大きなひげ面、ロンが吐いたナメクジ、
そして、ハーマイオニに助けられながら救ったノーバート、
ハグリッドを訪ねたときの全てが…
彼は進んだ、そして今、森の端に達して立ち止まった。
ディメンターの大群が木の間を滑空していた。
ぞっとしたのと同時に、安全に通り過ぎることは到底できないと思った。
彼にはパトローナスをおいて、なんの戦力もなかった。
もはや震えを抑えられなかった。
死は、やはり、たやすい事ではなかった。
呼吸するたびの、草の匂い、顔に当たる涼しい大気が、
とてもいとおしかった。
23
:
ポタリ案さん
:2007/11/01(木) 20:47:30
彼は思った。
人には徐々に経って行く時間があり、その多くの時間はのろのろ経過して行く、
それなのに、自分は一秒一秒に固執している。
その一方で、彼は思った。
進めない、しかし、進まなければならない。
長いゲームは終わった、スニッチは掴まえられた
空をあとにする時が来た…
スニッチ。
力が入らない指で、首にかけたポーチを手探りして引っ張り出した。
終わりに開く。
息遣いが速く激しくなった彼はじっと見下ろした。
今、できるだけゆっくりと進む時間がほしかったが、
スピードが上がったように思えた。
そんな思いを無視したように、あっという間に理解した。
これが終わりなんだ。これがその瞬間なんだ。
彼は金色の金属に唇を押し付けて囁いた。
「僕、死のうとしてるんだよ」
金属の蓋が開いた。
震える手を下ろして、マントの下から取り出したドラコの杖を上げて
呪文を唱えた。
「ルーモス」
真ん中にギザギザの割れ目が入った黒い石が、開いたスニッチの片方にあった。
蘇りの石は、垂直線に沿ってエルダー・ワンドを示す、割れ目が入っていた。
マントと石に描かれていた三角形と円は、今もなお、識別できた。
24
:
ポタリ案さん
:2007/11/01(木) 20:48:22
再びハリーは、考えるまでもなく理解した。
彼らを蘇らせることになんの問題もなかった、
なぜなら、彼はまさに死のうとしていたから。
本当は、彼らを連れてくるのではなくて、彼らが迎えに来たのだった。
彼は目を閉じて、手の上で石を3度回した。
それが起きたのがわかった。
森の端の小枝が散らばった地面を、
現実に華奢な遺体が歩いているような、微妙な動きが周りから聞こえた。
彼は目を開けて周りを見た。
彼らは幽霊でも生身の人間でもないことを知った。
ずい分昔にリドルの日記から逃げたときと同じだった。
そして、彼が持ち続けた記憶そっくりだった。
生きた人間と同じ程度に実体があり、亡霊などではなかった。
近づいてきた彼らは、揃ってやさしい笑顔をたたえていた。
ジェームズはハリーと全く同じ背の高さだった。
死んだ時の服装をして、髪の毛は乱れてクシャクシャだった。
そして、彼のメガネは一方に傾いて、ウィズリー氏のようだった。
25
:
ポタリ案さん
:2007/11/01(木) 21:39:45
嬉しい・・・本当に読みこなしたくて良くわからなかった部分です。
26
:
ポタリ案さん
:2007/11/01(木) 22:48:37
なんかすごーく切ないです。
胸がいっぱいです。
すてきな訳をありがとうございます。
27
:
ポタリ案さん
:2007/11/01(木) 23:54:51
シリウスは背が高くハンサムで生前よりずっと若かった。
ポケットに手を入れて、にこやかな笑顔で
落ち着いて上品にゆっくり歩いてきた。
ルーピンも若く、それほどみすぼらしくなくて、
髪の毛はもっと黒く、濃かった。
彼は、迷える思春期の舞台だった、この馴染み深い場所に戻ってきて
嬉しそうだった。
リリーの笑顔はとびきりだった
彼に近づいてきたとき、長い髪を後ろにはらった。
緑の目は彼とうりふたつで、
まだじゅうぶん見ることができないかのように
彼の顔を熱心に見つめていた。
「あなたは、とても勇敢だったわ」彼は話すことができなかった。
うっとりと彼女を見つめ、このままいつまでも彼女を見ていたい、
それでじゅうぶんだと思った。
「おまえはいつもそこにいるよ」とジェームズが言った。
「とても近くにね。私たちは…とてもおまえを誇りに思うよ」
28
:
ポタリ案さん
:2007/11/01(木) 23:55:37
痛いの?」
子どもじみた質問が、思わず口をついて出た。
「死ぬことかい?全然だよ」とシリウス。
「眠ってしまうより早くて簡単さ」
「そして、あいつも早いことを望んでるさ、早く終わらせてくれってね」
とルーピン。
「あなたには死んでほしくなかったよ」とハリー。
無意識に出た言葉だった。
「あなた達みんな。息子が−」
彼は他の誰よりもルーピンに、懇願するように話しかけた。
「生まれたばかりだったのに残念だよ、リーマス、残念だ」
「私も残念だよ」とルーピン。
「あの子にもう会えないのが残念だよ…
だが、あの子は私がなぜ死んだか、私が何を望んでいたか、わかってくれるだろう。
私は、あの子が幸せな人生を送れるような、世の中を作ろうとしたんだ」
29
:
ポタリ案さん
:2007/11/02(金) 00:35:59
ルーピン大好きな私は、何故作者が彼を死なせたのか納得できないままここを読み、
号泣してしまったことを覚えています。
形は違っても、ジェームズやリリーと同じく「子供を守ろうとして死んだ」のだと、
やっと理解できたからです。
(でも死んでほしくなかったけど・・・)
30
:
ポタリ案さん
:2007/11/02(金) 08:00:43
ルーピン先生〜
もっともっと出てきて欲しかった。活躍して欲しかった。
もっともっと幸せな時間をすごして欲しかった・・・・・。
31
:
ポタリ案さん
:2007/11/02(金) 23:10:23
森の中から吹いてくるひんやりした微風が、ハリーの前髪を持ち上げた。
彼らは行こうとは言わない、これは自分で決定すべきことだと
ハリーはわかっていた。
「一緒にいてくれる?」
「最後までな」とジェームズ。
「やつらにはあなた達が見えるの?」ハリーが訊ねた。
「我々は君の一部分だ」とシリウス。「誰にも見えていないよ」
ハリーは母を見た。
「僕の近くにいてね」彼は静かに言った。
そして、彼は出発した。
ディメンターの冷気は彼を圧倒できなかった。
踏みにじられた根元は、節くれだち、ねじれ、
枝は複雑に絡み合った古い木が密生した中を
彼にとってパトローナスのような同伴者達とともに、堂々と通り抜けた。
暗闇の中、マントをぴったりと身体に巻きつけてしっかり握って、
さらに暗い森の中へ入って行った。
ヴォルデモートがどこにいるのか、全く見当もつかなかったが
見つける確信はあった。
彼と比べるとジェームズ、シリウス、ルーピンそれにリリーは、
ほとんど音を立てずに歩いていた。
彼がみんなの一歩前を歩き続けられた理由は
彼らの存在が彼を勇気づけたからだった。
32
:
ポタリ案さん
:2007/11/02(金) 23:10:53
彼の身体と心が、奇妙に分離したように感じた。
ちょうど、彼は運転者ではなく、乗客であるみたいに
手足が意識的な指示なしで動き、彼は身体から離れようとしていた。
いま、彼の傍らで森を歩いている死者たちの方が、
後方の城に現存する人々よりも、彼にとってはずっと実在感があった。
つまずき、滑って転びながら、
命の終わりへ・・ヴォルデモートへと向かっていると、
ロン、ハーマイオニ、ジニーや全ての人々が、亡霊の類に思えるのだった。
小さな物音とひそひそ声、何か生き物がすぐそばで動いていた。
マントの下でハリーは立ち止まり、あたりに目を凝らし、聞き耳を立てた。
彼の母と父、ルーピンとシリウスも立ち止まった。
「そこに誰かいる」すぐ手の届く近くで、がさつな囁き声がした。
「ひょっとすると、透明マントを被ってるか?」
二人の人物が、すぐそばの木の後ろから現れた。
ハリー、両親とシリウスとルーピンが立っている真ん前で
ヤクスリーとドロホフが、杖に火を灯して暗闇を覗き込んでいるのが見えた。
どうやら彼らには、何も見えていないらしい。
「確かに聞こえたんだが」とヤクスリー「動物だろうか?」
「いかれたハグリッドのやつは、ここで、たまげるほどたくさんの
ガラクタを飼っていやがったからなぁ」
そう言ったドロホフは、彼の肩越しに目を凝らしていた。
ヤクスレーは腕時計を見下ろした。
「時間だ、ポッターは時間を使い切った、やつは来ないぞ!」
「卿はやつが来ると確信しておられた!満足せんぞ」
「戻ったほうがよさそうだ」とヤクスレー。「今の計画を探ろう」
彼とドロホフは、向きを変えて森の奥深くに分け入った。
33
:
ポタリ案さん
:2007/11/02(金) 23:12:08
ハリーは彼らのあとを追った。
彼が行こうとする場所へ、確実に連れて行ってくれるはずだ。
チラッと横を見ると、
母親は彼に微笑みかけ、父親は励ますように頷いていた。
ハリーが前方に光を見るまで、彼らはわずか数分しか移動しなかった。
ヤクスレーとドロホフは、かつて恐ろしいアラゴグが住んでいた、
ハリーがよく知る空き地に出た。
途方もなく大きな蜘蛛の巣の残骸がまだそこにあった。
だが、彼の子孫達はデス・イーター達に追い払われ、
彼らの目的のために戦っていた。
空き地の中央に赤々と火が燃え、
揺らめく明かりが 全く無言で見守っているデス・イーターの群れを
不吉に覆っていた。
何人かはまだマスクを着けフードを被り、その他の者は顔を見せていた。
集団の端に二人の巨人が座り、大きな影を地面に落としていた。
彼らの顔は岩のように厳つく、醜い顔をしていた。
ハリーはフェンリルが、コソコソしながら長い爪を噛んでいるのを見た。
大きな金髪のロウルは、出血している唇を軽く叩いていた。
ルシウス・マルフォイは失敗して怯えているように見えた。
そして、ナルシッサの目は落ち込んで不安でいっぱいだった。
34
:
ポタリ案さん
:2007/11/02(金) 23:12:46
頭を下げ、身体の前に重ねた白い両手のなかに
エルダー・ワンドを持ったヴォルデモートに全ての目が向けられていた。
彼は祈っていたのかもしれない、
あるいは心の中で静かに数えていたのかもしれない。
そして、ハリーは光景の端で、場違いにも
かくれんぼで数を数える子どものことを考えて立っていた。
彼の頭の後ろでは、
相変わらずぐるぐる回ったり、とぐろを巻いたりしながら
巨大な蛇のナギニが、彼女の輝く魔法の檻に入って
奇怪な後光のように浮かんでいた。
ドロホフとヤクスレーが再び集団に加わると、
ヴォルデモートは顔を上げた。
「彼の姿はありませんでした、閣下」とドロホフ。
ヴォルデモートの表情は変わらなかった。
赤い目が、火明かりの中で燃え上がっていた。
ゆっくりと、エルダーワンドを彼の長い指に挟んで、
片方の手の中から引き抜いた。
「閣下」
ヴォルデモートの一番近くに座っていたベラトリックスが口を開いた。
だらしなかった、顔が少し赤いほかは無傷だった。
ヴォルデモートは手を上げて、彼女を黙らせたので
何もしゃべらずに、かしこまって、うっとりと彼を見つめていた。
「私は彼が来ると思った」
高い、はっきりした声で言ったヴォルデモートの目は、急に燃え上がった。
「私は、彼が来ると思っていた」
35
:
ポタリ案さん
:2007/11/03(土) 00:40:58
ドキドキ・・・
クライマックスですね・・・
36
:
ポタリ案さん
:2007/11/03(土) 00:45:11
この怖さ、静かな怖さ。すごいですね。
ハリーが自分の死を覚悟するあたりもすごいと思います。
作者はそんな体験をしたことがあるのかとさえ思わせました。
訳してくださっている方の日本語も、とても滑らかで素晴らしいです。
場の静かな恐怖がひしひしと伝わります。
37
:
ポタリ案さん
:2007/11/03(土) 00:52:13
誰も口を開かなかった。
全員がハリーと同じように怯えていた。
今、心臓は自分であばら骨にぶつかっていた、
まさに彼が投げ捨てようとしている身体から、
あたかも、本気になって逃げようとしているかのように。
透明マントを脱いで、杖と一緒にローブの下に押し込むとき
手に汗をかいていた。
彼は戦う気にならなかった。
「私は、間違いを犯したようだ」とヴォルデモートが言った。
「おまえは間違えてはいない」
怖がっていると思われたくなくて、力をふりしぼって、
出せる限りの大声でハリーは言った。
蘇りの石が、感覚を失った指の間から滑り落ち、
火明かりの方へ進んだ時、
目の隅から両親やシリウスやルーピンが消えるのが見えた。
その瞬間、彼はヴォルデモート以外、誰も重要ではないと感じた。
今まさに、二人だけだった。
すぐに幻想は去った。
デス・イーターが立ち上がると巨人が吼えた。
数多くの叫び声、喘ぎ、笑い声さえ起こった。
38
:
ポタリ案さん
:2007/11/03(土) 00:52:50
ヴォルデモートは立ったまま動かなかった、だが、目はハリーを捉えていた。
ハリーが彼の方へ、進むのを凝視していた。
何も持たずに、だが彼らの間には火だけがあった。
怒鳴り声が上がった。
「ハリー!やめろ!」
彼は振り向いた。
ハグリッドが縛られて拘束されて、手近な木に繋がれていた。
彼の大きな身体が、死に物狂いでもがいたので、頭の上の枝が揺れた。
「だめだ!だめだ!ハリー、なにやってんだ」
「だまれ!」ロウルが叫んだが、
彼が杖を一振りすると、ハグリッドは静かになった。
さっと立ち上がったベラトリックスは、荒い息をしながら
しきりにヴォルデモートからハリーへと目を移していた。
動くものは炎と、ヴォルデモートの頭の後ろで
とぐろを巻いたり解いたりする輝く檻の中の蛇だけだった。
ハリーは胸の上にある杖を感じたが、
それを引っ張り出そうとはしなかった。
蛇があまりにもよく保護されていることを知っていたので、
もし、なんとかナギニに杖を向けられたら
最初に50の呪文が彼に当たるだろうと思っていた。
まだ、ヴォルデモートとハリーはお互いを見ていた。
そしていま、ヴォルデモートは彼の前に立っている少年を考慮して、
少しだけ頭を横に傾けた。
そして、奇妙な楽しくない微笑で、唇のない口がめくれ上がった。
39
:
ポタリ案さん
:2007/11/03(土) 00:54:03
「ハリー・ポッター」とても柔らかく彼が言った。
彼の声はパチパチはぜる炎の音だったかもしれない。
「生き残った少年」
デス・イーターは誰も動かなかった。
みんな待っていた、全てのものが待っていた。
ハグリッドはもがいていた。
そしてベラトリックスは喘いでいた。
そして、ハリーはどういうわけかジニーを
彼女のとても魅力的な容姿を、彼女の唇の感触を思っていた。
ヴォルデモートは杖を上げた。
好奇心の強い子どもが、
進んだらどうなるんだろうと考えているみたいに、
彼の頭は、まだ一方に傾けられていた。
ハリーは視線を戻して赤い目を覗き込んで
彼がコントロールを失う前に
恐怖を示す前に、まだ立っていられるうちに、
素早く、いま起こることを望んだ。
唇が動き、緑の光が閃くのを見た。
そして、全てが去ってしまった。
−34章 end−
40
:
ポタリ案さん
:2007/11/03(土) 01:00:12
励ましていただいてありがとうございます。
34章、すごい文章だったと改めて思いました。
訳させていただいて、光栄でした。
つたない訳で申し訳ないです。
41
:
ポタリ案さん
:2007/11/03(土) 01:13:00
ありがとうございました!
すごく読みやすく美しい文章です!
恐ろしくて悲しくて...とても感動してます。
42
:
ポタリ案さん
:2007/11/03(土) 01:18:57
もー、感激しました!感謝感謝でいっぱいです。
ハグリットが、どんなに辛かっただろう、と、もー、ハグリット、いいやつだ。
43
:
ポタリ案さん
:2007/11/03(土) 06:59:13
ありがとうございました。
臨場感が伝わってきます。
44
:
ポタリ案さん
:2007/11/05(月) 10:25:22
ありがとうございました。名訳です!
45
:
<エバネスコしました>
:<エバネスコしました>
<エバネスコしました>
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Harry Potter and the Deathly Hallows (Harry Potter 7)(UK) Adult Edition
/ J.K. Rowling
7巻原書(UK版)。カバーが大人で素晴らしいデザインです。
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