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福岡・筑前の中2いじめ自殺から1年、遺族「大人がケアを」  (07.10.12)


森君の自殺から1年。ここ数日は同級生ら多くの弔問客が訪れ、遺影に花などを供えた

 「いじめられて、もういきていけない」という遺書を残し、筑前町の三輪中2年、森啓祐君(当時13歳)が自殺してから11日で1年がたった。いじめを発見、根絶する難しさを全国に投げかけたこの事件を受けて、遺族や学校、教育委員会などは、それぞれの立場からいじめをなくそうという取り組みを進めている。

 ◆遺族

 「啓祐の死を無駄にしたくない」――。その思いから、母親の美加さん(37)はこれまでの数十回の講演で、「いじめる側の子供も何らかの原因で心に傷を負い、いじめでストレスを解消している」と訴え、大人がケアすればいじめはなくなるはず、と呼びかけている。

 5月には、いじめのために自殺した子供の親と一緒に、遺族への積極的な情報公開などを求める要望書を国に提出するなど、遺族の「知る権利」の確立のための運動も進めている。「いじめ自殺を防ぐには事実の詳しい把握が重要。誠実な調査と情報公開が行われる制度の整備を国に求めたい」と父の順二さん(41)は力を込める。

 ◆三輪中

 三輪中は今年度、いじめの有無や生徒と教師の関係を把握するため、4種類のアンケートを3、4回実施。回答を全教職員が共有して、生徒を見守る体制作りに努めてきた。「生徒と教師双方に安心感が出てきた」と、権藤博文校長は説明する。反面、森君に関する報道があった日には、登校後に体調不良を訴えて保健室を訪れる生徒が現在も絶えない。

 今年4月から1年間、県教育センターで学校運営などについて研修を受けている合谷智・前校長は、月命日ごとに森君の自宅に出向いて手を合わせているといい、「一人の親として、教師として感ずるところがある」と話している。

 ◆教育委員会

 県教委は、悩みを用紙に記入して投函(とうかん)できる「相談ポスト」を、学校や図書館など約1500か所に設置。さらに、県教委の「いじめ防止対策本部」が2月にまとめた総合的な対策を受けて、幼稚園や保育園を訪ねて子供と遊んだり、妊娠している女性の話を聞くなどして、命の大切さを感じさせる取り組みを行っている学校も増えている。

 ◆地域

 「集中的な報道で町全体のイメージが悪化したので、『早く忘れたい』と思っている人が多いんじゃないでしょうか」。中学1年の長男を持つ主婦(48)は町の雰囲気を指摘する。

 小学6年の長女がいる主婦(38)も「自殺問題そのものへの嫌悪感が高まり、子育てや教育のあり方を見直す機運が地域で広がらなかった」と振り返りながらも、「事件をきっかけに、子供の言動を注意深く見守るようになった大人は多いはず」と語った。


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