地方分権に関する中間まとめが公表

地方分権改革推進委員会は16日、地方分権改革に関する基本的な考え方について中間的な取りまとめを公表しました。  

今後、この中間まとめにより、改革推進計画の具体的な指針の調整が政府内で行われ、最終的な具体案が決定される予定です(平成22年春までに「新分権一括法案」が決定される予定)。

保育関係については、別添のとおり認定こども園の普及と幼保一元化に向けた制度改革、最低基準の見直し、国と地方の役割分担の見直しと補助金を削減となっています。

少子化対策の中核である保育は、国と地方がともに責任を持つ分野であることを幅広く訴えていく必要があります。

 

 

「中間的な取りまとめ」(抄)

平成19年11月16日
地方分権改革推進委員会

  1. はじめに(略)
  2. 審議の経過(略)
  3. 地方分権改革における基本姿勢の明確化(略)
  4. 国民・住民本位の分権改革
    (2)個別の行政分野・事務事業の抜本的見直し・検討

<重点事項>

  1. 医療(略)
  2. 生活保護(略)
  3. 幼保一元化

〔認定こども園制度〕

最近の急速な少子化、男女共同参画、就業構造の変化等の中で幼児教育・保育に対するニーズは多様化している。 こうした状況を踏まえ、就学前の子どもの教育・保育及び地域の子育て支援を総合的に提供する施設として、認定こども園制度が平成18年10月からスタートし、本年8月までに全国で105件の認定こども園が誕生している。 今後もその数は増える見通しであるが、認定こども園制度については、従来の保育所と幼稚園の2つの制度を前提としているため、認定等に係る事務処理や会計処理などが複雑であるとの指摘がなされている。 したがって、現場の実情を踏まえた運用改善に積極的に取り組むべきである。

〔幼保一元化に向けた制度改革〕

あわせて、保育所の入所要件は、保護者が仕事により育児ができないなどの「保育に欠ける」場合としているが、保護者の就労状況や家庭状況など児童をめぐる状況は大きく変化している。 このため、入所要件としての「保育に欠ける」概念を見直すべきである。 さらなる幼保一元化の実現を目指して、幼稚園・保育所について所管省が責任を持って、省の枠組みにとらわれずに抜本的な見直しを行い、地域の実情に応じた子育て施設の設置を可能とすべきである。 その際、認定こども園においては、入所要件に当たらない児童の保育が認められていることや、直接契約方式の採用など、柔軟な制度となっていることを踏まえるべきである。(以下略)

<その他の主な事項>

@ 福祉・保健

〔福祉施設に関する基準〕

各種福祉施設については、一定水準以上の処遇と生活の質を確保する観点から、全国一律の遵守すべき最低基準として、職員の配置や床面積、廊下幅、設けるべき部屋・設備などの施設設備等の基準が定められている。

これらの基準については、例えば特別養護老人ホームの場合には、1人あたり床面積要件の制限により現在政策的に進められている療養病床からの転換がはかりづらい、同様に保育所の場合には、山間地域においては廃校舎等を有効活用した設置が難しい、など地域の実情に応じたサービスの提供が困難となっている、という意見が出されている。

全国一律の基準という位置付けについては、個々の現場における実情が異なるにもかかわらず、画一的に適用し、例外を認めないというのであれば、地域住民の具体的な福祉サービスに対する多様なニーズに応えられない状況が生まれてしまう。 それは地域の知恵と創意工夫を生み出す芽を摘み取ってしまうことにほかならない。国は、全国一律の基準を設けて遵守させるのではなく、標準的な基準を設けることにとどめるべきである。

さらに、最低基準という位置付けについても、昭和20年代に定められた保育所の基準については今や科学的な根拠がなく、療養病床の転換にあたって廊下幅等については基準の緩和措置が採られていることなどをみても、もはや合理性・客観性のある最低基準とはいえない。

したがって、各種福祉施設に関する基準については、国は標準を示し、地域の実情に応じて地方自治体が責任を持って判断を行い、地域ごとに条例により独自の基準を設定することができるようにすべきである。その際、老人福祉施設に関する都道府県の設置認可等の市町村への権限移譲についても検討すべきである。こうした全国一律の基準設定に関する問題は福祉施設の設置運営に関することに限られず、介護保険事業者の指定や介護保険の運営に関する基準等についても指摘されているところであり、これらの点もあわせて検討すべきものである。また、全国一律の基準設定について、地方自治体の条例により異なる定めをすることができるようにすることは、福祉分野のみならず他の行政分野も含めて、(1)@の義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大の観点からも極めて重要な課題である。(以下略)

5 税財政

(4)国庫補助負担金改革

@ 国庫補助負担金改革

三位一体改革における国庫補助負担金改革については、社会保障関係や義務教育費国庫負担金のように、給付やサービスの水準が国によって定められ地方自治体の裁量性が低い国庫補助負担金が大半を占めていた。こうした国庫補助負担金の補助率の引下げ、交付金化の不徹底などにより、必ずしも地方自治体の裁量性を高める結果になっていないとする指摘もある。国庫補助負担金については、地方自治体の自主的な行財政運営を阻害しがちであり、財政資金の非効率な使用を招きやすいことからゼロベースでの見直しが必要である。

国庫補助負担金の相当部分が社会保障など義務的な性格のものとなっており、制度の見直しによって徹底した効率化をはかるとともに、それぞれの分野ごとに国・地方の役割分担を徹底して見直す必要がある。(以下略)

※ 下線=日本保育協会

 

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*協会青年部速報

「第27回全国私立保育園連盟青年会議 岐阜大会」 速報

期日:2007年11月15日(木)〜16日(金)
会場:岐阜都ホテル

テーマ「大人は夢を語れ。」のもと全国から330名を越える青年保育者が、中日ドラで沸く名古屋からすぐのここ「岐阜」に集った。晴天の中、熊本県・熊本市青年部一同(総勢20名)が岐阜の地に降り立った。執行部数名の先生方は前日入りだ。岐阜と云えば織田信長。肥後藩の者としては妙に武者震いがするのは気のせいか?寒い。以下はその熱気溢れる岐阜大会での研修レポートである。

【大会第1日目】

大会プロモーション・ビデオが青年会議 岐阜大会の幕開けを告げ、全ての参加者を出迎えてくれた。 続いての開会式では、主催者を代表して全国私立保育園連盟副会長藤岡省吾氏、全国私立保育園連盟青年会議会長鈴木右氏が挨拶をし来賓の祝辞を頂いた。今日の保育情勢、そして来たるべき時代に向けての全国の青年保育者たちへの期待と役割を、それぞれの立場で語っていただいた。会場にいる全ての参加者、また諸事情で来れなかった方にも訴える内容であり、国の根幹一翼を我々も担っているのだ、という自負を感じさせる内容メッセージ。 約1時間の時間と言う限られた中で、厚労省より雇用均等・児童家庭局保育課保育需給対策官杉原 広高氏より今般の情勢について参加者へ説明がなされた。

記念講演 「心に育つ夢の木」 オークヴィレッジ代表・トヨタ白川郷自然学設立校長 稲本 正先生

先進国は私立が大学教育を担っている。アメリカでは全てといってもいい殆どがそうだ。公からの縛りがない自由な中で、信念を持って教育がなされるべきだ。そういうことに縛りがなく当ることができるのは私立だ。その自負を持っていただきたい。  少子高齢化も、考えてみるならば少ない子どもを、大勢の大人で教育を見ることが出来るということだ。何でもマイナスに考えていてはだめだ。これはチャンスだ。 日本は環境では世界一安全な国だ。周りを四方海で囲まれ、国土は森林に覆われている。人間1人が呼吸するのに必要な樹木は15・6本。しかし、いまの日本で必要な樹木数が一人頭376本!アメリカでは792本!!と言われている。これは大変な数で、これに中国やインドが今の調子で加わると(高度成長を続けていくと)、大変な数の樹木が必要となる。 子どもたちの成長には知識も大切だが、忘れられない体験をさせることだ。聞いたことは忘れる。しかし、見たこと、体験したことは身についていく。教育で個性を持つということは、とても大切なことだと思う。

懇親会

今回330名を超える参加者に会場入りする際、まず手渡されたものがあった。和タオルだ。そう、ここは「群上(ぐんじょう)おどり」の地。徹夜おどりで有名な群上おどりは、400年にわたって歌い踊り続けられてきたという。お囃子と歌に合わせて、その群上おどり再現とのこと!全国の先生方と一緒に踊りの輪に入って会場が一体となった。見てのとおり踊りのあとは、体全体がボロボロになったが、岐阜の街へと懇親を深めるべく足を運び(引きずり)夜が更けていった。

 

(文責:宇土T)


【大会2日目】

二日目はそれぞれの会場で分科会・シンポジウムが行われた。  

シンポジウム  「大人は夢を語れ
 〜未来に向けた私たちの責任〜」
パネラー 稲本 正(オークウィリッジ代表)
古川 芳子(岐阜県総合企画部次長少子化対策化担当)
松園 直美(絵本作家・保育士・母親)
コーディネーター 吉田 正幸(遊育編集長)

〜少子化、児童虐待、地球温暖化、環境破壊、保育制度問題、幼保一元化等、様々な問題が山積している昨今、私たちは未来に何を伝えなければならないのか。それぞれの分野に精通されたパネラーの皆様が自由に夢や希望、自分の思いを語られた。以下に概要を記す。 

 

稲本氏

  • 私立保育園はとてもすばらしいところだ。“私立”というだけあり自由に何をやってもよいところと考える。
  • 人間の幸福は五感が平等でなければならない。そのためには型にはまった保育ではなく、子どもの五感をフルに使った保育内容を。
  • 「夢(憧れ)」を持つきっかけというのは「感動」から生まれる。そのためにも子どもたちにはいろんな経験をさせてほしい。

古川氏

  • “教えると学ぶ”というのは誤りである。子どもには子ども自身が実体験として学び取り経験としていく場が必要で、今となってはそういう場は保育園しか残っていない。
  • 保育園には色んな子どもがいても良い・・・という安心感が保護者の育児不安を取り除いてくれる。保護者の本音、気持ちを正直にぶつけられるような場所が保育園であってほしいし、保護者が困ったときの駆け込み寺的な役割を担ってほしい。
  • 子どもの気持ちを育むには、子どもの言動を否定したり先を教えたり、指示語だけであってはならない。子どもの口から素直に気持ちを引き出せるような言葉かけを。
  • 家庭ではなかなか出来ないことであるが、保育園では全身を使って色んな体験をさせてほしい。
  • 子どものこだわりを妨げない。また子どもの活動をぶつぶつ切らないこと。
  • 気持ちを分かち合うことが生きているということでなないだろうか。

松園氏

  • 夢は思い続け、そして行動することが大事。

吉田氏

  • 今の社会はプロセスよりも結果を重視している。これではいけない。やはりプロセスが重要である。
  • “バリアフリー”というのは完全個人主義と感じる。多少の凸凹があった方がお互いの助け合いが生まれるし、それが福祉本来の姿ではないだろうか。

 


夢。人間誰しも夢を持っている、また夢を持っていたことと思う。しかし、その夢に向かって何をしてきたのであろうか。夢物語という言葉があるが、叶わないものとして淡白に処理をしてきた事実はないであろうか。このように、将来に夢を持たない大人が増えてきたことがこの少子化の要因の一つになっているのではないか。

大人が夢を持たないで子どもに夢を抱かせることは出来ない。パネラーの皆様は自分の体験をもとに、大いに夢を語り、その夢に向かって進むプロセスを話していただいた。また、私たちにぜひ実践していただきたいと様々なヒントを与えていただいた。

メディアの発達とともに視覚と聴覚のみに頼る生活が増えてきた。だからこそ子どもたちには五感をフルに使う場が必要だ。そういう場を提供するのは保育園しかできないのである。私たちは大いに工夫し、子どもたちが子どもらしく生活できる場をコーディネートしていく必要がある。

そういう中で子どもが子ども自身で夢を見つけ、大人は夢に向かって行動する子どもをサポートし、夢がかなう・・・。そして輝かしい未来が訪れる・・・。 これが私たちの究極の夢かもしれない。

(文責:甲佐M)


第1分科会  「子どもの育ち方 〜ヒトとチンパンジーの同じところ、違うところ〜」
           講師:田中 正幸(東京大学霊長類研究所助教)

2000年の出産当時ニュース等でも報道されたアユム、クレオ、パルの3人のチンパンジーの現在までの育ちから、何が人間にだけ見られることで、何が共通することであるかを2時間にわたり映像を活用しながら熱心に話していただいた。

類人猿は身体的制限により未熟な段階で誕生することで、親としての役割、困難さが増し、母親に依存した乳幼児期を過ごすことになる。チンパンジーは5年、ヒトは10年ほどの乳幼児期間を持つが、ヒトは他の霊長類と異なり母親でいなくとも母親代わりをする代理者がいれば育つことが出来る。この代理が出来ることよりヒトの出産間隔はチンパンジーより短く双子の出産もある。この代理者となることが最も多いのが祖母であり、ヒトだけが閉経後何年も生きることが出来る。言い換えれば保育士もこの代理者であり、ヒト特有の崇高な職を担わせて頂いていると感じた。

「子どもの学び」ではチンパンジーが甘え泣きする映像や母親の真似をする映像などとても興味深い映像を見せていただいた。子どもの学習は自発的に起こり、子どもは自発行為への親の対応をすぐに学習し、だだをこねたり、甘え泣きすることを覚える。子どもの習性「親の真似をする」ことを利用し学習につなげていくことも効果的である。

チンパンジーに見習う子育てとし・手本を見せても手を出さない・失敗しそうでも手を出さない・子どもに誘いかけても強制しないと3つ提案があった。

私見と師の感じている現在の教育の問題点を述べていただきその後、30分を質疑応答にあてていただいたがチンパンジーに虐待はないのかという質問や勤勉性を育む上での環境、劣等感や達成感など絶え間なく参加者の手が挙がり、時間的制約で質問が出来なかった参加者(藤田先生)もいたほど知的好奇心を刺激する研修であった。

チンパンジーにも虐待特にネグレクトがあり、それはその母親が幼児期にアフリカから連れて来られたなどの理由により、母親が子どもの時に親より愛情を注がれていないことが大きな要因という。ヒトも本質的な要因は同じであろう。児童虐待は現在の問題のようにいわれることが多く、当事者が責められがちであるが歴史はつながっていることを強く感じさせられる。

(文責:大津B)

第3分科会  「作って 遊ぼう 紙おもちゃ」
         講師:水野 政雄(切り紙造詣作家・遊童館館長)

研修開始するや否や水野氏はあっという間に紅葉を作られた。 一瞬で参加者は釘付けにされ、これから始まる楽しい時間の幕開けを感じた。

材料は様々、折り紙、紙コップ、ボール紙、更には楢の葉まで。 楢で作るふくろう。紙コップで作る ねずみ・へび・こうもり・ティラノサウルス(可動式) 折り紙で作った尺取り虫やジャイロ飛行機など子どもが喜びそうなものばかり。紙一枚から出来るガイコツやカブトムシ、更には動かすことのできるキツツキと切り紙造形作家の技も見せて頂いた。

最初から最後まで参加者全員が童心に帰り楽しんだ。 ただ、振り返ってみると一番楽しそうにしていたのは水野氏だったような気がする。 楽しんで取り組むことの大事さを再確認した研修だった。

(文責:玉名S)

閉会式

それぞれの会場で熱い議論、遊びの紹介等がなされ、終わった後はそれぞれの会場参加者からは充実の表情が見て取れた。

閉会式では青年会議らしく、簡潔にそして力強く大会を締めた感があった。そして次回来年度は福井県開催ということで、福井県保育同友会青年部部長の玉前氏から来年の再会を期してのアピールがあり閉会。二日間の青年会議 岐阜大会が大盛会に終わった。


(編集後記)

組織は進化する。今大会はある意味、重要なと言うか力が入る大会であったと言う。何故かというと昨年岐阜では3団体の一本化がなされ、青年部も正式に発足したばかりのホヤホヤなところ。その地での全国大会。前日入りした本藤部長曰く「実行委員長の目が充血しまくっていた」との言葉どおり総力戦での準備・戦いだったようだ。まさに関が原の戦いバリ?その気合に呼応したく岐阜へ乗り込んだ熊本メンバー。全私保連青年会議事務局長福嶋先生、本藤部長を筆頭に20名の参加数は、開催地&次回開催地を除けば他の追随を許さない断トツであった。

組織は楽しい。厳しい時は組織も人も頑張るし、勢いも増すようだ。青年会議企画部ではブースまで出して組織の活性化の一躍を担ったと言う。一番楽しんでいた本藤部長はマグカップを担当され3日間はそれだけの為に頑張ったとか(笑)。

組織には夢がある。今回、岐阜城・長良川の鵜飼い・飛騨高山・白川郷・野田聖子(?)等など岐阜の全ては次回のお楽しみとなったが、岐阜大会が感動の大成功に終わったことが何よりだった。このメンバーでまた岐阜を訪れたい、純粋にそう思った大会でした。

(総合文責:調査広報委員長 橘)


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