旧日本道路公団が民営化した東・中・西日本の高速道路会社3社は21日、鋼鉄管メーカー「栗本鉄工所」(大阪市西区)が納入した橋用の円筒型枠で、3社の基準よりも強度が不足していたと発表した。型枠のカタログの記載よりも薄い鋼板を使用したうえ強度などの性能も偽って納品していた。栗本鉄工所は「1965年前後から偽装していた」と認め謝罪した。道路3社と国は「強度への影響は小さく、直ちに崩壊・崩落などの危険はない」としながらも、同社の型枠が使われた可能性がある全国の橋約9000本を緊急点検する。
円筒型枠は厚さ1ミリ前後の鋼板製で筒形(直径約30〜160センチ)をしている。車が走る「床版」の内部に空洞を作るため、埋め込んで使われる。型枠の分だけコンクリートが少なくなり、橋が軽量化できる。
高速道路3社はこの型枠の性能基準について、流し込まれたコンクリートの重みによる鋼板のゆがみを10ミリ以下と定めている。しかし、栗本鉄工所は納品の際に添付する性能証明書に、型枠にかかる荷重を実際よりも20〜65%小さくして計算し性能を過大に記入していた。栗本鉄工所が高速道路3社からの指摘を受けて今月、再試験したところ、7種類の型枠が不適合と分かった。さらに鋼板の厚さもカタログより0.1〜0.4ミリ薄かった。
栗本鉄工所の横内誠三社長(62)は会見で「社員のだれが関与したかは調査中」としたが、型枠を生産する全国7工場のすべてで、意図的に鋼板を薄くしていたことを認めた。不正を続けていた理由は「型枠は主要構造物ではないので、軽視したのではないか」と述べた。
道路3社と国は近く、この円筒型枠を使った橋の安全性を調査する有識者の検討委員会を発足させる。国土交通省は各都道府県にも注意喚起した。峰久幸義事務次官は「極めて遺憾。栗本鉄工所には厳正に対応したい。求償も検討する」と話している。
栗本鉄工所の横内誠三社長は21日、大阪市内の本社で記者会見し、「高速道路をご利用の皆様や国土交通省、高速道路3社などに心配と迷惑をかけ、深くおわび申し上げる。全社を挙げて再発防止に取り組みたい」と謝罪。年内をめどにまとめる社内調査結果後に、自らを含む処分を発表する意向を示した。【高橋昌紀・宮崎泰宏】
【関連記事】
クローズアップ2007:耐火建材強度偽装 基準達せず焦り 安全より利益優先
【関連記事】
耐震計算偽装:県は賠償請求棄却を求める−−地裁で初弁論 /群馬
【関連記事】
耐火材偽装:経団連、ニチアスと東洋ゴムを処分
【関連記事】
ニチアス:赤字147億円−−中間決算