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  ▼ 記者の視点
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後発品処方がスタンダードの時代に
処方せん様式の再変更が決定
2007.11.19

 後発医薬品の使用を促進するための環境整備が来年度から一段と進むことが決定的になった。

 9日の中医協・診療報酬基本問題小委員会が処方せん様式の再変更など、厚生労働省提案を大筋で了承した。後発品使用促進策としては、診療報酬・調剤報酬でのインセンティブのほか、2006年度から処方せん様式を変更して院外処方せんにおける後発品への変更を促した経緯がある。さらに後発品メーカーに対しても、全規格取りそろえなどの安定供給、品質確保、情報提供などを促してきた。しかし、中医協の調査(2007年7月)によると「変更可」欄に医師の署名等がある処方せんの割合は全体の17.4%、そのうち実際に変更された割合は8.2%、全処方せんの1.4%にとどまるなど十分な成果は出ていないのが現状。

 こうした背景を受けて中医協・基本小委は処方せん様式の再変更のほか、「疑義照会なしに後発医薬品の銘柄処方を別銘柄の後発品に変更して調剤」「先発品と同等であるとの条件下での剤形変更」「薬局の在庫管理コストの軽減措置」「短期間の後発品お試し調剤」「療養担当規則での後発品使用促進の規定」―などを大筋で了承した。

 この間の論議では特に処方せん様式の再変更をめぐり医師会の反発があったが、「処方権の尊重」を条件に容認に踏み切った。

 こうした一連の促進策により、後発品使用促進のための環境は一段と整備される。すなわち、いよいよ日本でも『後発品処方がスタンダード』の時代を迎えることになる。

 後発品使用促進策は、医療費抑制策の一環だが、過去の医療費抑制策が医療関係者から必ずしも歓迎されなかったのは『医療の質を落とす懸念』が背景にあったからだ。その意味で、先発品と同レベルの品質、有効性・安全性が確認され、治療学的に同等と認められた後発品の使用促進策は医療の質を落とさずに医療費を軽減できる有効な手段といえる。

◎ 問われる薬剤師の説明責任

 従来よりも一段と踏み込んだ後発品使用促進策であるが、これによって厚労省が掲げる08年度からの5年間で数量ベースで30%以上のシェア確保という目標が達成されるかどうかが焦点になる。

 これについて大方の見方は「薬局・薬剤師の取り組みいかんが鍵」というところに落ち着く。中医協の調査では「場合によっては後発品を選ぶ」とする消費者のうち、「医師や薬剤師の説明に納得すれば後発品を選ぶ」との回答が8割近くを占めた。すなわち、『後発品』や『ジェネリック』という言葉は聞いたことがあるものの、十分に理解しているとはいえない状況の中で、医師や薬剤師のアドバイスがあれば、後発品を選択することにちゅうちょしないことを物語る。薬の服用に関して患者の多くは医師よりも薬剤師の方が対話しやすいとの意識を持っていることも勘案すれば、後発品が普及するかどうかは薬剤師の取り組み次第ということになろう。逆に言えば、薬局・薬剤師は後発品使用促進にどれだけ真剣に取り組んだかが今後の評価につながることになる。

 一方、薬局・薬剤師側から見れば、患者が医療の内容を選択する上で薬剤師の関与が決定的に重要という立場になったことで、あらためて説明責任が問われることになる。第5次医療法改正で「医療提供施設」に位置付けられたことと合わせ、薬局・薬剤師は一層の自覚が必要だ。

◎ 分業元年の再来

 今回の一連の措置について、「医薬分業元年の再来」と受け止める向きがある。1974年に処方せん料の大幅引き上げがあり、これが契機になってわが国の医薬分業が事実上スタートしたことは広く知られている。

 今回の措置は、薬剤師にとって当時と同じようなインパクトになるとの認識である。薬局・薬剤師にとっては飛躍のための最大のチャンスともいえる。

 「1万数千もの医療用医薬品がブランド名で処方されてきた状況下では処方医の近くに薬局を設立するしかなかった。原則的に代替可ということであれば面分業に近いものができるようになる」(日本保険薬局協会・三津原博会長)というように、銘柄処方が主流となっている状況は処方せんの受け手側にとっては大きな負担だった。そのことが門前薬局やマンツーマン薬局といった変則的な形態を助長してきたきらいは否定できない。

 薬局・薬剤師には在宅医療における疼痛緩和、休日・夜間対応、さらに生活習慣病への取り組みなど医療連携を機軸とした役割が期待されている。後発品使用促進の環境整備はその試金石として受け止める必要があろう。(藤田 道男)




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