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自縄自縛の日本銀行

2007年11月16日

 サブプライムローン(低所得者向けの住宅融資)問題が、世界を揺るがしている。日本銀行総裁の語るように、このような状況では利上げは無理であろう。

 考えなくてはならないのは、様々な混乱の原因の一つに、日銀の長きにわたるゼロ金利政策もあった、ということである。日本からゼロに近い金利の資金を調達することができれば、結果的にそれが、リスクの高い金融商品、証券に流れ込むことにつながる。

 このコラムで筆者もかつて、出来るだけ早く、日本の金利を正常な状態に戻すべきだ、と警告した。日銀による異常ともいえる低金利は今や、世界経済の隅々にまで組み込まれて、ひずみを生みつつある。このようなひずみが極限に達すると、予期せざる破局が、突如としてやってくる。

 残念なことは、日銀にこのような自覚がまだ、乏しいように見えることだ。

 これまでに利上げのチャンスは何度もあった。しかし、日銀は、利上げを見送り続けてきた。その都度、もっともらしい理屈はつけていた。しかし結果的にこの判断は、政治的に過ぎていたというべきであろう。

 混沌(こんとん)とした出来事に、一定の規則性を見いだす「カオス理論」が教えてくれるように、破局に至るか至らないかは、ささやかな初期条件の違いによることが多い。景気が上向いているうちに、超低金利状態から脱しておかなかった日銀の怠慢は、責められても仕方がないだろう。

 どうにも利上げできない状態に陥った日銀の政策判断の幅は狭まっている。このまま放置しておけば、日銀の自縄自縛の縄が、一層きつくしまってくることは間違いない。

 日銀は今、世界のなかの日銀として、その歴史において最も重要な時期に入っている。その自覚を持った行動をとる必要に迫られている。(可軒)

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