民主党 前原誠司

おはようございます。民主党の前原でございます。このヘリテージ財団のシンポジウムで発言の機会を頂きましたことをまず心から御礼申し上げます。まず、先ほど司会の方から防衛庁長官経験者という説明がございましたが、私はまだ経験しておりません。今は民主党のシャドウキャビネットの防衛担当をしております。いずれは経験をしたいなと思っております。今日は民主党から松本剛明議員と一緒に来させていただきました。松本剛明議員はシャドウキャビネット防衛担当の副大臣でございまして、お父様は防衛庁長官を経験され、そして曾お祖父さんは初代総理大臣伊藤博文さんという素晴らしい家系の方であり、また能力的にも非常に素晴らしい方でございます。民主党からは今日は二人ここに来させて頂いております。

さて、今日与えられた議題が「新日米安全保障体制における日本の役割」ということでございますので、まずは民主党の日米安保体制に対するスタンスをお話し、次に日米安保体制の戦略的な環境変化、どう認識しているかということをお話し、最後にどういう役割を日本が果たすべきか、ということについてお話をさせて頂きたいと思います。

まず、民主党の日米安全保障条約に対するスタンスでございますが、我々は、同盟関係は大変必要なものであり、今後さらに進化させていかなければならないと考えております。ミサイル防衛にもわが党は賛成でございますし、またイラクの問題では若干の考え方の違いがございましたが、後でお話し致しますように、国際貢献活動というものを精力的に日本は行っていくべきという点では、考え方は今の政府の考え方とさほど大きな違いはございません。後ほどどのように変えていくべきか、ということの中で、若干わが党の考え方も踏まえてお話をさせて頂きたいと思います。

次に戦略環境の変化をどのように考えているかということについてお話をしたいと思います。まず、今までの日米安保条約というのは、第五条が、日本が攻撃された場合にアメリカが日本の防衛の義務を負うことと、第六条で、極東の安定・安全のために日本が米軍に対して施設区域を提供するというものでありました。つまりは、日本に何かあったときにアメリカが助けてくれる、日本はアメリカに何かあったときには助ける義務は負わないが、しかし極東の安定のために基地を提供し、そして特別協定によって費用の負担を行うこと、コストネーションサポート、こういう非対称的な役割のなかで、今まで日米安保条約というのは成り立ってきました。

また、何かあったときの役割分担と致しまして、日本は盾の役割、そしてアメリカは矛の役割を果たすということで、役割分担が決まっておりました。しかし、状況はかなり大きく変わってきました。一つは、もっとも大きな潜在的な脅威であったソ連が崩壊し、日本が共産主義化されるということ、あるいはソ連軍による大規模着上陸進行というものの可能性はかなり低くなりました。それに対して、テロ、あるいはミサイル、あるいは日本の海洋景気が脅かされる、そのような脅威というものの蓋然性がどんどん高くなっているのが今の状況ではないかと思います。

従いまして、今後の日本のとりうるべき役割といたしましては、ミサイル防衛とそして周辺事態における共同対処ということを行っていくこと、また第六条で決められている極東という範囲はあくまでもソ連が存在をしているときの古い定義であり、アジア太平洋地域という地理的範囲を大きく変えていくこと、そして自国の防衛のみに力を注ぐということから、国際の平和と安定、予防でありますとか、紛争処理、あるいはPSI、こういったものに日本も大きく一歩も二歩も踏み出すということが必要なのではないかと考えております。

さて、それを前提として日本の新たな役割ということについてお話をさせていただきたいと思います。まず一つは、安保条約の再定義ということが私は必要ではないかと考えております。先ほど、額賀先生、久間先生からお話がありました、橋本−クリントン間での日米安保共同宣言というのは、この安保の再定義までには至りませんでした。つまりは、極東という概念には大きな変化をもたせることがありませんでした。今なお45年前に作られた極東という概念で政府見解が述べられている、国会で述べられているのが現状であります。本来ならば安保条約の改定というものが私はあるべき姿であると考えておりますが、一足飛びに安保の改定というのは、私は難しいと思っておりますし、日米安保条約のマネージメントの観点からは徐々にそういった話し合いを日本とアメリカの間でしていくということは大切でありますが、一挙に安保の改定ということを政治的な俎上に載せるというのは時期尚早だと考えております。従いまして、まずは先ほど申し上げましたように、極東という地理的限定から条約の中身を変えずに、しかし政府見解をアジア太平洋地域の安全と安定のために再定義を行うことが、私は必要であるというふうに考えております。

次に、1960年に安保条約が改定されたときに定められておりました事前協議制度が形骸化しております。私はこの再活性化というものに取り組まなければならないのではないかと考えております。特に、日本の基地から出撃をする米軍につきましては事前協議の対象になるということでありましたが、ベトナム戦争、あるいは今回のイラク戦争、あるいはその前の湾岸戦争も含めて、実態としては日本から飛び立っていたにもかかわらず、まずは出撃を訓練などで行い、途中で命令が下ったという「移動」という概念を使って事前協議を回避をしてきたという歴史がございますが、これについて私は厳格にしていくべきではないかと考えております。

そして今後も日本の国内における米軍の基地の存在というものは必要であると私は考えておりますが、少なくとも全ての基地を日本が管理し、そして航空管制においても日本が主体的に行うような状況に、このトランスフォーメーションを契機として日本の主体性というものを私は取り戻していくことが重要なことではないかと考えております。

次に、2プラス2の共同宣言の中に、地域世界における地域とそして世界という二つの領域における共通の戦略目標というものが定められました。私はこれは、日本とアメリカの関係においては画期的なことであると考えております。しかし大事なことは、共通の戦略目標をより具体化し、そして具体的な日米の役割分担というものを定めることが必要であり、その議論がなされなければ共通の戦略目標というものは概念的なものに終わってしまうのでないかと考えております。

次に、日本が果たすべき役割として国際平和と安定に関わる行動がございます。今まで9.11テロを受けましたアメリカによるアフガニスタンへの攻撃、そしてそれの支援、そしてイラク戦争への支援、全て日本は「特別措置法」という、言ってみれば緊急避難的な法律で対応してまいりました。私ども民主党も恒久法の制定が必要であると考えております。現在わが党では集団安全保障基本法というものを制定し、国連決議の下、兵力引き離し、治安維持も含めた活動を認め、そして自衛隊活動の武器基準も国際基準まで緩和をし、そして他国の部隊と協同して対処する場合には、他国の部隊も守れるような中身にするために検討を行っております。

あと3点だけ申し上げたいと思います。次に申し上げることは、前にお話をされたお二人の先生も述べられたことでございますが、日本は情報収集能力というものを強化し、そして今ある情報収集体制というものの統合、そして分析能力の強化というものを行っていかなければならないと考えております。まずは、現在ある情報コミュニティの情報を統合化し、そして分析を加える省庁横断的な情報分析、情報収集機関というものを内閣に作るべきだという議員立法の作成をわが党としていたしております。それと同時に、機密保持体制の強化というものを行っていく必要があると考えております。公務員には機密保持の法的な誓約はございますが、罰則がきわめて緩い状況でありますし、また、国会議員は憲法上の誓約から機密保持の義務が課されないという状況になっております。機密保持が確率をされなければ機微にわたる情報を共有しての戦略対話が出来ないと思いますので、その体制の整備、強化が必要であると考えております。

残り2つでありますが、武器輸出三原則と、技術移転の問題についても我が国として取り組みが必要であると考えております。つい先ほど久間先生がおっしゃったように、今回の防衛体制の見直しでは、ミサイル防衛に限定された技術開発というものを他の分野にも拡げていくことがまずは必要なのではないかと思っておりますし、そして先ほど申し上げた機密保持体制を強化するという前提で、出来る限り日本がアメリカから買う装備のブラックボックスを無くしていく、情報共有化をしていくことが大事であると考えています。

最後に、日本の財政的な制約と今後の武器調達のあり方についてお話をさせていただいて、私のプレゼンテーションを終わりたいと思います。ご承知のとおり日本は巨額の財政赤字を抱えており、今後あらゆる支出の見直しが避けられない状況になっており、防衛費の支出も私は聖域ではでないと考えております。その中にあってミサイル防衛の導入、また中国の軍事費の増強というものを考える中で、また武器輸出三原則の存在の中で、他国からの武器輸入についてのコストを出来るだけ下げていくという努力が求められると考えております。今までの装備体系を見ておりますと、アメリカ国内で買われる価格と、日本が購入をする価格には大きな乖離があります。同盟関係を進化・強化させていくためには、いかにその乖離を無くしていき、アメリカと同レベルのあるいはそれに近い装備品が購入できるかどうかということが今後の大きな議論になっていくのではないかと私は思います。もちろんそのために日本が果たすべき技術の協力、そして先ほど申し上げた機密保持の問題というのは日本の責務として避けられない問題であると考えております。以上、最後は日本の役割についてお話をさせていただきました。これを出来るだけ短い期間の中で取り組み、そして改善していくことが日米両国関係の強化につながると私は考えております。御清聴ありがとうございました。