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【レポート】

モバイルする点字装置「てんてん」 - PC接続で文字情報を点訳表示

(1) モバイル要素を持つ点字表示装置

2004/08/05

井原久美子

3月に発売されて以来、新聞やTVで取り上げられるなど、一部のメディアで注目を集めている製品がある。大阪のベンチャー企業「アスク」が開発した小型円盤式連続点字表示装置「ASKKてんてん」(非課税14万8,000円)だ。

ASKKてんてん。モニタに映し出された文字情報を点訳し、本体中央の円盤に点字を表示する

格段に小型化された点字表示装置

ASKKてんてん(赤)

ASKKてんてん(黒)

ASKKてんてん(黄)。中途失明者に適した、点間距離が一回り大きなLサイズの点字表示タイプもあるという

e-Japan重点計画において、「デジタル・ディバイドの是正」、すなわち「地理的な制約、年齢・身体的な条件等に起因する情報通信技術の利用機会及び活用能力の格差の是正を積極的に図っていくこと」が明記されている。

しかし、点字電子手帳や点字プリンタなど、視覚障害者を補助するコンピュータ製品の多くは、いずれも小型といわれながら、バッテリ内蔵型手帳で1kg前後、プリンタで10kg以上と、特に手帳に関しては日常の"紙とペン"として持ち歩くには負担になる。

そういった経緯の中で開発されたASKKてんてんは、電源はACアダプタ、もしくは外付の乾電池だが、両手に乗るサイズで重量約430gと、それまでの装置に比べて格段に小型化・軽量化を実現した製品だ。スケジュール機能こそ搭載しないが、内蔵メモリ(4MB)を利用するメモ帳機能のほか、PCと接続することでホームページ・メールなどのテキスト情報を点字に変換し、表示することや記録することができる。同梱のRS-232Cストレートケーブルを使えばてんてん同士で通信ができるなど、多機能だ。

単三乾電池4本使用で約6時間駆動する。電池が切れる約30分前にはアラームで通知

てんてんの生産・開発は、松下電器産業出身の長倉貞雄氏が89年に設立したアスクが行なっている。アスク研究所プロジェクトマネージャーの土川智弘氏によれば、てんてんは、1年前にDVDレコーダー部門を担当していた元大手メーカー社員がその技術を生かし、小型化を実現させたそうだ。

2003年には、こういった小型・軽量の面もさることながら、様々な機能が評価され、NBK大賞ヒューマン商品部門賞を受賞。6月末には、米国出荷予定の英語版サンプルを一足速く歌手のスティービー・ワンダーさんに贈呈し、大変喜ばれたとTVなどでも取り上げられている。関西方面の読者なら、ご覧になった方もいるだろう。

回転する円盤がとぎれることなく長文を表示

先日、東京・高田馬場にある日本点字図書館で行なわれたてんてん展示体験会でお会いしたのは、アスクの企画開発室主任・韓星民(ハン・スンミン)氏と販売を担当するアメディア営業企画部の内舘紀昭氏の両氏。机にはてんてん数台とPCが並べられており、これらを使って見学者に試用してもらうのだという。

アスクの企画開発室主任・韓星民氏

てんてん本体は、サイズ210(W)×130(D)×30(H)mmの長方形型で、大きさとしてはモバイルPCに近い。中央に配置された回転式の円盤が、6つのステンレス製の突起(ピン)を上げ下げして点字を表示するのだが、内舘氏によれば、この円盤が最も重要な装置だという。これまでは断続的にしか読み出せなかった小説・メールなどの長文を、点字表示円盤が"回転"することで、「途切れることなく最後まで表示する」そうだ。

実際に稼動させ、円盤部分に人差し指を乗せると、内部で点字が作成される音なのか、「カチカチカチ…」という音がする。素人感覚では回転スピードが若干速いように感じられたが、そこは、使用するユーザーの熟練度に合わせて、100〜400マス/分の間(点字表示部: 15マス)で7段階の調節が可能。「指が痛くなるかも?」といった心配も、スピード調節によって解決できそうだ。

動作モードは4つ。Webの文章情報を点字に変換・回転式円盤に表示する「インターネットモード」、同じく、Outlook Expressのメールの読み出しができる「電子メールモード」、点字を作成・内蔵メモリ(4MB)に記録できる「メモ帳モード」、ダウンロードした点字本などが読める「記憶文章読み出しモード」が用意されており、ユーザーは本体右隅のロータリスイッチを使って切り替えを行なう。この日は「インターネットモード」を紹介して頂いた。

回転する円盤部分


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