DPC、機能係数で差別化へ

 「軽症の急性期と重症の急性期との区別は曖昧で連続性ある概念だから、係数で区別していただくほうが良い」「急性期病院に定義がないとすれば、機能係数で調整すべきだ」――。乱立するDPC病院をめぐる議論は、「機能係数で差別化を図る」という新たなステージに突入した。今後、同分科会の松田晋哉委員(産業医科大医学部公衆衛生学教授)の研究班が機能係数に関する「たたき台」を作成し、同分科会で具体的な検討に入る予定だ。(新井裕充)

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 今後のDPCの在り方について、中央社会保険医療協議会の基本問題小委員会から付託されているDPC評価分科会(分科会長=西岡清・横浜市立みなと赤十字病院院長)は11月12日、同委員会に報告する提案書を取りまとめた。

 提案書によると、DPCは「急性期入院医療を実施している病院」を対象として広く門戸を開きつつ、データ提出期限の厳守やデータの正確性などを要求する。
 さらに、04年度までDPC病院の要件に組み込まれていた「データ/病床比=3.5以上」を復活させ、長期療養の患者を抱えるケアミックス病院などをDPCの対象から外していく。
 「看護配置基準10:1」を2008年3月31日までにクリアーできない病院も、DPC病院の指定から外す。これらの点については、同分科会で既に合意が得られている。

■ 機能評価係数について
 
厚労省は、「データの正確性」「データ/病床比=3.5以上」などの要件をクリアーしたDPC病院について、病院の機能を評価する係数(機能係数)で差別化を図り、診療報酬で差を付ける方針を示している。

 まず、「DPC対象病院として満たすことが望ましい」とされている5つの要件(特定集中治療室管理料、救命救急入院料、病理診断料、麻酔診断料、画像診断管理加算)を機能係数とする。この点については、委員から異論がなく合意した。

 次に、「高度な医療を提供する病院」や「救急、産科、小児科などの不採算部門を抱える病院」を機能係数で優遇する。
 具体的には、@救急、産科、小児科など不採算になりやすい診療分野について評価する、A救急医療体制の整備など高度な医療を提供できる体制を評価する、B高度な医療を提供する体制は地域の必要性を踏まえて評価する――の3点を踏まえ、機能係数に反映する方向で検討を進める。

 西岡分科会長は「この方針で基本問題小委員会に報告するが、ここは議論が詰まっていないので、提案してもこちら(同分科会)に戻ってくるだろう。1年から2年かけてじっくりやらないといけない」と述べ、松田委員の研究班が「たたき台」を作成した後、改めて具体的に審議することを確認した。

■ 調整係数の廃止について
 
病院の機能を評価する係数は、08年の診療報酬改定以降に廃止される調整係数(前年度の収入保証)に代わって導入される。
 質疑で、小山信彌委員(東邦大医療センター大森病院心臓血管外科部長)は「いきなり廃止されると現場が混乱するので慎重にお願いしたい」と求めた。

 これに対して、厚労省保険局医療課の宇都宮啓企画官は「調整係数は次期改定までは維持することが決まっているが、いつ廃止するかは決まっていない。理論的には1年後もある。また、調整係数をいきなりゼロにするか、段階的に廃止するかも決まっていない」と説明した。

 さらに、同局の原徳壽医療課長が続けて説明した。
 「ついでにお金の話をすると、調整係数を平均値のところに設定すると、お金は出ない。平均値より高い病院は(調整係数によって)収入が減るが、平均値が低い病院は何もしないで収入が増える。調整係数を廃止する時、ここが大きな問題になるだろう。何もやっていないのに平均値より低い病院は収入が単に増えるので、それをどうするのか。『それは取り上げてもいい』という意見もあるだろうし…」と述べたところで、委員の間から笑いがこぼれた。

 前回の同分科会で、原課長は「DPC病院の中で高い機能を持つ病院は優遇されるが、持っていない病院は優遇されない。差別化を図っていく」と述べている。
 また、会議終了後、宇都宮啓企画官は「重症患者を扱う急性期病院に(DPCの対象病院を)絞り込んでしまうと、機能係数では差が付かない」と話している。
 軽症患者を抱える地域の一般急性期病院も広くDPCの対象にしつつ、「機能係数の差別化」という形で“DPC2階建て構想”が実現しそうだ。

 今後、特定機能病院や大学病院のような高度な機能を持たない「地域の一般病院」は小児・産科・救急医療などに取り組まない限り、DPC対象病院になる“うま味”がないとも考えられる。
 もっとも、小児・産科・救急医療などへの取り組みが「機能係数」でどの程度まで評価されるのか、まだ見えない。


更新:2007/11/14   キャリアブレイン

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