2005/02/24(木)放送

中部国際空港開港で関空は?
愛知県に開港した中部国際空港。実は、『地方から国際線への乗り継ぎが便利』『海上空港で24時間運航ができる』『3500メートルの滑走路が1本』と、関空とそっくり。2つの空港の距離はわずか150キロ。新たな玄関口の登場で、関空も黙っていられません。中部国際空港は、関空にどのような打撃を与えるのでしょうか。

■関西空港を反面教師に




中部地方の新たな玄関口として開港した『中部国際空港(愛称・セントレア)』。この空港、トヨタをはじめとする民間企業が主導で、『関西国際空港』の失敗を研究して造りました。
出発ゲートの上にあたる4階には、飛行機の離発着が見える広いスカイデッキを設置しました(関空…展望デッキにはバスで移動)。


デッキの側には、江戸の町とヨーロッパの町並みをイメージした商業施設を併設(関空…商業施設は乏しい)。中には、飛行機が見える展望温泉も造られ、まるでテーマパークのようです。



セントレアが目指すのは、日本の地方都市から海外へ直結する『乗り継ぎ拠点』です。国際線への乗り継ぎが同じ建物で、しかも、最短75分で可能。旧名古屋空港のほとんどの国内線を引き継いでいて、成田や関空と比較しても、国内線の充実度が高いのがわかります。


【中部国際空港会社 廣瀬義範常務】
「地方の乗り継ぎ利便性を生かしたお客様が来られれば、非常にありがたいです。そこ(地方)がひとつの鍵になると思います」
関空にとっては、この地方を結ぶネットワークが脅威となります。




セントレアはすでに開港の1ヵ月前から、松山をはじめ、全国20の地方都市で乗り継ぎ効率の良さをアピールしていました。
松山空港から関空行きの飛行機は、早朝と夕方の2便しかありません。一方のセントレアはその倍。これにより、中部経由で関空よりもスムーズに海外へ飛べるわけです。

【松山に住む人は・・・】
「関空で8時間待って、結構しんどかった経験があります」
(Q.楽しむようなところは?)
「ないですよね。だから、じーっと待合室に座って。ベンチで寝ている人も多いですよね」
(Q.セントレアが便利になったら、関空は?)
「中部は乗継が便利なので、関空は使わなくなるでしょうね」

関空危うし!松山の旅行代理店では、セントレアへの注目度が徐々に高まっているそうです。
【JTB松山支店 元岡あゆちグループリーダー】
「関空利用で大阪1泊するよりは、同日で接続ができる名古屋からという可能性があります」



奪われるのは、お客さんだけではありません。中部地方はトヨタをはじめとする製造業の集積地。これらの貨物は成田や関空から輸出されていましたが、多くがセントレアに奪われる恐れがあるのです。


国内最大級の液晶テレビ工場がある三重県亀山市。ここから月に10万台のテレビが関空経由で輸出されていますが、シャープは「今後の動向を見て検討する」と、セントレアの可能性を視野に入れています。



このままでは、人も貨物も奪われる。関空は今年に入り、次々と対抗策を打ち出しました。伊丹から国内線を移す計画も国主導で進んでいて、3月からは新しい航空会社も就航します。


【関空国際空港会社 村山敦社長】
「中部国際空港の開港により、航空物資の分野では旅客以上の空港間競争が展開される。我々も、この競争に積極的に対抗していく」




しかし、セントレアにも不安はあります。開港当初の関空も『乗り継ぎ拠点』を目指していましたが、都市部に比べて地方の出国率が低いことが原因で、東北や四国方面の便は利用者が少なく、相次いで廃止となった痛い経験があるのです。

しかも、松山ではこんな人も・・・
(Q.セントレアって知っていますか?)
「知りません・・・」
「たて、建物ですか?」
「お店?」
「木か花の名前」

地方では、海外旅行に行く人が都市部より少なく、どこまで地方客を取り込めるかが今後の鍵となります。
【中部国際空港会社 廣瀬義範常務】
「去年から、我々自身が路線を結んでいる都市に出向いて共に盛り上げようと、財界とも話をしている」



関空は、2期工事の予算が国から満額認められましたが、その条件として、発着回数を伸ばさなくてはいけません。中部にも隙があるとはいえ、狙い通り地方客を持っていかれてしまえば、関空の未来は視界不良となってしまいます。





いよいよこれで3国際空港時代がやってきたわけですが、関西では、来年2月に神戸空港が開港します。関空にとってはせっかく力を入れた国内線を奪われかねず、頭の痛いところです。関空・伊丹・神戸の役割をどう振り分けるのか、未だ答えは出ていません。

その150km先では、旧名古屋空港の国内線をほとんど受け継いだ中部国際空港が浮かんでいます。ばらばらになった関西と、ひとつにまとめた中部。どちらに軍配が上がるのでしょうか。