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病院建築は機能に応じた多様性の時代へ
重要さ増す進路選択
2007.11.12
医療構造改革時代の病院建築の在り方を、建築関係者は医療者とは異なる立場で考え始めている。名古屋大大学院工学研究科准教授の山下哲郎氏は、「急性期も慢性期も関係なく、すべて金太郎あめのようにどこを切っても同じ病院は今後、おそらくなくなっていく」とし、急性期と療養型病院それぞれの病院の将来像を提示。従来以上に自院の“立ち位置”を明確化する必要性が高まっていることを強調する。
● 機能明確化は不可欠
自院の機能と地域医療での役割を明確にする必要がある―。病院経営者や医療分野の有識者らが、激動の時代を生き残るために不可欠な要素としてよく口にする言葉だ。山下氏もまた、医療提供体制を単独の病院完結型から、地域完結型へと転換させる医療改革の流れの中では、病院の新築・改築について同じことが当てはまると考えている。
山下氏は、施主である病院が新しい病院のコンセプトを検討する段階で、設計者に提示するイメージづくり(基本設計)にかかわることが多い。老朽化による建て替えニーズのほか、1981年に定められた新耐震基準を院内すべての建物がクリアしている割合が4割未満にとどまることや、療養病床再編への対応―といった要素があることから、病院の建て替え・改築のニーズは少なからずあると指摘する。
● 急性期病院は個室の時代へ
急性期病院については、7対1看護配置基準の導入により、「看護単位が小さくなるはず」(山下氏)と指摘。一般病棟の個室化が進むとともに、看護師が直接看護の時間を増やせる構造が多くなることを予測する。 看護単位が、現在主流の50床から35床程度に縮小することと、全体の50%までは個室化できる点を併せて考えると、4床室は1看護単位当たり4室程度しか配置できない計算になる。4床室だと、患者の性別を加味しなければならず入退院管理が困難なため、山下氏は「今は、4床室が並んでいる構造が主流だが、今後の急性期病院は次第に個室化していくだろう」と指摘する。
全室個室になればベッドコントロールが容易になるだけでなく、院内感染対策の面でほかの患者への感染リスクが減る効果も期待できる。看護体制も変化し、病棟の中央にあるナース・ステーションが、個室と個室の間に、分散して配置されることも考えられる。
医療IT化がある程度進んだことから、携帯式の端末を使い、看護業務をベッドサイドで行える環境も整ってきた。「看護師が病室に分散して直接看護の時間を増やす形になる」(山下氏)。実際、そうした構造を持つ病院は増えているという。
● 療養はアメニティ重視へ
一方、療養型の病院については、生活空間を重視した構造が支持されるようになると山下氏はみる。例えば、食堂はもちろん、面会に来た家族がくつろげるデイルームや、リハビリテーションをする患者の休憩スペースが確保された廊下などの重要性が増していく。
病棟の構造については、4床室なのか、個室的多床室(ベッドサイドに窓があり、隣の患者と目線が合わない構造の4床室)が主流になるのか、顕著な傾向はまだみえていないのが現状だという。療養病床再編への対応で、一般病床や医療療養病床、保険が適用されない高齢者施設などの選択を決めかねている病院も少なくなく、山下氏は、「企画段階の病院が多いのではないか」と話す。
好景気を背景に償却期間を短く設定したり、環境問題を考慮せずにすむ時代は過ぎた。建築費の償却期間は50年、100年という「長寿命設計が求められている」(山下氏)という。そうした点からも山下氏は、施主に求められる姿勢として、「明確な意志表示をしなくてはならなくなり、いろいろな意味で決断を迫られている」と強調している。
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