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2007年11月10日(土) 朝刊 26・27面
元戦隊長発言転換/「自決」指示は県 強調
 【大阪】「『集団自決』を指示したのは、軍でなく県だ」―。九日、大阪地裁で開かれた「集団自決」訴訟の本人尋問。沖縄戦時に座間味島で指揮を執った元戦隊長の梅澤裕さんは、閉廷後の記者会見で持論を展開した。尋問では「集団自決(強制集団死)」への日本軍の責任を「ありません」と明言した後、「関係ないとは言えない」と軌道修正する迷走ぶり。日本軍の責任を県に押し付ける責任転嫁の手法に、被告側支援者は「あきれてものが言えない」と言葉を失った。

 約二年三カ月に及ぶ訴訟はこの日、本人尋問で大詰めを迎えた。静まり返る二〇二号法廷。よわい九十の“元軍人”は背筋をぴんと伸ばして着席した。

 「自決命令なんか絶対に出していない」「死んだらいけないと厳しく言った」

 島の住民に命令を出したかを問われ、何度も語気を強めた。

 海上挺進第一戦隊の最高指揮官を務めたが、一九四五年三月二十五日に、日本兵が忠魂碑前で手榴弾を配ったとの今年九月に出た住民証言について「全然知らない」「あり得ないと思う」と自身の指示や関与を否定した。

 午前中の尋問では自決命令の主体を「村の助役」としていた従来の主張から「行政側の上司の那覇あたりからの指令」と大きく飛躍。夕刻の会見では記者団に「(指示は)軍ではなく県なんだ。みんなぼかしてるけど、重大な問題だ」とし、当時の島田叡知事に責任があるとした。

 一方、訴訟を起こすきっかけになった大江健三郎さんの著書「沖縄ノート」を初めて通読したのは昨年だったことを法廷で明かした。訴訟前に大江さんや発行元の岩波書店に抗議したこともなかった。

 大江さんの証言については、会見で「くだらん話」と一蹴。

 「集団自決」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、教科書会社から訂正申請が相次いでいることには「沖縄でワーワー大騒ぎして十一万人だとか言って、また元の悪い教科書に戻ろうという運動がどんどん出てる」と不快感を表明した。

 渡嘉敷島に駐屯した故・赤松嘉次元戦隊長の弟の赤松秀一さんは被告側尋問で、訴訟提起のきっかけが嘉次さんの陸軍士官学校同期からの誘いだったかを問われ「そういうことになりますかね」と認め、支援者らの強い意向があったことをうかがわせた。

 渡嘉敷島での「集団自決」を「(嘉次さんから)直接聞いたことはない」とも明らかにした。

 被告側支援者で大阪歴史教育者協議会の小牧薫委員長は「日本軍の責任を県に押し付けるつもりなのか、と昼休みに支援者と話していたところだった。今日の尋問で元戦隊長がいかに無能だったかを梅澤氏自身が証明した」と厳しく批判した。

訴訟は成り立たぬ/被告側

 【大阪】「集団自決」訴訟で本人尋問が終わった九日午後、被告側代理人の弁護団が大阪司法記者クラブで記者会見した。元戦隊長らから名誉棄損で訴えられている作家・大江健三郎さんの著書「沖縄ノート」について、渡嘉敷島、座間味島の戦隊長の実名を挙げていないことを指摘。秋山幹男弁護士は「梅澤裕氏も隊長が命令したとは書かれていないことを認めており、訴訟として成り立たないのが実情だ」として、名誉棄損が成立していないとの認識を示した。

 秋山弁護士は「沖縄ノート」での「集団自決(強制集団死)」記述について「日本軍―三二軍―慶良間諸島の守備隊という全体構造で、軍の命令・強制があったとの考えで書かれている」と説明。両元戦隊長を個人としてひぼう・中傷したものではないと強調した。

問題点のすり替え/原告側

 【大阪】「集団自決」訴訟で原告側は九日午後、被告側代理人に続いて、大阪司法記者クラブで記者会見した。座間味島に駐屯していた梅澤裕元戦隊長は、被告で作家の大江健三郎さんの尋問について「要点を外してだらだら話し、何てくだらん話をするなと思って聞くのが嫌になった」と批判した。

 渡嘉敷島に駐屯していた故・赤松嘉次元戦隊長の弟の赤松秀一さんも「本で明らかな個人攻撃をしているのに、三二軍を出して問題点のすり替えをしている」と不満をあらわにした。

 原告側代理人の徳永信一弁護士は「大江さんは軍命について軍隊による実行行動の総称としたが、『沖縄ノート』にそんなことは一言も書かれていない。私などではついていけない有名な『大江ワールド』が法廷で展開された」と皮肉った。

     ◇     ◇     ◇     

支援団体、大阪で報告集会

 沖縄戦本人尋問報告集会(主催・大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会ほか)が九日、大阪市内で開かれ、県内外の支援団体から約二百人が参加した。弁護団が、本人尋問の内容を報告。琉球大学の山口剛史准教授が「沖縄戦の真実は消せない―島ぐるみの闘い」、歴史教育者協議会の石山久男委員長が「著書が語る教科書検定問題」をテーマに講演。

 山口准教授は教科書検定問題を取り上げた県内紙を資料として配り、「県民の願いはあくまで検定意見の撤回。全国に連帯の輪が広がっている。さらなる攻勢を政府、文科省へとかけていきたい」と語った。

 石山委員長は「この裁判は検定問題と連動し、計画的に行われたもの」と指摘。「責任を明らかにし、再び同じ過ちを犯さぬよう検定制度を改めてほしい」と話した。

検定意見撤回へ全国集会を開催/来月3日東京

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」から日本軍の強制を示す記述を削除させた文部科学省の教科書検定意見を撤回させようと「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会(沖縄戦首都圏の会)」は十二月三日午後六時半から、東京都の九段会館で全国集会を開く。

 教科書会社六社から文科省に記述の訂正申請が提出される一方で、検定意見撤回に応じない文科省に対し抗議の意思を示す取り組み。千五百人規模の集会を目指し、東京沖縄県人会にも協力を呼び掛けていく。



主なニュース
本人尋問で大阪地裁に入廷する大江健三郎氏(右)=9日午後零時30分(伊禮健撮影)
本人尋問で大阪地裁に入廷する大江健三郎氏(右)=9日午後零時30分(伊禮健撮影)
【10日(土)朝刊】
大江氏「軍命」主張/「集団自決」訴訟【写真左】
□元戦隊長発言転換/「自決」指示は県 強調
検定合格社も訂正申請/全6社「軍の強制」記述
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