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麻酔科学会が外科学会などと足並みそろえ
年度内に提言示す
手術室の透明性・安全性向上へ実態調査
2007.11.7

 日本麻酔科学会が今月中に学会関連約1100病院を対象に、手術中の記録の保存方法や多職種の手術室スタッフの役割分担の実態調査を始める。手術の記録を映像で残して透明性、医療安全、業務効率などの向上につなげる必要性を、提言などの形で示す考えだ。日本外科学会、日本看護協会、日本手術看護学会などとも共同歩調を取る方針で、このほど都内で開かれた初会合では、他団体関係者も基本的に合意した。

 日本麻酔科学会は、手術室の透明性を高める必要があるという問題意識を背景として、2007年度の厚生労働科学特別研究事業「手術室における安全性と透明性の確保に関する研究」の実施主体に選ばれている。

 10月31日に都内であった初の班会議には、日本麻酔科学会から理事長で主任研究者の並木昭義氏(札幌医科大教授)、総務担当理事の古家仁氏(奈良県立医科大教授)らが出席。日本外科学会、日本看護協会、日本手術看護学会から、個人として参加した幹部に、<1>手術室内における透明性の確保<2>手術室の安全体制<3>周術期管理チーム―の実態把握の実施を提案した。

 ハードとソフトの両面から手術室の透明性、安全性の向上を図っていく考えだ。<1>の調査は、手術室内の映像情報と生体情報の共有化と記録実態状況を把握。<3>の調査は手術にかかわる外科医、麻酔科医、看護師、臨床工学技士らを「周術期管理チーム」と位置付け、役割分担の実情を把握する。

 アンケートは、日本麻酔科学会関連の1100施設に送付し、12月中旬をめどに回収。来年1月中に集計を終える予定。班会議ではハード面からのアプローチとして、手術室全体の状況をカメラで撮影して映像を保存、患者・家族らにも提供して透明性を高めたり、インシデント発生時の周術期管理チームの行動パターンを分析して効率的なトラブル対処法を探る考えだ。

 日本麻酔科学会は、術野についても映像記録を残すことを提案した。執刀医以外には分かりにくい手術の進行状況を、ほかのスタッフもモニターで確認できるため、麻酔科医や器械出し看護師らとの連携がスムーズになり、業務効率化につながるというのが理由だ。プロフィットセンターである手術室の効率的な運用は経営上重要課題という点でも意義があるとしている。

● 本来業務に専念できる体制整備目指す

 一方、周術期管理チームの役割分担をめぐっては、薬剤師や看護師の業務の明確化がポイントになると位置付けている。

 看護師の業務の一部を臨床工学技士や事務職が行うことで、看護師は、医療行為の補助や患者の管理に専念できる。また、麻酔科医が1人で麻酔の準備を行うことが多い現状も、臨床工学技士や薬剤師がかかわることで、本来業務に専念できるとしている。薬剤師が準備した薬剤を麻酔科医が確認する体制になれば、専門が異なる2人のスタッフのダブルチェックによって安全性も向上すると考えている。

 初会合では、目的に応じた3つのワーキンググループを設置し、アンケート調査の分析、個別の検討を進めることになった。手術中の記録の映像化は、一部病院で始まっており、5施設程度を視察することも計画している。

 2回目の班会議は調査結果がまとまる来年1月中にも開かれる予定で、今年度中には提言などの形で公表する。08年度以降も研究を継続し、最終的には望ましい手術室の体制や運用のあり方をガイドラインとして提示したい考えだ。



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