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特集:第53回学校読書調査(その2) 1カ月の読書量・書名/読まない理由ほか

 <ホンヨモ! 子ども読書推進運動進行中!>

 ■全校読書、小・中学で浸透 「読まない子」減少、後押し

 本を読まない児童・生徒の割合が、過去10年で大幅に減少してきたことが、毎日新聞社が全国学校図書館協議会(全国SLA)の協力を得て26日まとめた「第53回学校読書調査」で明らかになった。学校での一斉読書活動の広がりに加え、今年の調査では、中学生の野球小説「バッテリー」と、大流行しているケータイ小説がけん引役となっている。一斉読書については、実施校の大多数の児童・生徒が肯定的にとらえており、「本を読むことが増えた」など本好きになる効果を感じる子供たちが多いことも分かった。【田村佳子、中山裕司、福田昌史、堺英雄】

 ◆1カ月の読書量・書名

 ◇中学生、過去最高並ぶ--平均で小9.4冊、中3.4冊、高1.6冊

 ◇「バッテリー」各学年で評判

 5月1カ月間で読んだ本の平均冊数は、小学生が9・4冊で、過去最高を記録した昨年より0・3冊減ったものの過去2番目の多さだった。中学生は3・4冊(同0・6冊増)、高校生は1・6冊(同0・1冊増)。中学生は過去最高だった50年前の冊数に並んだ。

 一冊も本を読まなかった児童・生徒の割合(不読率)は、小学生5%、中学生15%でともにこれまでで最も低かった。中学は2、3年生が昨年よりそれぞれ10ポイントの大幅減。高校生も2ポイント減の48%で、3年ぶりに5割を下回り、ほぼ30年前の水準まで下がった。

 9月末現在で小・中学校の7割、高校の4割弱にあたる計2万5020校が一斉読書の時間を設けており(朝の読書推進協議会調べ)、こうした活動の広がりも読書率を下支えしている。

 読んだ本で最も人気が高かったのは、シリーズ6冊が刊行されている野球小説「バッテリー」(あさのあつこ著)。昨年も中学男子を中心に上位に名が挙がった作品だが、今年は読者層が広がり、小6以上の男女すべての学年でシリーズのいずれかがトップ10入りした。特に男子に人気が高く、中1~高1男子の1位を占めたほか、中1と中2、高1ではシリーズの4冊、中3では同3冊が10位以内に入った。映画化され、今春公開されたことで、読者層が広がったとみられる。

 高校男子上位に入った「一瞬の風になれ」(佐藤多佳子著)、「東京タワー」(リリー・フランキー著)はいずれも「本屋大賞」受賞作。

 中高女子の1、2位はケータイ小説の「恋空」(美嘉著)、「赤い糸」(メイ著)がほぼ独占した。女子の間でケータイ小説の人気は高く、特に中学2、3年生の10位以内は「バッテリー」以外はすべてケータイ小説が占めた。1年間新作の出ていない「ハリー・ポッター」シリーズは20位圏内から姿を消した。

 横書きで改行の多いケータイ小説は、電子メールのやり取りに慣れているこの世代には親しみやすく、コンビニでも手に入る手軽さが受けているようだ。全国SLAは、今回の不読率が大きく下がったのはこれまで一冊も読まなかった層がケータイ小説を読んだためと見ている。

 一方、文章表現力が不十分なものや、過激な性描写、暴力描写が含まれる作品もあることから、ケータイ小説が子供たちの読書の入り口となることを懸念する声もある。全国SLAの小林功参事は「とにかく読ませることを主眼とした『量』から、何を読むかという『質』に、読書指導は転換が求められるのではないか。何でもいいから読ませるという一斉型指導でなく、一人一人の興味に合わせて本を紹介するような指導も必要だ」と話している。

 ◆読まない理由

 ◇読みたいと思わない、10年前から10~21ポイント減

 5月1カ月間に一冊も本を読まなかったと答えた児童・生徒に理由を尋ねると、小学生29%、中学生30%、高校生36%が「読みたかったが読めなかった」と答えた。「読みたいと思わなかった」は小学生54%、中学生59%、高校生54%と、それぞれ過半数に達した。同じ質問をした97年調査と比べ「読みたいと思わなかった」割合は小学生で10ポイント、中学生で15ポイント、高校生で21ポイント、それぞれ減少した。

 「読みたかったが読めなかった」は小学生で3ポイント減ったが、中学生では5ポイント、高校生で11ポイント増加した。本を一冊も読まなかった割合が、97年調査より小学生では10ポイント、中学生では40ポイント、高校生では22ポイントと大幅に減っていることを考え合わせると、「本を読みたい」と思う児童・生徒自体は増えていると言える。「読みたかったが読めなかった」理由を尋ねると、小学生では「読みたい本がなかった」が最も多かった。中学、高校生はともに(1)部活動で時間がなかった(2)勉強・塾・習い事で時間がなかった(3)読みたい本がなかった--の順。

 「読みたいと思わなかった」理由では、小中高とも「マンガや雑誌の方が面白い」、「友達と過ごしたり話している方が楽しい」が上位に挙がった。小学生ではほかに「テレビやゲームの方が面白い」も多かった。

 「普段いつも読まない」と答えたのは小学生では37%だが、中学生では42%で3位、高校生では54%でトップになり、読まないことに特段意味はないという生徒が、高学年になるにつれて増えることがうかがえる。本を読まない児童・生徒を無くすには、年齢の低いうちに読書習慣を身に着けさせることが肝心だ。

 ◆雑誌の読書量・誌名

 ◇男子はマンガ、女子はファッション

 5月の1カ月間に読んだ雑誌の平均読書量は、小学生は6・7冊(昨年比1・7冊増)、中学生4・9冊(同1・4冊増)、高校生3・4冊(同0・5冊増)と、小中高すべてで昨年より増えた。学年ごとにみても、全学年で上昇している。

 男女別では、女子より男子の伸びが大きく、昨年比で▽小学男子2・5冊増▽同女子0・9冊増▽中学男子2・1冊増▽同女子0・6冊増▽高校男子1・1冊増▽同女子0・1冊減。小学男子の伸びが目立つことから、マンガのアニメ化やドラマ化の影響で、原作の掲載誌が人気を集めたとみられる。

 一冊も読まない児童・生徒は▽小学生23%(同3ポイント減)▽中学生30%(同4ポイント減)と、小中では昨年より減ったが、高校生は33%と昨年と変わらず。学年・男女別では高1男子が42%と最も高かった。最も低かったのは小5女子の19%だった。

 読まれている雑誌は、男子は例年通りマンガが上位を占め、トップは小学生の4~5年生が「月刊コロコロコミック」、6年生から高校3年生は「週刊少年ジャンプ」。小4は2位「少年ジャンプ」、3位「Vジャンプ」だが、小5~中1はトップ3を「少年ジャンプ」「コロコロ」「週刊少年サンデー」が占め、中2以上は「コロコロ」が下位に落ち、代わって「週刊少年マガジン」が入る。

 女子は小学生は全学年(1)ちゃお(2)なかよし(3)りぼん--の順。中学生以上になるとマンガよりファッションに関心が高くなり、1位は▽中1=nicola▽中2=Hana☆chu▽中3、高1=SEVENTEEN▽高2、高3=non・no。トップ3は中2、中3の3位に「少年ジャンプ」が入ったほかはファッション誌が占めた。

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 ◇調査報告書を来春発売

 「第53回学校読書調査」と、全国の16歳以上の男女を対象に実施した「第61回読書世論調査」(26日掲載)の結果をまとめ、詳細なデータを加えた報告書「読書世論調査2008年版」を来春、毎日新聞社から発行する予定です。

 報告書は1部3150円(税、郵送料込み)。

 購入希望者は〒100-0003東京都千代田区一ツ橋1の1の1 毎日企画サービス(電話03・3212・0403)へ、はがきか電話でお申し込みください。代金後払いで、報告書を発送する際に郵便振替用紙を同封します。

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 ◇ケータイ小説「恋空」「赤い糸」、中高女子で上位独占

 ◆人気の本ベスト5◆

 ▼小学生

 <4年男子>             <5年男子>                    <6年男子>

(1)日本の歴史            (1)かいけつゾロリのじごくりょこう        (1)日本の歴史

(2)かいけつゾロリのじごくりょこう  (1)怪盗ルパンシリーズ              (2)バッテリー

(2)三国志              (1)三国志                    (3)三国志

(4)西遊記              (1)デルトラ・クエスト2 嘆きの湖        (3)シャーロック・ホームズシリーズ

(5)あらしのよるに          (1)バッテリー                  (5)ハリー・ポッターと炎のゴブレット

 <4年女子>             <5年女子>                    <6年女子>

(1)ナイチンゲール          (1)魔女の宅急便                 (1)日本の歴史

(2)学校の怪談            (1)若おかみは小学生!              (2)ハッピーバースデー

(2)ヘレン・ケラー          (3)子ぎつねヘレンがのこしたもの         (3)ヘレン・ケラー

(2)マザー・テレサ          (4)黒魔女さんが通る! チョコ、デビューするの巻 (4)きのこのひみつ

(5)かいけつゾロリのじごくりょこう  (4)そして五人がいなくなる            (4)キュリー夫人

(5)かいけつゾロリのてんごくとじごく (4)人形は笑わない                (4)野口英世

                                              (4)マザー・テレサ

                                              (4)モーツァルト

 ▼中学生

 <1年男子>        <2年男子>              <3年男子>

(1)バッテリー       (1)バッテリー            (1)バッテリー

(2)バッテリー2      (2)三国志              (2)バッテリー2

(3)江戸川乱歩シリーズ   (3)ブレイブ・ストーリー       (3)三国志

(4)バッテリー3      (4)バッテリー2           (4)東京タワー

(5)佐賀のがばいばあちゃん (4)ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 (4)バッテリー3

 <1年女子>        <2年女子>              <3年女子>

(1)★恋空         (1)★恋空              (1)★赤い糸

(2)★赤い糸        (2)★赤い糸             (2)★心の鍵

(3)バッテリー       (3)★心の鍵             (3)★恋空

(4)★心の鍵        (4)★天使がくれたもの        (4)★クリアネス

(5)★今でもキミを。    (4)★純愛              (4)★純愛

 ▼高校生

 <1年男子>        <2年男子>              <3年男子>

(1)バッテリー       (1)一瞬の風になれ1         (1)東京タワー

(2)バッテリー2      (1)ブレイブ・ストーリー       (2)ダ・ヴィンチ・コード

(3)The MANZAI  (3)親指さがし            (3)一瞬の風になれ1

(3)佐賀のがばいばあちゃん (3)東京タワー            (3)★恋空

(3)バッテリー3      (3)バッテリー            (3)灼眼のシャナ

(3)バッテリー6      (3)ハリー・ポッターと炎のゴブレット (3)リアル鬼ごっこ

 <1年女子>        <2年女子>              <3年女子>

(1)★恋空         (1)★恋空              (1)★恋空

(2)★赤い糸        (2)★赤い糸             (2)★赤い糸

(3)★心の鍵        (3)★心の鍵             (2)★純愛

(4)バッテリー       (4)★もしもキミが。         (4)恋愛写真

(5)★もしもキミが。    (5)★純愛              (5)★teddybear

                                   (5)★クリアネス

 注)書名の前に★があるものはケータイ小説。「怪盗ルパン」など複数の出版社から数多く出ているシリーズはまとめた。

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 ■調査の方法

 調査を行う学校は▽小・中学校は、全国を大・中・小都市と郡部の4地域に分類し、地域ごとに在籍する児童・生徒数の比率に応じて抽出▽高校は全日制課程を9学科に分類し、各学科の在籍生徒数の比率に応じて抽出した。その上で、各校の学年(小学校は4~6年)ごとに1学級ずつ調査対象のクラスを選んだ。

 調査は今年6月の第1週または第2週に、クラスごとの集団質問紙法で、教諭が説明しながら回答を記入する逐次法で実施した。

 調査対象の児童・生徒数は▽小学生39校3519人▽中学生41校3866人▽高校生37校3946人で、計117校1万1331人。

毎日新聞 2007年10月27日 東京朝刊

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