風に吹かれて

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風に吹かれて:in the U.S.A. クーガーになった熟女=國枝すみれ

 クーガー。普通の辞書にはネコ科の大型肉食獣、別名ピューマとある。だが、米国の大都会の夜に出没するクーガーは別物だ。40歳以上、エステで磨いた体に露出度の高いドレスをまとい、若い男を狙ってバーを徘徊(はいかい)する熟女、を意味する。

 クーガーが出没することで知られるサンフランシスコのバーを訪ねた。「今夜は33匹いるよ」。酒場の入り口で年齢チェックをしている男が耳打ちしてくれる。金持ちと結婚し、暇を持て余すマダム、離婚して慰謝料をたっぷり手にした女、医者などキャリア系のクーガーもいる。

 バーには若い女もいるのに、わざわざ熟女と交際したがる男は、何を考えているのか。

 「若い女と付き合うには金がいる」というのは作家のシッド(32)。夢は主夫になること。「金持ちと結婚して、プールサイドで酒を飲み、ゴルフざんまいの暮らしがしたい。そう思って結婚する若い女はたくさんいる。男がまねをしたら悪いかい?」

 エンジニアのジョージ(32)は、若い女に懲り、60歳の女と暮らす友人のパイロット(46)の話をしてくれた。たった6年間で結婚が破綻(はたん)、離婚した妻に財産をごっそり取られた。60歳の恋人は一緒にいるだけで満足し、多くを望まない。

 クーガーとおぼしき熟女に声をかけ、「人生経験が浅い若造と遊んで、楽しいか」と聞こうとするが、嫌がられる。

 「看護師をするぐらいなら、ベビーシッターのほうがまし」と言い切ったのは、不動産王ドナルド・トランプ氏の最初の妻だったイバナさん(58)だ。トランプ氏は58歳で34歳のモデルと3度目の結婚をしたが、イバナさんは来年4月、35歳のイタリア人男優と4度目の結婚をする。

 女だけが「アイ・キャンディー(目の保養)」と呼ばれた時代は終わり、男も鑑賞されるようになった。女優が恋人を「ビューティフル」と形容する。男女の行動の違いの多くは、性差というより、経済力の差からきている。力が逆転すれば、行動も逆になる。

 ロス南部の高級住宅街にあるマンハッタンビーチ。ホテルのバーで、胸が大きく開いた真っ赤なドレスのクーガーが、しばらく周囲を物色していたが、「今夜はたいした獲物はいないわ」という風情で、去っていった。(ロサンゼルス支局)

毎日新聞 2007年10月29日 東京夕刊

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