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10月30日のながさきニュース
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長崎新聞
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原告側が和解解決訴え 中国人強制連行長崎訴訟
第二次大戦中に本県の炭鉱に強制連行され、過酷な労働を強いられたり、移送先の長崎刑務所浦上支所で被爆死した中国人の原告、遺族ら計十人が国と県、三菱マテリアル(東京)、三菱重工(同)に損害賠償を求めた中国人強制連行長崎訴訟の控訴審第一回口頭弁論が二十九日、福岡高裁(牧弘二裁判長)であった。
原告の中国人二人が意見陳述し、敗訴した一審長崎地裁判決に対し「極めて不公平な判決」と訴え、原告側代理人は福岡高裁に和解による解決を求めていく考えを示した。国や企業側は原告側の控訴を棄却するよう求める答弁書を提出した。
意見陳述した李慶雲さん(81)は三菱端島炭鉱での強制労働の実情を訴え「企業側は一銭の賃金も払わず、交渉も責任逃ればかり。正義はどこにあるのか」と怒りをぶつけた。強制連行後、被爆死した喬書春さんの娘、喬愛民さん(66)は「父が連行され、一家の生活は困窮し、私と姉の二人は路頭で物もらいの生活。母は私たちを抱いて泣いてばかりいた」と声を詰まらせ、「加害者の日本政府や企業は言い逃ればかりで良心のかけらもない」と涙ながらに訴えた。
原告二人はこの日、支援者らとともに、福岡市の三菱マテリアル九州支店を訪れ、謝罪や賠償ほか、炭鉱跡地に中国人犠牲者追悼碑の建設を求める文書を手渡した。
三月の長崎地裁判決は、加害行為から二十年が経過し損害賠償請求権が消滅したとする「除斥期間」の適用などで原告の請求を棄却。一方で強制連行と強制労働の事実を認めた上で、被告側の共同不法行為を認定した。
元従軍慰安婦や強制連行・労働など中国人の戦後補償をめぐっては四月に最高裁が「一九七二年の日中共同声明で、中国人個人の賠償請求権は放棄された」とし、請求権自体を否定し原告敗訴が確定したが「原告は極めて大きい精神的・肉体的苦痛を受けた」と認定し「被害者救済に向けた関係者の努力が期待される」とした。
原告側代理人は「最高裁判決も救済すべき問題としている」として和解による解決を求める考えを示した。
次回期日は来年二月十八日。
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