【ヨハネスブルク白戸圭一】スーダン西部のダルフール紛争の和平会議が27日、リビア北部のシルトで始まった。和平会議の開催は昨年5月以来で、スーダン政府は開幕初日、一方的に「即時停戦」を宣言した。しかし会議には最も大きな二つの反政府勢力が欠席。参加した反政府勢力も政府の停戦宣言を信用せず、「史上最悪の人道危機」と言われる紛争の、解決への糸口すら見いだせない状態だ。
和平会議はスーダン政府、反政府勢力双方に影響力を持つリビアの最高指導者カダフィ大佐が仲介し、国連やアフリカ連合(AU)が後押しして実現した。
しかし反政府側の最大勢力「スーダン解放軍」(SLA)と「正義と平等運動」(JEM)が政府との対話を拒否して欠席。小規模な分派6勢力が出席するいびつな形となり、カダフィ大佐自身も開幕演説で「(欠席した2勢力抜きでは)和平は達成できない」と述べた。
出席した反政府勢力指導者も政府への不信感は強い。ロイター通信によると指導者の一人は、政府の停戦宣言について「政府は04年から何度も宣言している。我々は疑っている」と語った。
反政府側が抱く不信の根源には、過去の交渉での合意を守らないスーダン政府の姿勢がある。04年4月、政府と反政府勢力2派が停戦合意したが紛争は継続。同年11月の交渉では政府側が「ダルフールでの軍用機の飛行停止」に同意したが、飛行は現在も続いている。06年5月には政府とSLAが和平に調印したが、政府は他の反政府勢力の掃討を名目に全面的な戦闘を続けている。
スーダンのバシル政権は89年にクーデターで成立した独裁政権だ。国内の各勢力の政治参加を認めれば体制が崩壊するため、国際社会の圧力に応えて「和平合意」を演出した後、合意を骨抜きにして体制の延命を図っている。今回の一方的な停戦宣言も、国際社会の和平要求に応える姿勢を示す「アリバイづくり」とみられている。
他方、反政府側も分裂の繰り返しで、交渉での足並みをそろえることができない。各勢力内の有力者の多くは紛争終結後に政府内で要職に就くことを求めており、これが勢力内の権力闘争を激化させ、組織の分裂を引き起こしている。
AU執行部に近い西側外交筋は「だれも各勢力の要求をまとめることができない状態」と指摘する。
【ダルフール紛争】 ダルフール地方の開発の遅れに不満を抱く地元の反政府勢力が03年1月、政府を相手に武装蜂起して始まった。政府系民兵による反政府系住民襲撃が多発。死者は20万人とされたが正確には不明。約200万人が避難民となり、西隣のチャド、中央アフリカ共和国にも紛争が拡大している。国連安保理は今年7月、2万6000人規模の国連平和維持部隊派遣を決議したが、展開時期のメドは立っていない。中国がスーダンで進める石油開発が、政府側の資金源になっているとの批判がある。
毎日新聞 2007年10月28日 21時05分 (最終更新時間 10月29日 1時59分)