現在位置:asahi.com>文化・芸能>文化>文化一般> 記事

多彩な活動がテーマ 「福原信三と美術と資生堂」展

2007年10月17日15時17分

 資生堂といえば、洗練された化粧品や宣伝などで知られる一方、資生堂ギャラリーなど多彩な文化活動を手がける企業でもある。東京の世田谷美術館で11月4日まで開催中の「福原信三と美術と資生堂」展は、こうした資生堂の活動がテーマ。公立の美術館で私企業の展覧会が開催されるのは珍しい。

 展示は、(1)創業2代目で写真家でもあった福原信三自身の作品、(2)資生堂ギャラリーで展示・所蔵した作品、(3)自社の商品や広告デザインに大きく分けられている。圧巻は(3)で、1897年から現代まで続く化粧水「オイデルミン」の変遷をはじめ、香水びん、せっけん箱、白粉箱などが所狭しと展示されている。さらに20年代から現代までのポスターが壁いっぱいに並ぶ。600点を超す出品物の9割が資生堂の所蔵で、ここまで保存している企業は少ない。

 展覧会の発案者は、04年4月に就任した酒井忠康館長だ。時代に呼応した美術館運営として、企業の文化活動を取り上げようと考えたという。「最近、指定管理者制度という名の下に、美術館を企業化する動きが盛んだが、逆に企業を美術館化したらどうなるかという試み」と話す。「企業を素材に展覧会ができるかという実験」とも。

 資生堂を選んだのは、「単に美術コレクションを持っているだけでなく、商品や広告といった企業活動自体が日本の文化・芸術の歴史に大きな影響を与えてきたからだ」。

 数万点の資生堂企業資料館(静岡県掛川市)の所蔵品から、学芸員の清水真砂さんが展示品を選んだ。「2代目で薬局から化粧品会社への大きなかじを切り、現在に連なる会社のイメージを作った福原信三の活動とその広がりに焦点を当て、美学的な観点から出品作品を選んだ」。輸送費など展覧会の費用は、美術館が負担した。

 酒井館長はシリーズ化を目指しており、既に次に取り上げる企業を検討中という。

PR情報

このページのトップに戻る