経済観測

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問題の根=耳順

 米国のサブプライム問題は峠を越えたと思われていた。ところが、最近、シティコープなど米3大銀行が750億ドル規模の「スーパーコンデュイ(導管)」を設置する計画が出るに及んで、この問題が峠を越えていないことが明らかになった。

 そのきっかけとなったのは、サブプライム不動産融資を基礎としたものを含め、資産担保証券を4000億ドルも保有している多数のSIV(特定投資機関)が資金繰り困難に陥ったことである。SIVは銀行によって設立され、市場でCP(コマーシャルペーパー)を発行して資金を調達し、資産担保証券に運用していたのだが、CPが売れなくなってしまったのである。

 もちろん、SIVは銀行との間にクレジットラインなどを結んでいるが、銀行の方も(シティだけで1000億ドルに上る)SIVをいつまでも丸抱えにしておくわけにはいかない。これらのSIVの多くがバーゼル資本規制をかいくぐるために設立されたものであり、わざわざオフバランスにしたものを今さらオンバランスにはできない。このままでは、SIVは大量の資産担保証券を投げ売りするほかなく、サブプライム問題はさらに深刻化しよう。

 そこで、米財務省の主導の下に3大銀行が巨大な新SIVを設立し、そこに資産担保証券を集中保有させようというわけである。しかし、これは、米国が日本の不良債権処理を批判した資産売却の遅延そのものであり、資産価格の底値を明らかにしないので、むしろ不良債権処理を遅らせるはずである。現に、グリーンスパン前FRB(連邦準備制度理事会)議長は批判している。

 サブプライム問題の根はまだまだ深く、今回のような対応では不十分であり、いずれ政府による救済措置が必要になるといえよう。(耳順)

毎日新聞 2007年10月26日 東京朝刊

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