【東京】高校歴史教科書の「集団自決」検定問題で、文部科学省の現職教科書調査官と教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会委員の一部が「新しい歴史教科書をつくる会」元理事の伊藤隆氏(東京大学名誉教授)と過去に共同研究・執筆していたことが24日、分かった。「集団自決」検定で検定意見の原案を作った調査官と、検定意見を付ける審議会委員が密接にかかわっている構図が浮かび上がり、検定制度の中立公平性が根底から問われそうだ。
日本史小委のうち近現代史の委員は4人。うち伊藤氏と関係するのは広瀬順皓駿河台大学教授、有馬学九州大学教授。調査官は4人中、近現代を担当する村瀬信一、照沼康孝の2氏が関係する。
1983年に伊藤氏と照沼氏は『陸軍畑俊6日誌』(みすず書房)を共編。90年に広瀬氏と伊藤氏が『牧野伸顕日記』(中央公論社)を共編で出版。93年には村瀬、照沼、有馬の3氏が『近代日本の政治構造』(吉川弘文館)を共同執筆した。
97―98年の「日本近代史料に関する情報機関についての予備的研究」、1999―2000年の「(同)具体化に関する研究」では伊藤、広瀬、有馬、村瀬の4氏が共同研究した。
24日の衆院文部科学委員会で、渡海紀三朗文部科学相は村瀬調査官と「つくる会」との関係について「村瀬氏は10年くらい前に採用し、去年までの検定に参加しているが、疑義が持たれるようなことはない」と否定した。石井郁子氏(共産)に答えた。金森越哉初等中等教育局長は「調査官は慎重に選考している」と中立性を強調した。
石井氏は「特異な歴史観を持っている人と同じ研究グループに属する人が調査官と審議会の双方にいることは驚きだ。検定制度の中立性は維持できていない」と批判している。
「つくる会」は戦後の歴史教育を「自虐的」と批判、今回の沖縄戦の検定意見を支持している。
(10/25 9:40)