福知山市民病院(京都府福知山市厚中町)が特定の入院患者について、通常の看護記録とは別に、家族が患者本人や看護師と交わした会話の内容、治療と関係のない家族の個人情報などを詳細に記した「家族来院記録」を作成し、京都弁護士会(中村利雄会長)から「監視行動と評されても仕方なく、プライバシー侵害に当たる」として人権侵害救済申し立てに基づく勧告を受けていたことが23日に分かった。病院は事実関係を認め「一部不適切な表現があった」と謝罪している。
看護記録について、日本看護協会は2004年に策定した指針で、患者の人格などに配慮した記録基準や記載範囲について明文化しているが、患者家族を対象にした規定はない。「医療情報の公開・開示を求める市民の会」世話人の勝村久司さん=木津川市=は「家族を患者扱いして監視した記録で極めて不適切だ。なぜ現場から反対の声が出なかったのか。医療者の人権感覚が問われる」と批判している。
関係者によると、患者が死亡した後の2000年6月、家族が市を相手に医療過誤訴訟を起こし、証拠保全手続きで家族来院記録の作成が判明した。記録は1998年12月から2000年1月の1年余りにおよび▽家族の来院日時▽何をしたか、話したか▽その際の表情−などが180ページにわたって記され、記載した看護師がサインをしていた。
家族からの申し立てを受け、弁護士会が昨年夏から関係者の聞き取り調査をした。病院側は「治療の際に家族と病院の間で行き違いが生じていたので、言った言わないの無用な紛争を防止するために記録した」と主張した。しかし弁護士会は「日常の看護にあたる全看護師が家族の同意を得ずに入退室時刻から家族の動作、看護師とのやりとりを網羅的に記録しており、必要性や相当性に欠ける」と指摘し、9月21日付で勧告した。
また弁護士会は看護記録と家族来院記録に親族の家族構成や経済状況まで記されている点について「名誉感情の侵害」として是正を求めた。
福知山市民病院は「勧告書を真摯(しんし)に受け止め、今後はプライバシーの侵害に当たるような監視的な記録は行わないよう徹底したい」としている。
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