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【主張】亀田父子処分 持ち上げた周囲にも責任
日本ボクシングコミッション(JBC)は、世界ボクシング評議会(WBC)フライ級タイトルマッチで反則を繰り返した亀田大毅選手を1年間のボクサーライセンス停止にしたのをはじめ、父親の史郎トレーナー、兄の興毅選手にもそれぞれ処分を下した。
大毅選手は試合中、王者の内藤大助選手を投げ飛ばし、グローブの親指の部分で目を突くなどの行為を公然と行った。明らかなルール違反だ。
ボクシングはリングの上で、選手同士が殴り合い、相手を倒す競技で、時には、死に追いやる危険性を伴っている。だからこそ、互いに敬意を払い、試合終了のゴングが鳴れば、勝敗を別にして健闘をたたえ合うスポーツだ。この基本から逸脱した亀田一家の行動は見苦しい限りだった。ペナルティーは当然である。
JBCにも混乱を招いた責任がある。大毅選手は実力不足にもかかわらず、派手な演出で注目を集めて世界戦を実現させる手法を黙認し、結果的に支援してきた。また、WBCのルールでは、セコンド(選手に付き添い、アドバイスをおくる役)に親族がなることを禁止しているにもかかわらず、「JBCでは過去に例がある」として認めてしまった。
試合後、多くのファンから抗議を受けると一転して、事情聴取さえ行わずに処分を下すちぐはぐさだった。
視聴率至上主義のテレビ局にも問題がある。試合を中継したTBSは「親子の絆(きずな)」というストーリーを作り、亀田一家を持ち上げ続けた。昨年8月の興毅選手の世界戦の平均視聴率は42・4%(ビデオリサーチ関東地区調べ)に達し、11日の大毅選手の試合も、アンチ亀田ファンも加わって、平均28%(同)を記録した。
スポーツ中継の人気番組だったプロ野球・巨人戦の平均視聴率は今季、10%を割り、かつての勢いはない。それに代わる番組を探しているテレビ局にとって、容易に高視聴率をマークしてくれる「亀田一家」は魅力的な商品といえるのだろう。
だからといって、メディアが意図的にスター選手を作っていいわけではない。スポーツではその力と技に感動したファンが応援してはじめて、真のスター選手が生まれるのである。