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医師確保対策基金による活用策も
滋賀県の医師確保対策
県国保連、県病院協会、滋賀医科大などが協力

2007.10.19

 全国的に医師不足が問題となる中、滋賀県では県・県医師会・県国保連・県病院協会・滋賀医科大などが協力して、県を挙げた医師確保の取り組みが始まっている。県では2007年度から新規事業として医師確保総合対策事業(予算約9600万円)を開始。さらに06年度補正予算で創設した医師確保対策基金(3億円)を活用して、修学・研修資金貸与事業や女性医師の就業支援などにも乗り出している。

● 顕在化する医師の偏在

 滋賀県が06年8月に実施した「医師確保対策にかかる実態調査(病院対象)」によると、新医師臨床研修制度実施前の03年に比べ、県全体の医師数はわずかに増加していた。しかし、地域別にみると湖西・甲賀・東近江・伊香郡などでは医師不足が深刻化。診療科別では産科や小児科の診療縮小が相次ぐなど、特定の地域や診療科で医師が少ないなどの遍在が目立っている。

 県地域医療対策協議会が今年1月に作成した医師確保の方策に関する中間まとめでは、<1>新医師臨床研修制度により自由に病院を選択できるようになったこと<2>ベテラン医師の開業志向<3>若手医師の都会志向―の3点を医師不足の要因に挙げている。

 こうした問題点を踏まえ、県では今年度から「医師確保総合対策事業」を開始した。その一環として、医師確保システムの構築などを目的に、「医師確保支援センター」を新設。同時に、インターネットでの情報発信機能も強化しており、将来的にはセンター独自のホームページ設置を検討している。

 具体的な医師確保対策としては、▽県職員身分による医師雇用▽県全体で取り組める研修カリキュラムの作成および研修会などによる研修医確保定着事業▽女性医師の就業支援▽修学・研修資金貸与▽病院の職場環境整備に対する資金援助―などを行っている。

 県職員身分による医師雇用は、産科医と小児科医を各1人雇用し、県地域医療対策協議会が認めた医療機関に派遣する。給与は病院側が負担するが、県は研究資金を医師に貸与する(2年間勤務すれば返還免除)。

 また、研修医の県内定着を目的に、県では2年目の研修医向けに合同研修会を実施している。1年目の研修医については、県医師会が全国でも珍しい研修会を今年から実施しており、県も補助金を出して活動を支援している。県医師会では来年以降も同様の活動を行っていく方針だ。

 さらに、医師の定着を促す魅力ある病院づくりとして、滋賀医科大に県の寄付講座「地域医療システム開発講座」(今年度から3年間継続)を今年9月に設置した。県では寄付講座により、効率的な医師配置など、地域医療システムに関する研究をサポートしていく方針。同様の目的で、県全体で取り組める後期研修医の専門研修カリキュラムの作成にも乗り出す。

● 女性医師の職場復帰支援

 女性医師の就業支援では、職場復帰支援や離職防止対策として、県内の公立・公的病院に対し、職場復帰に必要な研修の実施を委託するとともに、職場環境を整備した医療機関への資金援助を実施する。

 このほか、女性医師の復帰奨励を目的に、再就業を希望する女性医師に240万円を貸与。復帰後1年間、県内の公立・公的病院に勤務すれば返還を免除する。

 修学・研修資金も拡大。小児科や産科など医師不足の著しい科の専門医を目指す医学生・前期研修医・後期研修医に対して修学・研修資金を貸与し、卒業後や研修終了後に一定期間、県内の病院に勤務すれば返還を免除する。貸与枠は医学生3人・前期研修医3人・後期研修医4人の予定。

 こうした県の医師確保総合対策事業については、県医師会・県国保連・県病院協会・滋賀医科大なども協力している。

 県病院協会は昨年3月にドクターバンクを開設。滋賀医科大では、地域枠推薦入学の定員を今年から1人増の7人にした。県では、将来的にはさらに定員の増員を要請していく方針。

 また、県国保連は08年度から、医師確保の取り組みとして医学生や研修医などを対象にした資金貸与事業を開始する予定だ。同事業は、自治医科大などの「奨学金制度」と同様、県国保連が指定する国民健康保険診療施設や自治体病院で一定期間勤務すれば、資金返還が免除される仕組み。修学および研修に必要な支援資金として、年額180万円を最長2年間貸し付ける。08年度から3年間にわたって新規申し込みを受け付けるという。

 前述の県医師会による研修会開催と同様、こうした試みは全国的にも例がなく、先駆的な試みといえる。

● 歯止めかからない医師不足

 ただ、依然として県内の医師不足には歯止めがかかっておらず、産科医不足から、今年に入って彦根市立病院と近江八幡市立総合医療センターが新たに分娩の取り扱いを中止している。ドクターバンクや県による医師募集についても応募の動きは鈍く、今のところ、医師確保対策は目立った成果を上げていない。

 とはいえ、県の医師確保対策事業は始まったばかり。県では、8月1日時点での勤務医の実態調査を現在集計中で、これらの結果を踏まえ、引き続き医師確保対策に注力していく方針だ。

(写真=滋賀県医師会の研修会で新人医師を激励する嘉田知事〈右〉)




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