沖縄戦の集団自決問題…揺れる教科書会社、月内にも訂正申請
沖縄戦の集団自決を巡る高校日本史の教科書検定問題で、「日本軍の強制」に関する記述について文部科学省への訂正申請を検討している教科書会社5社が、どのような表現にするか苦慮している。渡海文部科学相が「訂正申請に対応する」と表明したものの、政治的介入を避ける目的で検定意見の撤回は拒否、事実上、各社にげたを預けたためだ。各社は今月中の訂正申請を目指しているが、どこまで『強制』のニュアンスを出していいのか難しい対応を迫られている。
訂正を検討しているのは、東京書籍、山川出版社、実教出版、清水書院、三省堂(いずれも本社・東京)。
このうち、ある会社の担当者は「検定意見が撤回されない限り、修正前の元の表現に戻して申請することは難しい」と言う。訂正の手法として▽「軍の強制があった」とする説と「なかった」とする説の両論併記▽元の表現に近いぎりぎりの表現に変更――の2通りを検討しているという。
別の会社の担当者は「強制のニュアンスが強すぎると検定意見に反してしまうし、弱すぎれば訂正する意味がない。文科省がどう決着させたいのか意図が読めない」と困惑する。
沖縄県民の間には、検定意見を撤回しないまま訂正申請で対応することに反発の声が根強い。このため、会社側には「修正前の表現に戻らなければ、今度は我々が批判の対象になりかねない」との懸念もある。だが、文科省は訂正の表現について言及しておらず、各社は「それぞれが知恵を絞るしかない」と口をそろえる。
中には、訂正申請後の教科用図書検定調査審議会で検定意見が事実上撤回される可能性を期待する担当者もおり、「文科省は沖縄戦の専門家を審議会に入れることも検討しており、そうした動きも見極めて、踏み込んだ記述ができるか判断したい」と話す。次年度から使われる教科書は通常、11月中に内容を固め、12月末までに印刷を終える必要があり、各社とも今月中に訂正を申請したいとしている。