日経サイエンス

日経サイエンスは米国の科学雑誌「SCIENTIFIC AMERICAN」の日本版です。

CONTENTS


メールニュース会員登録(無料)
モバイルマガジンのご案内
定期購読のご案内
SCIENTIFIC AMERICAN
バックナンバーのPDF販売

PDFダウンロード購入この記事をダウンロード購入する

 肥満は本当に健康に悪いのか?

イメージW. W. ギブズ(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)
 
 米国では,成人の10人に6人は「太り気味(過体重)」または「肥満」に分類される。太った人の大部分にとって余分な脂肪は本当に健康上の重大なリスクなのだろうか?太り気味や肥満とされる人が無理な食事制限をしたり,減量を試みるのは,益よりも害になるということはないのだろうか?
 この考え方は通説に反する。一般に信じられているのはこうだ:過度の肥満により,米国では年間30万人の命が奪われており,1980年代以降,肥満人口が増えていることから,糖尿病や心疾患,ガンなど多数の病気の増加が予測される。
 実際,今年3月,医学専門誌のNew England Journal of Medicineの特集記事で,オルシャンスキー(S. Jay Olshansky)とアリソン(David B. Allison)らがこの懸念を裏付けるような発表をした。彼らは,肥満が非常に増えているせいで,「過去200年間順調に続いてきた平均寿命の伸びは,まもなく止まるだろう」と述べた。ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙など多くの新聞でも,今後数十年間で,肥満により平均寿命が5年も縮まるという予測を強調した。
 だが,こうした主張に異を唱える学者も増え始めている。肥満の増加が健康に悪影響を与えるというのは大げさすぎるというのだ。そうした見解の本が立て続けに出ている。
 これらの著者は全員が医学以外の分野の学者だ。とはいえ,1980年以降に米国やヨーロッパ各地で肥満人口がほぼ2倍になったという調査にけちをつけているわけではない。また,過度の肥満の場合には,病気の原因になったり,寿命を縮める要因になることがあることも認めている。
 肥満の専門家は,太り気味や肥満は健康上の深刻なリスクであり,このリスクが蔓延しつつあると警告する。だが反対陣営は,そうした専門家の意見は大ぼらだと言い切る。
 CDCや米保健社会福祉省,さらには世界保健機関(WHO)は,太ることは危険だが,努力次第で体重は減らせると宣伝してきた。しかしそうすることで,はからずも肥満を悪者とする風潮が広まり,栄養バランスを考えないダイエットが流行し,結果として体重増加をさらに推し進めたと批判者たちは主張する。「最大の皮肉は,わざわざレッテルを貼ることで,肥満という病気を作り上げた可能性があることだ」。
 
キーワード:
肥満/BMI(体格指数)/死亡率/平均寿命/公衆衛生

PDFダウンロード購入この記事をダウンロード購入する

【目次へ】
 
Copyright 2005 NIKKEI SCIENCE Inc., all rights reserved