2006年06月01日

 

麻生外務大臣 中央アジア政策演説

-中央アジアを「平和と安定の回廊」に-

骨 子

 

平成18年6月

欧     州      局

1.「主役」は中央アジア自身

19世紀、グレートゲームの舞台であった中央アジア。今日も大国・周辺国の関心、利害が交錯するが、「主役」は中央アジア諸国自身。中央アジア諸国がオーナーシップを有するとの認識を土台に国造りに協力するのが日本の基本哲学。

 

2.日本の関与の意義

(1)  日本は世界の平和と安定に自らの繁栄を託す国。中央アジア地域へのイスラム過激主義の浸透やテロの拡大等を防ぐことは、日本を含む世界全体の安定に役立つ。

(2)  中央アジアからのエネルギー資源の安定的供給は世界市場の安定に役立つ。日本は直接輸入していないものの、現在の中央アジアの原油生産量は、160170B/Dで、日本の輸入量の3割強にあたる。

(3)  中央アジア側も日本の関与に関心。歴史を振り返って、外国に振り回されたくないとの思いがある。

(4)  日本の中央アジアへの積極的な関与は、国際的にも広く認識されつつある。中央アジアを論ずる時に日本の存在は無視できないとの雰囲気を作っていく。

 

3.日本の実績

1991年の独立直後からの国造りへの貢献(累計約2800億円。DAC諸国合計の約3割) 

   1997年の「対シルクロード外交」で二国間関係強化の三本柱(政治対話、経済協力、平和のための協力)を表明 

→  2004年、中央アジアの戦略的重要性の高まりを背景に、「中央アジア+日本」対話を立ち上げ、多国間のアプローチを加味

 

4.中央アジア外交「3つの指針」

(1)「地域」を「広域」から見る

         中央アジアの安定・発展は周辺諸国の安定・発展と一体不可分。特にアフガニスタンが重要。いわゆる「南方ルート」を整備し、中央アジアにアフガニスタン経由、海へつながる道をつけることを支援する。既にタジキスタンで、アフガニスタンに繋がる道路の整備に協力しようとしている。また、アフガニスタンの環状道路の復興やパキスタンのペシャワール・カラチ間のハイウェイの建設を支援。

         トルクメニスタンからアフガニスタン、パキスタンを経由し、インドまでパイプラインを敷こうという構想もある。パイプラインが与えるアクセスは、南方ルートの道路ともども、中央アジアにとって、「平和と安定の回廊」となろう。

 

(2)「開かれた地域協力」を後押し

       日本はいわば「触媒」。日本が「これに協力する」と言い、それがきっかけになって中央アジア各国の連携が進む、ということを目指す。

       日本自身、例えばODAでは他の主要援助国や国際機関と協調していく。他の域外国についても、開放性、透明性を維持すべきと考える。中央アジア諸国にとり、諸外国とのバランスのとれた関係が大切。

 

(3)「普遍的価値」の共有に基づくパートナーシップを

       JICAの委嘱を受けた法律分野の専門家が、ウズベキスタンに入り、倒産法の解釈に役立つ注釈書(コメンタリー)を作る手助けをしている。民主主義、市場経済、人権保障、法の支配などは、このようにしっかりした制度を石垣を組むように、一つ一つ積み上げていくことから始まる。制度を地道に作っていく先に、経済の発展が民主主義を育て、それが平和と幸福を生むという成功パターンが、中央アジアでも根付くことを期待。

       価値観を共有する他の域外国も協力を続けてほしい。

 

6.6月5日の「中央アジア+日本」会合のポイント

(1)  アフガニスタンのゲスト参加

(2)  「行動計画」の策定 → テロ・麻薬対策、環境、水、貿易・投資、輸送についての地域協力等

 

7.おわりに

地道な施策の先に中央アジア・アフガニスタン・南西アジアを「平和と安定の回廊」とするという大きな目標を、国際社会と協調しつつ追求したい。

(了)