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「てっぱく」で格差を考える

国鉄民営化は正解だったのか

北澤 強機(2007-10-19 05:00)
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 10月14日、3000人以上の行列に迎えられ「鉄道博物館」(以下、てっぱく)が埼玉県さいたま市大宮区大成町にオープンした。
鉄道好きはもちろん、大人から子どもまで興奮!!(撮影:北澤強機)
 その展示物やシミュレータについてはテレビなどのメディアや、行ったひとのブログが数多く存在するようなので、そちらに任せたい。私が注目したのは、現在の日本の大きな問題である、地方格差の原点のひとつといっていい展示物があったことだ。

 奇しくも、てっぱくがオープンした14日のオーマイニュースには、小喜多雅明記者による「JRの旅に都市と地方の圧倒的格差を見る」という興味深い記事が掲載されていた。その記事は、徳島、香川(高松)、岡山、広島という中国、四国地方の鉄道インフラにふれ、「新幹線で塾に通う高校生」と「徳島の電化されていない汽車」などの対比により「格差」が訴えられていた。

 てっぱくに展示され、私に地方格差を考えさせたのは、2階の南側に75メートルにわたって拡げられた「鉄道歴史年表」だ。これには「国鉄民営化」に至るまでの法整備の状況や、民営化後の「E電」という、まったく流行らなかった愛称のことなどまで、ともすれば「恥」も記載され、民営化とはどういうことか、をよく理解させてくれた。

鉄道歴史年表で、格差の原因は民営化にあったのではと考えた(撮影:北澤強機)
 格差社会は、「ヒルズ族」などの言葉を生んだ高所得層と、ネット難民やワーキングプアといった低所得者層との貧富の差について問題視されているが、小喜多記者の指摘のように、地方と都市の格差も大きな問題であることは間違いない。

 夕張の例を出すまでもなく、財政破綻に押し込まれる自治体は増えることが予想され、高齢化に過疎化が加わり、年金、医療や介護の不安要素が地方に暮らすひとをおびやかしている。

 地方格差を生んだのは、もしかして、中曽根内閣が行なった1987年4月の「国鉄の民営化」が原因なのではないだろうか。いまさら、の話であるのは承知だが、鉄道という交通インフラさえ充分でない地方都市が、この20年間発展するわけがなかったのは、あたり前ではなかろうか。

高速化が進む新幹線だが、てっぱくには懐かしい車両が展示されていた(撮影:北澤強機)
 中曽根内閣が発足したときの私は中学生である。したがって「国鉄の赤字は東海道新幹線建設が原因である」という説や、「自民には国鉄労組を支持母体にもつ社会党をつぶそうという考えがあった」といったことについて詳しくない。また「廃止になった路線がある一方で、発展した鉄道」があることも、「あるのかもしれない」と思うぐらいだ。

 ただ、いま私の手元には『ニューズウィーク日本版』の10月10日号がある。この号にはニューズウィークの名物企画のひとつ「世界の企業ランキング」が掲載されていて、経常利益によるランキングの道路・鉄道部門で東日本旅客鉄道(JR東日本)は世界1位。アメリカのバーリントン・ノーザン・サンタフェ(サンタフェ鉄道)をはさんで、第3位に東海旅客鉄道(JR東海)がランクインしている。

なんだか「銀河鉄道999」の駅みたいだと思う私は39歳(撮影:北澤強機)
 民間企業なのだから、JR各社が儲かっているのは良いことにちがいない。ただ鉄道という国のインフラを民営化させ、地方の発展を止めた末の、世界1位の意味について、もう少しちがった受け止めかたをしてもいいと思う。

 高速道路は、都市部で得た料金で、地方に建設したということが問題視された。鉄道同様、民営化されたのだから、なにを言っても始まらないのだが。

 「地方に郵便が届かなくなるのでは?」と言われながらも、郵便局も、今月から民営化されたのはご承知のとおりである。
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