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【社会】

遊郭開場350年 地元イベント開催危機 吉原ふぇすた 警察『待った』

2007年10月17日 夕刊

イベントを知らせるポスターも“幻”で終わるのか…

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 江戸の遊郭「吉原」が東京・浅草の北(現・東京都台東区千束の一部)に移転して今年で三百五十年になるのにちなみ、地元商店会が来月十一日に開くイベント「江戸吉原 花魁(おいらん)ふぇすた」に、管轄する警視庁浅草署が“待った”をかけた。現地は全国一といわれるソープランド街で、その収益が「暴力団の資金源にもなっている」として、道路使用許可を出さない構えだ。主催者側は「江戸文化を伝えたいだけなのに」と困惑。都も助成金交付を決めたイベントが窮地に陥っている。 (丹治早智子)

 計画によると、イベントは、吉原地区の主要通りを「花道」に見立てて繰り広げられる「お練り」と、「座敷」に見立てた特設舞台での演目が二本柱。お練りでは、吉原地区の主要通りを通行止めにして、江戸消防記念会の木やりを先頭に、花魁道中、かっぽれ、日野新選組同好会(日野市)らの新選組隊士演舞などがパレードする。

 特設舞台では、吉原を舞台にした小説「吉原手引草」で本年度の直木賞を受賞した松井今朝子さんのトークもある。

 イベントの発端は「このままでは“ソープ街”というレッテルをはられたまま、町が荒(すさ)んでしまう」と、危機感を抱いた住民有志や町会が昨年、まとまったのがきっかけ。そば店など二十二店舗(ソープランドは含まず)で吉原商店会(片桐桂視会長)を発足し、街の活性化策として企画したのが「ふぇすた」だった。

 昨年から準備を始め、区や東京都からは助成金が出ることも決まっていた。地元の浅草署には今年六月に計画を報告。「警察の指示に従って」(同商店会)、必要な道路使用許可申請をした。しかし今秋に入って、署側から道路使用許可を出さない意向が示された。

 不許可とする理由について、下田進一・同署副署長は「暴力団の資金源にもなっている店があるソープランド街で、子どもや女性など多くの人が訪れるイベントに、警察署長が道路使用許可を与えることは今後も一切ない」と強調する。同署によると、吉原のソープランドは百六十余店あり、かなりの店で暴力団の資金源となっているという。

 同商店会などでつくる、ふぇすた実行委員会の鈴木健人委員長(44)は「吉原には最近、江戸文化に触れようと街歩きで訪れる方も多く、今回のイベントでも多くの方が参加を申し出てくれていた。確かに悪所と呼ばれてきた吉原だが、負の歴史として封印するのではなく、地元住民として、江戸の文化とともに語り継いでいきたいと考えていたのに…」とショックを隠せない。

 実行委では近く、イベントを大幅縮小して開催することも含め、対策を緊急に検討することにしている。

 

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