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「長男は殺人者」の誤解解きたかった 鑑定医が動機

2007年10月18日20時51分

 奈良県田原本町の医師宅放火殺人事件を題材にした本の出版問題で、長男(17)らの供述調書を著者に見せたとして奈良地検に秘密漏示容疑で逮捕された精神鑑定医の崎浜盛三医師(49)が、動機について「長男が殺人者という世間の誤解を解きたかった。長男のためにやった」と話していることがわかった。弁護人の堀和幸弁護士らが18日、記者会見で明らかにした。具体的な出版方法は聞いていなかったが、著者らへの不満はないという。金品授受は一切否定している。

 弁護士によると、崎浜医師は本の著者でフリージャーナリスト草薙厚子氏(43)の要請に応じ、昨年9〜10月に数回、京都市内の自宅などで面会し、10月に供述調書などの資料を見せたと認めている。法に触れることは知っていたという。

 当時、長男が母と弟妹の計3人を焼死させたことについて、少年審判で殺意の有無が争点になっていた。崎浜医師は鑑定で、長男は自分の興味・関心に執着する広汎性発達障害であり、犯行時は幼少時から暴力を受けていた父親から逃げることに病的に集中した結果、非行に及んだ「不幸な事件」と結論づけていた。

 草薙氏の依頼に応じた理由を「長男に明確な殺意があったわけではないことを社会に訴え、広汎性発達障害への世間の誤解もなくしたかった」と話しているという。

 さらに、崎浜医師は何らかの形で公表されることは認識していたという。ただ、調書をコピーされたり、写真に撮られたりすることは考えておらず、「本を読んで詳細に引用されているのに驚いた。予想の範囲外だった」と話したという。ただ草薙氏や出版社にだまされた意識はないという。堀弁護士は「法的に許されないことはわかっているが、それなりの公の目的でやったという印象だ」と話した。

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