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「辻褄あわせ不自然な供述」 光市検察側弁論要旨(6) (2/2ページ)

2007.10.18 19:57
このニュースのトピックス光市の母子殺害事件

 しかし、ここにも被害者が被害児を取り落としたことについては全く記載がなく、浴槽とベビーベッドを間違えたという点においても「風呂桶がベビーベッドに見え、被害児をその中に入れました。その時、被害児を入れたもののゴスゴスという音がして泣き声が激しくなり」とは記載しているが、浴槽に落としたとは記載していない。

 その後に作成されたB鑑定書では被害児の頭部外傷について「左側頭前部、左側頭中部、左後頭部にそれぞれ限局的で薄層の皮下出血があり、これらはそれぞれ該当する部分に対する鈍体の打撲・圧迫などによって生じたと認められた」と記載されていた。すると被告人は、当審においてにわかに3カ所すべてについて、不自然な説明を付けるに至ったのである。

 被告人の供述する3回の契機の内容自体も不自然なものであり、現実に起こった事実とは認められない。

 被告人は被害者が被告人に抱き付かれた際に、被害児を落とした旨供述するが、母親が乳児を抱いているときに異変が起これば、むしろ本能的に乳児を抱き締めようとするのが自然であって、頭から床に落とすということは経験則にも合致しないところである。

 また、被告人は浴槽とベビーベッドを間違えたと言うが、形状も明らかに異なり、これを見誤るというのはおよそ考えられないところである。被告人は浴室に至るまでに、居問から廊下に出、台所を通過し、この間に洗濯かごやゴミ箱等の障害物につまずくこともなく浴室に至っているのであって、周囲の物の位置や形状を正確に把握していたこともうかがわれる。にもかかわらず浴室・浴槽についてのみ形状の認識を誤り、さらに、臥床の有無すら見誤るというのは不自然極まりない。なお、この点について、説明らしきものとなっているのは臨床心理鑑定書および精神鑑定人による鑑定書であるが、この各鑑定書が採用するに足りないものであることは後述する。

 さらに、被告人が被害児をあやそうとして取り落とすというのも、本当に乳児をあやそうとするのであれば、取り落とすことのないように注意して抱き上げるのが当然であって、他の2回の契機についての供述の不自然さを併せ考慮すると、単なる言い逃れとしか言えないものである。

 以上のように、被告人が当公判廷において供述する被害児の頭部皮下出血の原因はその供述に至る経過が不自然である上、内容自体も不自然・不合理であって、頭部3カ所に皮下出血があることにことさらつじつまを合わせようとして不自然な供述を行っているというべきである。

 この点について、弁護人は上告審以前の被告人の供述では、被害児の頭部に3カ所皮下出血が存在することの説明がつかないとして、上告審以前の被告人の供述を信用できないものであるとする。しかし、一連の行為が行われている過程で、被告人が積極的に被害児の頭部に打撃を加えた場合には、そのことを記憶しているのは当然であるが、頭部に打撃を加える意図を有しないで行った行為については頭部への打撃を記憶していないことは何ら不自然ではなく、また、被害児自身の行為によって傷害が生じた場合には、被告人が認識していないのは当然である。被告人が被害児の皮下出血の成因すべてを供述していないことは、何らその信用性を損なうものではない。

 本件では、被告人が被害児を浴槽内に閉じ込めた際、閉じ込められた被害児が浴槽から出ようとして伝い歩きできるようになったばかりの足で立ち上がり、転倒して頭部を打撲した可能性、被告人が被害児を天袋あるいは浴槽に入れた際、被害児が頭部を打撲した可能性、その他、本件の一連の事実経過の間に被害児が頭部を打撲した可能性は低くないのであって、この場合に被告人が被害児の頭部の皮下出血に気付かないことは何ら不思議ではなく、したがって、捜査段階の供述ですべての皮下出血の説明ができないことには、何ら不自然な点はないのであり、弁護人の主張が失当であることは多言を要しないところである。

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