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「鑑定にあわせて弁解」 光市検察側弁論要旨(5) (2/2ページ)

2007.10.18 19:44
このニュースのトピックス光市の母子殺害事件

 A鑑定書(被害者事案)では、被害者の左下あご部に存在する表皮剥脱(同鑑定書ではAとしている)につき、被告人の右第1指によるものとし、「加害者は右手を逆手にして右第1指をAに押しあて、残る右第2、3、4、5指を声を封ずるために口の上に乗せた。…本人は抵抗して顔を右上方に傾けたので、Aの右第1指はBに移動し、口封じの右第2、3、4、5指は口からCにずれた状態になりながら、右手に力を入れて圧迫を続けた」として、遺体所見と被告人が供述しているとされる行為の状況が一致すると結論していた。

 その後、平成18年6月15日付で被告人による上申書が作成され、ここで被告人は「被害者が大声を上げ続けたために僕は被害者の口をふさごうとして右手を逆手にして被害者の口を押さえました。…被害者はいつの間にかぐったりとしており、動かなくなっていました」としており、右手の逆手で被害者の口を押さえ、その後、被告人の手がずれて被害者の頸部を圧迫するに至ったというA鑑定書(被害者事案)に添う内容を記載していた。

 弁護人は上申書およびA鑑定書を最高裁に提出したが、同月20日、最高裁は「弁護人らが言及する資料等を踏まえて検討しても…1、2審判決の認定説示する通り揺るぎなく認めることができる」として弁護人の主張を排斥した。

 弁護人は同年12月26日、法医学鑑定人Bに法医学鑑定人Aに対すると同趣旨の鑑定を依頼し、平成19年4月19日付でB鑑定書が作成された。

 B鑑定書では、被害者の首を絞めた際の被告人の手が右逆手であるという点ではA鑑定書(被害者事案)と一致していたものの、A鑑定書(被害者事案)で右第1指の跡とされていた被害者の左下あごの表皮剥脱については、被告人の着衣の袖のボタンの跡とし、被害者の頸部正中やや左よりの表皮剥脱について、被告人の右第1指が掌側に折り込まれたものとなっていた。

 すなわち、B鑑定書によれば、被告人が被害者の口を押さえるために、被害者の左下顎部に親指を当てたことにより表皮剥脱が生じたというA鑑定書(被害者事案)に即した説明はかえって遺体所見との整合性を欠くものとなる。

 すると、被告人は平成19年6月26日に開かれた第2回公判における被告人質問で、上申書における供述を変遷させて被害者の口を押さえたことを否定し、右腕で被害者の胸から肩を押さえたものであるとし、さらには被害者の悲鳴を聞いたという事実すらも否定した。

 しかし、そのことによって、被害者の悲鳴を封じようとした行為が誤って被害者を死亡させたとの主張を維持することができなくなる一方、それでは、何故に頸部を圧迫する行為に至ったのかについての理由付けに窮することになり、その結果、被告人は「漠然と被害者を押さえようという、被害者というよりも被害者に取りついているものを押さえるような感覚ではありました」とする極めて不自然かつ不明確な供述をするに至ったのである。

 本件においては、被告人が被害者の首を故意に絞めたか否かが問題であり、被告人が誤って被害者の首を絞める結果となったというのであれば、被告人が何を意図して行為した結果、首を絞めることになったかは極めて重要である。また、被害者の死亡という結果を生じさせた以上、その原因が何であったかは、被告人自身にとっても重要な事実であり、思い違いなどが生じる余地はあり得ない。

 ところが、被告人はこの重要な点について、悲鳴を上げる被害者の口をふさぐという目的から、被害者に取りついたものを押さえるという目的に供述を変遷させているのであって、このような供述の変遷は明らかに合理性を欠き、B鑑定書に合わせるためにことさら供述を変えたものであることが明白である。

 さらに言えば、被告人は最高裁の判決宣告後、臨床心理鑑定人の面接を受けているが、臨床心理鑑定書によれば、被告人は「(被害者が)悲鳴というか大声を上げたので、左手で腕、右手で口を押さえた。声が耳障りであった」「覆いかぶさったときの抵抗力はかなり大きなものであった。右胸に顔をつけた状態で、手を挙げて口をふさぐ形になっていたと思う」旨述べていた。臨床心理鑑定人による面接は8回にわたって行われ、平成19年4月9日には鑑定書のドラフトに対する被告人の意見を聞いている。したがって、同日の段階でも被告人は被害者の口を手で押さえたとする臨床心理鑑定書記載の事実について異論がなかったことになる。

 しかるに、被告人は事件発生後、7年を経過して作成した上申書の内容を、上申書作成からは1年後、臨床心理鑑定からはわずか2カ月余りで変更し、同月19日に作成されたB鑑定書に符合する内容に変えているのであって、供述変遷の時間的経過からも被告人が当初A鑑定書(被害者事案)に合う供述をしていたものの、これが最高裁に否定されたことから、B鑑定書に合わせるために供述を変遷させたことが如実に見て取れるのである。そして、被告人が供述を合わせようとした法医学鑑定は、その判断自体が誤ったものであることは上記の通りであり、この点からも被告人の弁解が真実に反することが明らかである。

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