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「ひもの伸張の限界超え…」 光市検察側弁論要旨(3) (2/2ページ)

2007.10.18 19:39
このニュースのトピックス光市の母子殺害事件

 以上の通り、被告人が被害児を殺害する故意をもっていたことは明らかである。

▽(2)被告人の弁解が不合理であること

 被害児の殺害についての被告人の弁解は、何とか泣きやませようと考えているうちにいつの間にか首にひもが巻かれて被害児が死亡していたというものである。この弁解自体が不合理であることは多言を要しないところである。

 しかも法医学鑑定人Aでさえ、幼児の首にひもを巻いて縛った場合、死亡させるには中等度に絞める必要があり、かつ、その場合には死亡まで10分前後かかると証言しているのであって、被告人の弁解は法医学鑑定人Aの証言からしても不自然である。

▽(3)弁護人申請の法医学鑑定の誤り

 A鑑定書(被害児事案)およびB鑑定書は被害児の頸部に表皮剥脱がないことおよび頸部に力一杯絞めた痕跡がないとして、力一杯絞めたとする捜査段階の被告人の供述を不合理であるとしている。

 しかし、この結論は小児の頸部の皮膚の弾力性や、凶器として使用された籠手ひもの伸縮性の高さを全く考慮していないのであって、当を得ないものであることが明らかである。

 また、A鑑定書(被害児事案)およびB鑑定書が被害児の頭部外傷と捜査段階の供述が整合しないと判断したのは、小児の頭部の特殊性および行為の具体的態様への検討が十分でないことによるものである。

 A鑑定書(被害児事案)およびB鑑定書はいずれも被害児の頭部外傷について、「被告人は泣きやまない被害児を殺害しようとして、頭上からカーペット上(その下は畳)に後頭部からあおむけに思い切りたたき付け、後頭部をカーペットに激突させたとされている」との鑑定事項を前提として、被害児に重篤な障害が生じていないことが不自然であるとして整合性を否定している。

 しかしながら幼児の場合、成人とは頭蓋骨(ずがいこつ)や脳の柔軟性が異なっており、激しい衝撃があっても損傷の発生を免れることも起こり得ることであり、直ちに重篤な障害がなければ不自然であるとする両鑑定人の結論は、小児の頭部の特殊性についての理解不足によるものといわざるを得ない。

 さらに、法医学鑑定人Bは脳浮腫が生じる可能性が高い旨証言するが、被害児は頭部に衝撃を与えられた直後に殺害されているのであり、仮に、そのまま時間が経過すれば脳浮腫が生じ得る場合であったとしても、脳浮腫が生じる時間がないのであって、その証言は明らかに誤りである。

 また衝撃の強さについても、捜査段階で被告人がその供述内容を具体的に示した犯行再現状況によると「両手で被害児の脇の下を持ち、被告人と対面する格好で支え上げ、そのまま、回れ右の要領で後ろを振り返り、床に左足をつくと同時に、中腰の格好で床に被害児を背面からたたき付けた」というものであって、法医学鑑定人Aや法医学鑑定人Bが想定したような頭上から直接床にたたき付けたものとは落下開始高度や加速度が異なり、さらに、背面からの衝突による衝撃の緩和、床面が畳の上にカーペットが敷かれていたことによる衝撃の緩和が考えられる。

 すなわち、脳浮腫も含む重篤な所見がないことをもって直ちに被告人の捜査段階の供述が不合理と断定した両鑑定は誤りである。しかも、法医学鑑定人Aおよび法医学鑑定人Bが鑑定書作成時に、被告人の犯行再現による実況見分に示されている行為態様を想定していなかったことは明らかであって、この点からもA鑑定書(被害児事案)およびB鑑定書の結論は不正確である。

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