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「単なる言い逃れ」 光市検察側弁論要旨(2) (2/2ページ)

2007.10.18 19:31
このニュースのトピックス光市の母子殺害事件

▽(2)被告人の弁解が不合理であること

 被告人は当公判廷において、被害者の右胸に被告人の右ほおを付けた状態で被害者の体の上に乗り、右腕で被害者の胸から肩を押さえていたところ、いつの間にか右手が被害者の頸部を圧追していたと供述する。

 しかし、被害者の右胸に被告人の右ほおを付けた状態で被害者の体の上に乗っていたのであれば、被告人の体重は被害者の体幹部に掛かることとなり、被告人の右手には、右腕の筋肉による力しか加えられない。健康な成人女性の抵抗を排除し、5分以上継続して頸部を圧迫し続けることは不可能である。

 また、被告人は第2回公判において「重心としましては、全体に掛かっているわけじゃなくて、右側のほうに重心が掛かっている姿勢にあります」と供述しているが、被告人と被害者の姿勢を考慮すると、右側に重心が掛かってもそれは被害者の体幹部に掛かるものであり、被害者の頸部を圧迫する手に体重を掛けることとならないことは明らかであって、被告人の弁解は現実性のない単なる言い逃れに過ぎない。

 現に、被告人は上記の友人に対する手紙の中で「平気で人を殺した」という文言に続けて、「今では自分の両手が憎いよ!」と書いているのであり、被告人がその両手で被害者の頸部を絞めて殺害したことを如実に物語っている。

▽(3)弁護人申請の法医学鑑定の誤り

 弁護人申請に係る法医学鑑定人A作成のA鑑定書(被害者事案)および法医学鑑定人B作成のB鑑定書のいずれも、右手の逆手により被害者の頸部を圧迫して死亡させたとするが、これが現実的なものでないことは上記第2、1、(2)の通りである。

 A鑑定書(被害者事案)およびB鑑定書が右逆手とする根拠自体が、人の手の作用に対する考察を欠いたものである。

 A鑑定書(被害者事案)およびB鑑定書が右逆手の根拠としているのは、被害者右頸部の蒼白帯のうち1番下のものが最も長い約11センチメートルであることである。

 しかし、人が物をつかむ際に最も力が入るのは示指ではなく、栂指と環指および小指である。したがって、小指および小指球辺縁部の痕跡が強く印章されることは当然であり、約11センチメートルという長さは指の長さのみでなく、小指側の掌の辺縁部の長さも加わったものと考えるべきである。蒼白帯の長さが約11センチメートルであることを親指と示指によるものと断ずることは、人の手の作用に対する認識を欠いたものというほかない。

 また、右逆手による圧迫は以下の通り、遺体の所見と矛盾することが明らかである。

 (1)被害者の右頸部に残る被告人の指の跡と思料される蒼白帯は下に凸な弧状を呈しており、右逆手の場合の指の形状とは一致しない。

 弁護人は解剖医作成の嘱託鑑定書添付の写真からは蒼白帯が下に凸であることは明らかでないとするが、嘱託鑑定書には「左右下頸部に弧状をなす」と記載されているところ、添付写真からは下に凸とは見えても上に凸とは認められない。この点については、A鑑定書(被害者事案)に記載された図においても下に凸とされているのであって、鑑定書の記載と写真を総合的に考慮すれば、下に凸であることは明らかである。

 (2)右逆手によって頸部を圧迫しただけでは、被害者の遺体に認められる顔面全般の溢血点を含む鬱血(うっけつ)、左右のまぶた結膜の小豆大1個、粟粒大多数の溢血点(斑)は生じ得ない。

 顔面およびまぶた結膜の溢血点・鬱血は、被害者の頸部静脈が圧迫され、静脈血の環流が妨げられた結果、毛細血管に破綻が生じ出血したことを意味している。この場合に圧迫されることが想定される頸部の静脈は左右の内頸静脈および外頸静脈であり、このことについては法医学鑑定人Bも証言しているところである。

 しかし、内頸静脈および外頸静脈はいずれも頸部左右に位置する静脈である。右手の逆手のみで頸部を圧迫した場合には、四指により圧迫される右側頸部はともかく左側頸部の内頸静脈および外頸静脈は圧迫されないことが明らかである。まして被告人は、右手についても「つかむように押さえた覚えはありません」と述べているのであり、これであれば右内頸静脈や右外頸静脈すら圧迫されないのであって、顔面およびまぶた結膜の溢血点・鬱血は生じ得ない。なお、法医学鑑定人Bは、左右の各静脈が絞まるとしているが、それぞれの静脈の位置を考慮すれば、この証言が誤りであることは明らかである。

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