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2007年10月18日(木曜日)付

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給油新法―こう疑惑が相次いでは

 インド洋での海上自衛隊の給油活動を続けるため、政府は新たに補給支援特措法案をまとめ、国会に提出した。

 現行のテロ特措法は来月1日に期限切れとなる。参院を握る民主党の反対は強く、とても期限までに延長は通るまい。そう見切っての新法案だ。補給活動の中断はやむをえないということだろう。

 現行法はさまざまな支援メニューを列挙し、そのうち実際に行う活動を基本計画で定め、活動が始まった後に国会の承認を求める仕組みだった。新法案では活動の中身を直接書き込み、その代わりに国会承認規定を外した。給油活動の実際はほとんど変わらないという。

 政府は、今国会での成立を目指すとしているが、その見通しは立っていない。

 継続に首をかしげる国民は少なくない。朝日新聞の世論調査では、給油継続に「反対」が44%で「賛成」の39%を上回った。給油はテロを防ぐ国際社会の一致した行動の一つだという政府の説明にも「納得できない」が48%だ。

 無理もない。米軍に給油した油がイラク作戦に転用されたのではないかという問題で、政府の説明は説得力に欠き、疑惑は晴れていない。

 しかもここに来て、インド洋で活動していた補給艦「とわだ」の航泊日誌が、03年7月から11月までの5カ月分、破棄されていたことが分かった。一定期間の文書保存を定めた内規に反していた。

 政府は「誤って破棄した」と説明するが、自衛隊というのはそれほど規律が守られない組織なのか。都合の悪いデータを隠したのかと疑われても仕方ない。

 政府・与党内には、参院での否決を見越して、衆院で3分の2の多数で再可決すべきだとの強硬論もある。

 だが、一院の意思だけで自衛隊を海外に出す前例をつくるのは危険だ。まして、ぼろぼろと疑惑が出てくるこのていたらくでは、とても国民が納得しまい。

 私たちは、アフガニスタンの治安回復、復興を軌道に乗せるのに日本も役割を果たすべきだと考える。給油はその一つの方法かもしれない。だが、政府の情報開示の不十分さや転用疑惑の現状をみると、その是非を議論できる状況にはほど遠いと言わざるを得ない。

 ここで問題の全体像を思い出しておこう。9・11テロ直後のアフガン攻撃には国際社会の広い支持があった。テロ特措法に基づく給油活動は、日本としての支援の一環だった。これを違憲とする小沢民主党代表の考えは納得しがたい。

 だが、その後の米国のイラク攻撃で国際社会の共同歩調は崩れた。日本の給油支援も、転用疑惑に見られるようにアフガンとイラクの線引きが極めてあいまいになり、国民も疑問を抱かざるをえない状況になってしまった。

 日本が支援し、参加すべき活動の対象は何なのか。イラクで活動する航空自衛隊の早期撤収を含め、大きな枠組みのなかで与野党は議論すべきだ。

不正流用事件―毒ガスの処理費はどこへ

 旧日本軍が終戦の時に中国で捨てた毒ガス兵器をかたづけることは、日本の責任だ。日本は1997年の化学兵器禁止条約発効によって、10年以内に回収、廃棄することになっていた。しかし、作業がなかなか進まず、今年の期限を5年間延長した。

 処理事業を国から請け負ったのがパシフィックコンサルタンツインターナショナル(PCI)グループだった。政府の途上国援助(ODA)などの事業を海外で手広く請け負ってきた大手の建設コンサルタント会社である。

 そのPCIの元社長らが処理事業費から約9000万円を流用していた疑いがあるとして、東京地検特捜部から特別背任容疑で家宅捜索を受けた。

 遺棄された毒ガス兵器によって、戦後も住民らが死傷する事故が起きている。一日も早く終えなければならない懸案の事業の裏で、不正な経理が行われ、事業と関係のないところに税金が流用されていたとすれば、日中両国の国民を裏切る行為というほかない。

 PCIは他社と共同で毒ガス兵器の処理事業を受注した。受注金額は00〜03年度で計約64億円にのぼった。

 04年度からはPCIのグループ会社が代わって請け負っており、受注金額は04〜06年度で計約230億円にのぼっている。その一部をPCIが委託され、さらにグループ会社に再委託するという複雑な取引が行われた。その過程で行き先の分からない金が生まれたらしい。

 その金はどこに流れたのか。何のために使われたのか。使途不明金はこれだけなのか。特捜部は徹底した捜査で事件の全容を明らかにしてもらいたい。

 PCIといえば、過去にもODAの事業をめぐって再三、不正経理問題を起こしている。

 たとえば、7年前、中米コスタリカでの農業開発計画事業を共同事業体として受注した際には、架空の人物による領収書をつくるといった手口で事業費を流用していた。このため、国際協力機構(JICA)や外務省から指名停止などの処分を受けている。

 会計検査院の調査では、契約書の偽造や経費の水増しなどによる不正経理は、16カ国で20件のODA事業に及んでいた。その総額は1億4000万円にのぼるという。

 それなのに内閣府は、こうした不正経理問題を起こした会社のグループに発注を続けている。しかも、その発注は入札ではなく随意契約で行われていた。

 なんとも理解しがたいことだ。なぜこんな発注が続いているのか。特捜部はその背景にもメスを入れてほしい。

 国会も手をこまぬいていてはいけない。遺棄兵器の処理やODAの事業は、日本の外交そのものだ。それを舞台にした不正疑惑は日本の外交の信用を落とす。独自に真相の解明に乗り出してもらいたい。

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