2007年10月16日


自分は誰の味方という事もないし
長いものに巻かれる程弱くもない

頭で今の世論の背景や
自分の立場を考えたら
どうするべきか位分かっていた

興毅選手の世界戦
判定に対して大きな波紋を呼んだ

ボクシング以外の所まで
批判が飛び
彼がやってきた努力は
伝えられず
全てが否定されていた

自分は
“人は人”
と思っているから
自分に関係の無い所に
力を入れる事もない

でもその時は
精一杯戦った若者を
救ってやるコメントは
どこにも出ていなかった

これだけ批判が集中している時
彼を援護するとどうなるか

“人は人”と
思っているのに体が動いた

自分の周りの友人達からも
“もういいんじゃない”と
心配してくれる言葉がかけられた

解説する時誰であろうと
否定的な事は
言いたくない

結果で
今までの努力が無になるような
コメントはしたくない

今までの試合解説で批判があっても
自分を責める事は
あまりなかった

でも今回
自分の中でかなり落ちる

両選手の持ち味を
うまく伝えていければと
臨んだはずなのに
内藤選手の一方的な差に亀田選手を
“えらそう”にも
引き上げようとするコメントが
増えていた

空回りする亀田選手を
引き上げようとする思いが
(後半の反則によって
その思いも無になってしまったが)

努力を重ね
くやしさをバネに世界チャンピオンになり
18歳の若者にコケにされながらも
チャレンジャーの気持ちで
リングに立った内藤選手に対して
無礼な解説になっていた

もし
自分が第三者として
この試合を観ていたら
“ふざけんな”と
思っただろう

両選手の試合に懸ける想いを
伝えようとしていた自分が
結果的に一方を持ち上げることによって
もう一人を傷つけてしまった

もしこの試合が逆に亀田選手の
一方的な内容だったら
自分は間違い無く
内藤選手の良さを持ち上げるコメントをした

プロボクシング
事実を曲げてまで思った事を言う解説は
していない
ただ自分の思いよがりが
コメントを偏らせていったし
その時点で解説者としては失格

自分は引退してから
すがるものは何も無い

どうしてもやりたいと願う事もない

ただ、やるんだったら仕事の一つとして
当たり障りのないものではなく
自分の想いを重ねてしまうから
重くのしかかる

今回の実況やもう一人の解説者も
そんな自分の想いに
先導されたコメントのように思う

人はどこかに逃げ場をつくりながら
生きていると思う
やる前から
出来なかった時の言い訳をつくりがち
18歳の若者が試合前に言った
「負けたら切腹」は
言ってはいけない言葉ではあるけど
逃げ場を塞いで挑むという思いとして
評価してあげたい

自分だったら強いチャンピオンを
挑戦者のような想いにはさせない
試合前の駆け引きと思っている挑発行為も
相手をいつも以上に“負けてたまるか”の
想いにさせるだけのように感じる
もし、亀田家がもっとずる賢い頭があったら
もっと世の中を
器用に渡ろうとする思いがあったら

反則行為に対しては
弁解の余地は無いけれど
試合終了後、もし試合前の言動と
あせりとすがりが反則という行為に
なった事への反省を
「すみませんでした」
という言葉で
チャンピオンに返していたら
頭が真っ白になった18歳の若者を
父親が手を引っ張って
チャンピオン陣営に
お詫びと敬意を表していたら

大毅選手と
言葉らしい言葉も
交わしたことがないが
自分らのスタイルを
通そうとしすぎた結果
大きな代償となって還ってきた

そんな事を
勝手に考えてしまう自分の思いが
解説者として
周りを傷つける結果に
なってしまった



鬼塚勝也