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【スポーツ】

ノリック安らかに… 親族で仮通夜

2007年10月10日 紙面から

阿部選手をしのび、マシンとともに設置された献花台=静岡県磐田市のヤマハ発動機本社で

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 川崎市内で7日に32歳の若さで交通事故死した阿部典史さんは9日、東京都目黒区の実家に無言のまま戻った。リビングルームで安らかに眠る姿はノリックの愛称で親しまれた生前のままで、父・光雄さん(58)ら親族で仮通夜を営み悲しみを深めていた。また、故人が興した「チーム・ノリック・ジュニア」の所属選手が両親に伴われて訪れ、ノリックから教えられた技術の数々を宝物にすると誓った。

 雲に覆われた正午前、都内の病院で死後処置を受けたノリックが無言の帰宅を果たした。迎えた父・光雄さんらはさすがに沈痛な面持ちだが、つい数日前まで屈託のない笑みを浮かべていたノリックの顔は安らかに目を閉じているままだった。

 「ノリ(ノリック)が二十歳の時に買ってくれた家です。何があっても手放すなと言ってましたが、今はノリの荷物でいっぱいですよ」。リビングで安らかに眠る息子を見守る母・裕美さんはそうつぶやくのが精いっぱい。事故の一報から涙が止まらず、その瞳は真っ赤に腫れ上がっている。

 そんな中、ノリックが若手育成のために立ち上げた「チーム・ノリック・ジュニア」の山田誓己君らも両親に連れられてきた。「ノリックさんのためにも最終戦でチャンピオンを決めたい。スタート方法を教わったのは僕の宝物」と誓己君は神妙な面持ち。参戦する筑波選手権でランキング首位を走っており、最終戦(14日決勝)での弔いチャンプ奪取を誓った。

 ノリックの事故当日に会った元ライダーの辻本聡さんも自宅を訪れ「江の島の近辺まで来ているので寄ってもいいですかって、突然電話があって。岡山(第6戦)の話で盛り上がったんだけど…」と唇をかむ。関係者にもらったスクーターで初ツーリングをしたノリックは神奈川県逗子市の辻本宅を訪れ、帰宅する途中で事故に遭ったという。

 父・光雄さんはお焼香に三々五々訪れる人の対応や、葬儀準備などに追われた。「みんなに来ていただき、悲しいことや苦しいことなど気が紛れています。でも、何でこうなったんだろうという気持ちでいっぱい。来年のいい体制をつくっていた最中なのに…」と無念の表情。ライダー仲間は鈴鹿サーキットで最終戦に向けた合同テストが行われているため、この日はヤマハ発動機の取締役らや、古くからの友人が訪れるにとどまり、ノリックが眠る実家はひっそりと静まりかえっていた。 

 (遠藤智)

 

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