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素通りで混乱回避 朝のラッシュ直撃 首都圏改札障害

2007年10月12日12時30分

 鉄道会社の垣根を越えたネットワークに、落とし穴が口を開けた。12日朝の通勤ラッシュ時、首都圏の多くの駅に自動改札機トラブルが発生した。各駅は急きょ「素通り」で対応。自動化が当たり前になっている利用客たちは困惑した。改札機のメーカーは謝罪したが、原因は不明のままだ。

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自動改札機が正常に作動せず、有人の改札口で運賃を精算する乗客ら=12日午前7時41分、東京都中央区の都営地下鉄大江戸線築地市場駅で

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自動改札機のトラブルについて説明する日本信号の柏倉光行常務=12日午前10時7分、東京都千代田区丸の内で

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今回の自動改札機のトラブルの概念図

 1日に約86万人が利用するJR渋谷駅。自動改札機に問題はなかったが、混乱を避けるために開放した。

 通勤客で混雑する中、改札口ごとに3〜4人の駅員が臨時で立ち、拡声機で「そのままお通り下さい」と大声で呼びかけた。銀座、半蔵門の両線が乗り入れる東京メトロの渋谷駅でも、改札口の駅員の数を通常の約3倍に増やして対応した。

 JR浦和駅では、改札口に「そのままお通りください」「自動改札機現在故障中」と書いた紙が張られた。故障に気づかず、いつものようにICカードの定期券を改札口にかざして反応を待つ人の姿もあった。

 JR南武線と東急東横線を乗り継いで渋谷駅までスイカで通勤しているという川崎市の男性会社員(40)は「タダで利用したような感じで変な気分ですね」と苦笑いした。

 東京都大田区の無職の女性(62)も、JR横浜駅で「電車が止まったわけでもない。私は何も損していませんし……」。

 一方、切符を買ってJR西川口駅から渋谷駅まで来た埼玉県の女性会社員(31)は、スイカを持った人が改札口を素通りする光景に「切符をまじめに買った人が損をしたみたい」と不満を口にした。

 ただ、スイカやパスモといったICカードでの乗客の中には、駅に入るときには素通りだったが、出るときには自動改札機が復旧しており、有人改札に並ぶはめになった人たちもいる。

 JR横浜駅では、川崎市幸区の女性(73)が、15人ほどの列に並んだ。「時間がないのに。早く出られるようにしてほしい」と怒っていた。

 東京都新宿区の女性会社員(35)は、都営地下鉄大江戸線の築地市場駅で、降りる際に乗車駅を尋ねられ、「スイカでは時間がかかるので、現金で支払ってもらえませんか」と求められた。「素通りできると聞いていたのに。会社に遅刻するんじゃないかと心配だった」と話した。

 さいたま市浦和区の男性会社員(54)はトラブルについて「人を減らした機械化で、ありえることだとは思っていた。(鉄道会社が)そういうことを予想しておかないと」と話した。

■日本信号「私どもに責任」

 今回トラブルが起きたとみられる日本信号製の自動改札機。東京都千代田区にある同社の本社では12日午前9時半すぎ、柏倉光行常務が会見を開き、「自社製の改札機だけがトラブルを起こしているので、責任の所在は私どもにあると考えている」と陳謝した。

 同社によると、今年3月にスイカとパスモの相互利用が始まって導入された自動改札機でトラブルが起きた。毎日、始発電車が出る前にホストコンピューターと各自動改札機がデータを交信し、一致すれば電源が入る仕組みになっている。しかし、データが何らかの原因で一致せず、電源が落ちたという。プログラムの変更などはしておらず、不具合の原因は不明としている。

 JRを除く首都圏の主な私鉄・地下鉄が加盟するPASMO協議会によると、パスモを導入している23社で現在、計7675台の自動改札機が使われている。そのうち日本信号製は3050台と約4割を占め、全3社のうちシェアはトップという。

 同社は、1928年設立で、道路の信号機のほか、鉄道の信号機や自動改札機の製造も手がけている。

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