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記者の視点
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地域・患者が支える理念ある病院経営
経営ベクトルを明確にし、病院改革進める
2007.10.12
「理念」を持った経営が、病院を継続させる最大の武器になる。病院を継続させるため全国でも有数の民間病院が、介護領域から撤退を決断した。ほかの慢性期病院では、全床の医療機能強化型老健施設(仮称)への転換を決断した。
医療現場は、経営者の決断によって病院の進むべき方向を見極めている。これまでは、一連の医療制度改革、診療報酬改定が、病院を揺り動かすのに十分なインセンティブを持ってきた。しかし、いまや医療現場では、地域・患者が求める病院作りへの経営理念を軸に、あるべき姿の模索が続いている。
診療報酬改定に振り回されるのではなく、むしろ改定を活用していこうとする達観した姿勢が浮かび上がっている。
◎ 三重苦は次期改定への試金石に
診療報酬改定は、医療機関にとって2年サイクルで訪れる大きなイベントの1つだ。改定諮問、答申後には、改定内容によって悲喜こもごもの様相を呈するのが常だ。
次期改定も、施設機能によって、その影響度に濃淡は出るだろう。ただ、医療現場では、診療報酬改定を注視しながらも、自院が目指す病院像と、獲得すべき診療報酬が何かを、きちんと見極めていこうという、経営理念を持った病院経営者も多い。
そこには、2006年度診療報酬改定で取りざたされた看護配置7対1への反動が、あるかもしれない。
そして、「医療資源の選択と集中」の必要性が、徐々にだが、医療関係者から語られるようになっている。
いま振り返れば、06年度改定では、<1>入院基本料看護配置7対1問題<2>リハビリテーション問題<3>慢性期医療問題―が「三重苦」となって、改定後、行政が対応に追われたのは周知の事実だ。しかし、この三重苦から、急性期医療の定義は何か、看護の必要度測定の必要性が語られ、リハビリ医療の国民的関心の高まり、介護保険を含めた慢性期医療の重要性など、国民を含めみんなが真剣に考えるひとつのきっかけを作ったのではないだろうか。
中でも、7対1問題では、国立大学病院をめぐって看護師争奪戦などやゆされたが、高度医療の提供を機能とする大学病院が、そもそも10対1の看護配置でよかったのかという議論もある。
ただ、大学病院の扱いについては、日本医師会から意見が出ており、今後さらに議論されるだろう。また、リハビリ医療、特に、回復期リハビリでの成果主義論も出てきている。こうした状況からも、前回の改定は、急激な体系改革からハレーションも大きかったが、次につながる課題を示唆した重要な改定だったともいえるのではないか。
◎ 成果主義導入できるか注目
いま、医療現場が次期診療報酬改定で注目している点のひとつに、成果主義の考え方がどの程度、導入されるかが挙げられる。診療報酬における評価は、従来、施設基準に設定された人員確保などが実現できた場合に、報酬算定が可能という仕組みが定番だった。次回改定では、リハビリが治療成果に基づく報酬評価方式のモデルになっていく可能性も高い。すでに、厚生労働省保険局担当官が講演などを通じて回復期リハビリ領域における成果主義の導入に言及している。
回復期リハビリ病床は、介護療養病床の転換受け皿のひとつになっていることも手伝って、増加傾向で推移している。これによって回復期リハビリ病棟は、もともとリハビリ医療を積極的に提供してきた施設と、制度改正によって回復期リハ病棟に転換してきた施設に2分される。
この点からも、回復期リハビリ病棟への評価について、重症度の高い患者が多く集まっている回復期リハビリ病棟や、良好な治療効果を上げている病院を、より高い診療報酬で評価していくことは妥当性が高いと考えられる。ただ、治療効果の評価尺度には何を使うのか、人員配置基準などをどうするのかなど、課題は少なくない。(伊藤 淑)
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