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量刑の目安、パソコンで検索 「裁判員の判断に」と開発

2007年10月09日15時57分

 09年春の裁判員制度導入を控え、過去の刑事裁判で言い渡された刑をパソコンで簡単に調べられる「量刑検索システム」の開発を最高裁が進めている。法律や裁判に詳しくない市民が被告の刑の重さを決める際の助けにするのが目的だ。来春から全国の裁判例を入力してデータを蓄積し、制度導入時から使えるようにする。「健全な市民感覚の反映」という制度の趣旨を損なわないよう、職業裁判官による量刑の「相場」を押しつけない仕組みづくりが課題だ。

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量刑検索システムのイメージ

 新しいシステムは「評議」で使うことを想定している。評議は、裁判員と裁判官が法廷での審理の後、非公開で有罪か無罪かの判断や刑の重さをどうするか話し合う場だ。

 量刑を決める際、現在の裁判では「公平性」が極めて重視される。裁判官は細かい条件まで一致する過去の同種事件を抽出し、その判決文を読むなどして量刑を判断する。その積み重ねが事件ごとの差を狭め、「相場」を生み出してきた。

 新システムは裁判員に「答え」を押しつけるようなことにならないよう、緩やかな条件で検索して大まかな「傾向」をつかめるようにするのが特徴。検索条件の項目は、罪名▽犯行の態様▽凶器▽傷害の程度▽被害額▽計画性▽共犯関係▽反省▽被害者の処罰感情――など10余りに絞った。事件の内容に応じ、「強盗致傷罪」「路上で強盗」「凶器あり」といった条件で検索する。

 抽出された過去の事件の量刑は、一目で傾向がわかるように「懲役3年以下」など刑の重さごとに件数を積み上げたグラフにして配る。さらに、裁判員が求めた場合には、グラフを構成する事件ごとに「計画性」「反省」など量刑判断にあたって考慮された要素を一覧にした資料も作る。これらを参考に、自分の考えがグラフのどの辺りに位置するのかを見ながら、自由に意見を述べてもらう。

 新システムは来春に完成する予定。過去の量刑にとらわれないよう、システム稼働後にあった裁判例のみを入力するほか、裁判員制度の導入後も入力を重ねるという。

 裁判員裁判の量刑のあり方をめぐっては、裁判官の間に「公平性を維持するため、『相場』を裁判員に理解してもらうべきだ」という意見と「『相場』を絶対視するべきではない」との考え方がある。最高裁は、裁判員が何も手がかりがない状態で量刑を決めるのは極めて難しいと判断している。

 新システムは、検察側と弁護側も公判前から利用できるようにし、立証に生かしてもらう考え。双方が審理で、先例として適切と思われる裁判例を論告や弁論で出し合い、評議で裁判員の議論が混乱することを避ける狙いもある。

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