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日赤血液事業赤字148億円 過去3年検査費増え

2007年10月08日08時00分

 日本赤十字社の血液事業で巨額の赤字が続いたため、約146億円あった剰余金が07年3月末で底をついたことがわかった。血液製剤をつくる際のウイルス検査にかかる費用の増加に加え、事業の効率化が進んでいないことが主な要因だ。日赤は全国の検査施設を減らすなど経営体質改善に取り組んでいるが、「赤字があと5年も続くと、事業が立ちゆかなくなる」と危機感を募らせている。

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日赤の血液事業収支と供給量

 日赤は国内で唯一、献血事業を実施できる機関。年間500万人から献血を受け、輸血用の血液製剤を製造販売している。血液事業は、病院など他事業と切り離された独立採算で、年間の予算規模は約1400億円。

 血液製剤の公定価格が引き上げられた90年度以降、事業は黒字で、03年度末に約146億円の剰余金があった。ところが04年度は単年度で50億円の赤字。05年度が67億円、06年度も31億円と、3年間で計148億円の赤字となり、剰余金はゼロになった。今年度も40億〜50億円程度の赤字となる見通しだ。

 要因は検査費用の増加と供給量の減少で、いずれも構造的な問題だ。

 血液の検査体制は80年代以降、輸血によるエイズや肝炎などの感染を防ぐため強化されてきた。しかし、03年度に肝炎ウイルスやエイズウイルス(HIV)がすり抜けた感染例が発覚し、当時の坂口厚生労働相は一層の安全対策強化を指示。日赤は検査精度を2・5倍に上げるなどした。そのため、毎年数十億円単位の追加費用が発生した。

 経費を考慮し、血液製剤の公定価格は06年度に引き上げられた。日赤の収入は約60億円伸びたにもかかわらず、赤字は解消できなかった。

 一方の供給量はピーク時の96年から1割以上減り、収入は落ち込んだ。薬害エイズ問題などを受けて、日赤や厚生労働省が血液製剤をなるべく使用しないように呼びかけてきたためだ。

 日赤は今年度から、職員の退職金などにあてる資金を取り崩して事業を維持。施設のリストラも進め、47都道府県に1カ所以上あった採血、検査、製造の各施設のうち、検査施設を来夏までに10カ所に、製造施設も50カ所から20カ所程度に減らす方針だ。

 ただ日赤は当面の経費削減効果を年数億円としか見込んでおらず、赤字解消にほど遠い。日赤は「ここ数年の資金繰りは対応できるが、近い将来、新たな検査の導入や設備投資ができなくなる恐れがある」としている。

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