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社説

生保不払い ノルマ主義から脱却を(10月7日)

 業界全体で不払いが延々と繰り返されていた実態を知ると、まともな生命保険会社はないのか、と情けなくなってしまう。失われた信頼を取り戻すのは容易ではない。

 生保各社が保険金などの不払いの調査結果を金融庁に報告した。

 まだ調査が終了していない生保も含め、国内で営業している全三十八社がこれまでに報告した不払いは二○○一年度から五年間で約百二十万件、総額約九百十億円に達した。

 四月の中間報告に比べ件数、金額とも二・五倍以上に膨らみ、生保のずさんな経営実態が浮き彫りになった。

 各社は今回の調査結果をもって「終了宣言」としたい考えだ。だが、これまでの経緯を振り返ると、これで顧客が納得できるとは思えない。

 この問題が表面化したのは○五年のことだ。明治安田生命で不払いが見つかったのが発端で、その後、各社で次々と明らかになった。

 調査結果を公表するたびに件数も総額も増え、顧客の不信や不安は解消されるどころか膨らむばかりだ。

 途中で調査を打ち切るようなことがあってはならず、一人の不利益者も出さないよう最後まで努力するのが、企業としての責任だろう。

 不払いが目立つのは死亡保障に追加した「通院特約」や「三大疾病特約」で、契約者から請求がないのをいいことに放置していた。

 契約してしまったら、あとは知らないでは、顧客軽視も甚だしい。複雑になりすぎた特約を分かりやすくしたり減らしたりするのはもちろんだが、アフターサービスをいかに充実させるかも今後の大きな課題だ。

 今回、不払いの件数が急増した一因には「失効返戻金」が調査対象に含まれたこともある。

 これは保険料の滞納で契約を失効した顧客が解約した際に戻ってくるお金で、一件当たりの額としてはそれほど多くない。報告対象とするかどうかも各社で対応が分かれている。

 ただ、生保の説明が不十分で顧客が請求しなかった事例が多く、全体ではかなりの数に上るとみられる。

 問題は失効した契約の中に営業職員が自分の成績を上げるため、他人の名前を借りて保険料を立て替える「名義借り」などが含まれている可能性があることだ。

 背景には業界の厳しい収益至上主義やノルマ主義があり、それが不払いの要因にもなってきた。架空契約や強引な勧誘をなくすには、こうした業界の体質を抜本的に改める必要がある。

 金融庁は各社からの報告を受け、行政処分を含めて対応を検討する方針だ。不払いの件数、額だけでなく、営業のあり方や不正な契約の有無にもメスを入れてほしい。

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