“金麦妻”は実在するか? 「サントリー金麦のCM」の研究ツッコミどころこそカギになる
今週は先週の「広告デート論」の第2弾をやります、と予告していたのですが、ちょっとそれは来週にまわして、巷で話題のサントリー金麦のテレビCMを論じてみたいと思います(リンクはこちら)。 金麦のCMをオンエアで初めて見た瞬間「ぜったいこのCMは話題になる」と確信しました。また、単なる偶然やなりゆきではない「プロによる徹底的に計算しつくされた仕事」だとも思いました。金麦のホームページへ行って、女優の檀れいさんのことも知りました。 果たして、檀れいさんはこのCMで認知度&好感度ともにアップし、CM自体も話題です。金麦のCMのどこが「徹底的に計算しつくされたプロの仕事」なのか。今回は分析してみたいと思います。 都市伝説としての「“金麦と待っている”妻」今回のコラムでは、金麦のCMに登場する妻を短縮して「金麦妻」と呼ぶことにします。 この金麦妻は、実際には2007年の日本には存在しえない、幻想であると皆わかっています。 「いねーよ。ありえねーよ」と突っ込みを入れながら「でも、いいなぁ」と嘆息する。そんなCMなのです。 衣装などのディテイルを見ればわかります。エプロン。白いブラウス。橙色のスカート。そして上目づかいの目線。 ポスターは、もっとツッコミどころ、満載です。だって、「KINMUGI」の「MU」は、文字ではなく檀れいさんのクチビルですよ! いったい、金麦を冷やす以外に昼間、家でひとり、何をしているのでしょうか? 彼女は映画「ALWAYS 三丁目の夕日」のような、古き良き昭和にいたような、いないような、そんな幻想の中でのみ存在しうる女性なのです。 現代において金麦妻のコストを賄える男性は、「発泡性リキュール」ではなく、シャンパンとは言いませんが、普通のビールを飲むのではないか? と誰もが思うわけです。 この金麦妻のコストを賄える男性を短縮して「金麦夫」と呼ぶことにしましょう。これは、相当、稼がないと難しいです。そして稼ぐ男は一般的に、帰りの時間が一定ではありません。かつての労働のように、定時で帰るのが基本ではないのです。残業もあるでしょう。会食もあるでしょう。いろいろあるはずです。 毎日「金麦冷やして待ってる」妻がいたのでは、困ってしまうはずです。 「金麦、冷やして待ってたから!」と手を振る家は映画「幸福の黄色いハンカチ」のような丘の上の家で、黄色ではなく白いハンカチのような布が風にたなびいてます。 これはもう、ぜったいに偶然なんかじゃなく、確信犯で「どうぞツッこんでください!でもお好きでしょ」という作り手のメッセージが明確に見えてきます。 次ページ以降は「NBonline会員」(無料)の方および「NBonlineプレミアム」(日経ビジネス読者限定サービス)の会員の方のみお読みいただけます。ご登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。 |
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